2013/10/21 12:00

頭の中はいつもVerdi Vol.4

玉置さん連載の嬉しいオマケ、スタンダードブックストアさんの記事も間もなく掲載予定 ⒸJunko Iwabuchi

by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長

頭の中はいつもVerdi Vol.4

 いつ終わるのかもわからないといった勢いの暑い夏もようやく終わり、少し涼しくなったかなと思いきや、今度は次々と大型の台風がやってきていますね。

 スイスの再保険会社スイス・リーは洪水、嵐、高潮、地震、津波というリスク分析に基づいて9月18日、「世界で最も危険な都市」を発表しましたが、これら「5つの危険要因すべてに影響を受ける可能性のある人々が最も多い都市」の第一位として東京・横浜を挙げました。大阪・神戸が第四位、名古屋は第六位でした。「5つの危険要因による労働損失日数指数」に至っては、第一位が東京、第二が大阪、第三位が名古屋で、日本を代表する都市の三つが独占する事態となっています。

 スイス・リーはこの分析結果を掲載した自社ホームページで、「当社は本レポートが、都市の回復力強化についての世界の議論に新鮮な刺激を与え、世界中の都市のコミュニティが直面しているリスクの軽減策を政府、市民、そして保険業界が協同で講じるために貢献できればと願っております」と書いていますが、日本人にしてみると、改めて自分たちが住んでいる国の災害リスクの高さに、かなりの衝撃を受けるのではないでしょうか。このレポートを見てしまうと、日本で不動産というものが本当に資産となり得るのかどうか、考え込んで、マイホーム取得を躊躇する人が出てきても不思議ではない気がします。

 私はこの夏の前半、ケン・コーンバーグさんという、世界中の有名な研究機関のラボの設計を手がけてきた建築家の書籍の翻訳を手がけていて、それが終わったすぐ後から、今度は、ローマのヴァティカンをグローバル・メディアとしてとらえる視点で新書の書き下ろしに取り組んできました。いずれのプロジェクトも、日本がこの先どうやって未来を切り開いていくべきなのかということを真剣に考えさせられるテーマで、いろいろと勉強になりました。

 コーンバーグさんが書かれていたことの中で最も印象に残っているのは、「優れた研究は、多様なバックグラウンドのチームから生まれるもので、同じような考え方、似た分野の優れた研究者をいくら集めても大きな成果は望めない。まったく異なる専門家が集まって、同じ科学的なテーマについて議論をした時、思いがけないようなブレーク・スルーが起きるのだ」というお話。これは、すぐ後に取り組んだヴァティカンについての書き下ろしで、ローマ教皇庁が、一見、歴史と伝統に凝り固まっているように見えながら、実は、優れた人材を世界中から登用する、多様性に極めて寛容なグローバル組織であることとぴったり重なる内容で、「ふむ、ふむ、なるほど」と興奮して、この事実から日本が学ぶことは多いのではないか…と考えました。

 10月に入って訪日されたケン・コーンバーグさんには、青山学院大学 HiRCフォーラム2013 第4回 のゲストとして登場して頂き、「イノベーションのフロンティア: 創造的な研究成果を生み出す施設・組織の条件とは?」と題して、講演をして頂きました。その模様については、間もなくアグロスパシアで紹介させて頂く予定です。彼の著書も間もなくアマゾンで入手可能になることでしょう。

 日本という国の様々な災害リスク、少子高齢化による国力の衰退などを考えると、私たち日本人は、今、正に正念場を迎えているというか、これからの日本をどうしていくべきか、真剣に考えるべき時にきているように思います。

 アグロスパシアでは、9月9日から『関西ウォーカー』編集長の玉置泰紀さんをお迎えして、『「140字、1億人の”つぶやき”革命」から間もなく4年…リアルへの回帰とソーシャルメディアのこれから』と題する13回にわたる連載を行いました。
 日本で多くの人たちがtwitterを利用するようになって、間もなく4年になろうという今、ソーシャルメディアは私たちの世界観をどう変えてきたのか、2011年の3.11の前と後で、私たちのSNSの使い方はどう変わったのか? この連載の中で、玉置さんは繰り返して「民主主義とは何なのかというのがこれから一番重要な議論になると思っています」と述べておられます。

 今回、台風26号による甚大な被害が出てしまいましたが、早めの避難を呼びかけたり、被災地域での情報共有にはSNSが活用され、スマフォが使える限り、被災地の人々の孤立感を和らげることに貢献したのではなかったかと思われます。逆に、SNSを使わない高齢者にリアルタイムの情報を届けることの難しさも浮き彫りになりました。

 現在、台風27号が近づいてきていますが、この機会に、ぜひ一度、「ソーシャルメディアのこれから」と日本の未来のあり方を考えるために、玉置さんの連載をご一読されてはいかがでしょうか? なるほどと思うことが沢山あるのでは…と思います。