2013/09/16 12:00

第4回「140字、1億人の”つぶやき”革命」から間もなく4年…
リアルへの回帰とソーシャルメディアのこれから

Photo: 開店前のスタンダードブックストアのカフェ ⒸJunko Iwabuchi

by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長

第4回 マスメディアのサブチャンネルとしてのソーシャルメディア

岩渕: 昨年のアメリカの大統領選期間中は、テレビで候補同士のディベートがある度、Twitterのタイムラインの世界同時的な盛り上がりが尋常ではなく、大変興味深い展開でした。TV局のオフィシャル・アカウントから配信時間を予め広く告知して、時間も区切られているので、視聴する側も待機していて、ディベートを聞きながらtweetすることに集中できました。当然ながら、政治好きが議論に大勢参加しているので、非常に活発な討論が展開されていました。自発的に参加していたジャーナリストや政治学者によるtweetも多かったので、リアルタイムで専門家の反応を見ることができ、つい刺激されてしまって、私自身も初めて投稿制限を超えてしまうほど呟いていました。日本語の場合140字で伝えられる内容は、ある意味多すぎるため、反応する前に考え込んでしまうことも多いですが、 英語だと文字数の制限からピンポイントで反応を返していくため、tweet数が多くなってしまうようです。

玉置: 外部で起きていることに対してツイートするのが本来的な面白さだとは思いますが、意外に効果的なのは、供給されるコンテンツに対して同時にみんなで反応するというのが安定していますよね。例えば、日本テレビがジブリの映画が公開されるたびに、ジブリ映画をテレビで放送するという時のタイムラインによく見られるパターン。特に、『天空の城 ラピュタ』で主人公2人が「バルス」というタイミングで、同時にtwitter上ですさまじい数の人たちが「バルス」のポストを行って世界記録が作られたようなもの。

同時間から同じコンテンツを観るということと、そもそもジブリ映画自体を観たことのある人が多いので、共犯関係を作りやすい、コンセンサスが得やすいというのが面白さにつながっていると思われます。今だとNHKの『あまちゃん』がその例になりますが、7時半からのBSと8時からの本放送を両方観ているのですけど、BSを観ている時にツイートしてしまうと本放送を観ている人のネタバレになってしまうのでツイートは自重するようにして、本放送の放映時間に、放送された瞬間にツイートするためのポイントのチェックをBS放送の際に行っています。他にも分析したツイートをしている人たちは、きっと同じようなことをしていると思われます。これはジブリの映画を観ながらツイートするのと、本質的に同じ行動だと思うのですよね。

テレビのような旧メディアの放送は、オンデマンドや録画でなければリアルタイムで放送されているものを閲覧しているので、そのような共有体験とSNSを絡めるのは大変有効であると思います。

岩渕:今はオンデマンド放送などで、個人の好きな時間に好きな番組や作品を閲覧できるようになりましたが、定時放送のニュース、連続ドラマなどは時間を支配することがまだまだできる。そういう意味では、未だに影響力の強いマスメディアにソーシャルメディアが乗るような形で、興味の対象が少しずつ違うレイヤーで、方向性の異なる議論が展開されていることがソーシャルメディアの面白いところなのかもしれませんね。

PROFILE

玉置泰紀(たまき・やすのり)
関西ウォーカー編集長

1961年、大阪府枚方市生まれ。同志社大学文化学科哲学及び倫理学専攻卒業後、
産経新聞大阪本社に入社。記者として神戸支局、社会部で大阪府警本部捜査1課などを担当。その後、編集者に転じ、福武書店(現ベネッセ)で月刊女性誌カルディエ、角川書店でシュシュ、九州ウォーカー、東海ウォーカー、関西ウォーカーを担当した。長崎市観光専門委員、愛・地球博の食の専門委員、経団連の観光専門委員などを務めた。