2013/09/13 12:00

第3回「140字、1億人の”つぶやき”革命」から間もなく4年…
リアルへの回帰とソーシャルメディアのこれから

Photo: 関西の情報発信拠点・スタンダードブックストア、社長の中川氏(左)と ⒸJunko Iwabuchi

by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長

第3回 インタラクティブであり続けることの課題

岩渕: イベントをクローズド化することによるリアルへの回帰ということではなくて、ソーシャルメディアは情報拡散のためのツールであることに回帰してゆき、 イベントに関しては、元々リアルで価値が高かったものが、より一層リアルであることの価値を認められるようになってきているということでしょうか?

玉置: 基本的には『関西ウォーカーTV』があるので、動画配信をやる場合は、そちらで番組化することが多いです。角川で始めた「ちょくマガ」というメルマガ事業はクローズドであり、ビジネスという観点で検討するとクローズドにならざるをえないところはあります。気になるのは、このところ動画配信のプライオリティは若干下がってきているような気がするのですよね。生中継・ライブメディアという言葉をもう少し突き詰めきれればよかったのかもしれませんが、あまり過激にならないまま「ちょっと便利なツール」に落ち着いてしまっているように思います。

Ustreamだったら大企業の発表会や政治関連の討論会、アーティストの生ライブ配信に使われることが多く、個人個人の配信の活気が失われているように感じます。どちらかというと、ニコニコ動画の方がその辺りは活発さを保っている。ある程度活発に参加しようとすると会員にならざるを得ないので、売上は出るわけですし……。ニコニコ超会議を赤字でも続けているのは、本来のネット上での繋がり、そこからリアルのイベントへという、元々あったソーシャルメディアならではの流れを維持するために継続しているのではないでしょうか。会長である川上さんが、その辺りは単なる便利なツールになってしまってはいけないという強い思いがあって、それを支えているのではないかと思っています。

岩渕: 過激なところが失われていっているというのは、過去3年ほどのライブ配信で本当の意味でのインタラクティブが実現できていなかったということが原因でしょうか?  動画の視聴だけでは現場にいる時のような臨場感を楽しむことはできなかった?

玉置: 何回やったかわからないくらいライブ配信をやりましたけど、いつも問題になるのは書き込みをどの程度反映するかということなのですよね。パネリストとスピーカーがいて話をしているけれども、タイムラインに流れるコメントをどの程度拾えるかというのが悩ましい点です。すべて拾うのは現実的ではないし、ゲストのアテンドで手一杯になってしまうこともあり、難しい問題だと思います。結果からいうと、動画配信のクオリティを上げるために、TVなどの番組制作と同じようにコンテンツを作って一方的に配信する流れになっていっているのが現状のような気がします。

岩渕: 主催者側が一方的に趣旨に沿わない書き込みを排除するというのではなく、閲覧側の意向で、自分の考えに近い書き込みを選択的にフィードさせるなど、テクノロジーに裏打ちされた選択肢が増えると、もっと違った価値が見出せるようになるのでしょうか?

玉置: TVメディアがSNSを取り込むのはとても困難であり、壮大なる失敗作としては「革命テレビ」という番組などがありますね。現在だとニュース番組でツイートを画面上に表示させ、たまにいくつかのツイートに言及するぐらいができる範囲ではないでしょうか。いちばんアクティブに機能しているのはニコ生の弾幕であり、本来的に面白いインターフェースだと思っています。現状だとツイートが並んでいく形で盛り上げるのは難しく、書き込みが多くなったタイムラインのスピードが上がると一気に埋まってしまって、読めなくなってしまう。 そのスピードをどの程度引き受けてコミュニケートしていくのかというSNSの技術的な問題は大いにあると思います。

PROFILE

玉置泰紀(たまき・やすのり)
関西ウォーカー編集長

1961年、大阪府枚方市生まれ。同志社大学文化学科哲学及び倫理学専攻卒業後、
産経新聞大阪本社に入社。記者として神戸支局、社会部で大阪府警本部捜査1課などを担当。その後、編集者に転じ、福武書店(現ベネッセ)で月刊女性誌カルディエ、角川書店でシュシュ、九州ウォーカー、東海ウォーカー、関西ウォーカーを担当した。長崎市観光専門委員、愛・地球博の食の専門委員、経団連の観光専門委員などを務めた。