2013/09/27 12:00

第7回「140字、1億人の”つぶやき”革命」から間もなく4年…
リアルへの回帰とソーシャルメディアのこれから

Photo: スタンダードブックストアで売られている本以外の品揃え ⒸJunko Iwabuchi

by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長

第7回 なぜ日本ではカリスマが育ちにくいのか?

岩渕:SNSにしても、日本のいろんなサービスは、商業的な側面が強いというか、お客様本位で考えようとするあまり、ユーザーに振り回されておかしくなってしまうところがあるような気がします。ガラケーのように、ハードの機能だけでなく、サービスまでもがガラパゴス化する。その点、Twitterなどは、サービを提供する側に一本筋が通っているというか、運営サイドに明確な理念のようなものがあって、それに同意した人が集まってやっているイメージで、それが全体のカルチャーを構成している感じがいいなと思っています。

玉置:mixiもベンチャーで、まだ社歴も浅いのですが、これからどうしたら良いのか戸惑っているような印象がありますね。最近、新社長が就任して面白そうな感じになってきてはいるのですが……。日本の場合、ベンチャー企業の経営者であっても、ザッカーバーグやジョブズやシュミットのような、ワクワク感をユーザーに感じさせてくれる人は滅多にいないように思います。

孫さんや三木谷さんの存在感は大きいのですが、ベンチャーならではの急加速していくイメージをなかなか感じとれない。セカイカメラで有名になった井口尊仁さんともSNSでやりとりしますが、彼なんかはもともとカリスマの素質が十分にあると思うのですが……。

岩渕:そうですね。井口さんは目のつけどころが違うというか、RTで拾ってこられる経営者ネタとかもすごく面白いのに、フォロワーの数が爆発的には増えなかった。普通にグローバルを目ざすと、日本のカルチャーとはちょっと違ってしまうというか、日本では、カリスマがカリスマとして生きられない難しさみたいなのがあるように思いました。

玉置:井口さん発案のTelepathy Oneのコンセプト・モデルが海外ではあんなに受けたのに、日本では話題になりませんでしたよね。

岩渕:日本語で検索しても記事がなかなか出てこないですね。英語で検索すると、結構、ヒットするんですが……

玉置:彼が言うところの「思うだけ、感じるだけでコミュニケーションのできる世界」というのは、Googleグラスに対する、ひとつの面白い解釈だと思うのですが。

岩渕:井口さんは、ビジネスで「こうやったら儲かる」とかいう話ではなく、新しいデバイスやサービスがもたらす未来について、しばしば理想主義的な、いわゆるかっこいいことを呟いているのですが、日本だと、意外にそういう内容がリツイートされることは少ないですね。それって日本の文化なのでしょうか?

玉置:一般化して話をすることは難しいですが、日本の場合、イノベーションへ向かうことに対するブレーキみたいなものが多くあるのではないかなと思います。アメリカの場合は何も考えずに思いきりアクセルを踏んでいると思うのですが、日本の場合はアクセルを踏む前に、先に色々と考えてしまうというところはあると思います。

PROFILE

玉置泰紀(たまき・やすのり)
関西ウォーカー編集長

1961年、大阪府枚方市生まれ。同志社大学文化学科哲学及び倫理学専攻卒業後、
産経新聞大阪本社に入社。記者として神戸支局、社会部で大阪府警本部捜査1課などを担当。その後、編集者に転じ、福武書店(現ベネッセ)で月刊女性誌カルディエ、角川書店でシュシュ、九州ウォーカー、東海ウォーカー、関西ウォーカーを担当した。長崎市観光専門委員、愛・地球博の食の専門委員、経団連の観光専門委員などを務めた。