玉置泰紀(たまき・やすのり)
関西ウォーカー編集長
1961年、大阪府枚方市生まれ。同志社大学文化学科哲学及び倫理学専攻卒業後、
産経新聞大阪本社に入社。記者として神戸支局、社会部で大阪府警本部捜査1課などを担当。その後、編集者に転じ、福武書店(現ベネッセ)で月刊女性誌カルディエ、角川書店でシュシュ、九州ウォーカー、東海ウォーカー、関西ウォーカーを担当した。長崎市観光専門委員、愛・地球博の食の専門委員、経団連の観光専門委員などを務めた。
玉置:twitterがきっかけでイベントに呼ばれて、そこで出会った人とつながったという例では、岩渕さんのイベントで知り合った京都造形芸術大学の椿 昇さんと、その後も交流を重ねています。たまたまヤノベケンジさんとは以前からのつき合いがありましたが、椿さんは今、瀬戸内国際芸術祭を、スタンダードブックストアの中川和彦社長の盟友でもあるgrafの服部滋樹さんと一緒にやられている…というように、リアルとSNSが交錯することが起きてくるんですね。交錯して、更に相乗効果が生み出されるのが非常に面白いです。
岩渕:twitterで流れる情報を活用する能力を持っている人、その情報を活用できるポジションに居る人にとって、twitterはとてもおもしろいツールですよね。
玉置:「ネット選挙」が話題になりましたけど、誰が…とは言いませんが、前衆院選で落選した議員候補の方が、一緒にやっている会議のメンバーなのですよ。彼は、ネット選挙解禁ということで、twitterをどう使うかという話が出た際に、なんらかの規制が必要ではないかとなどと言うわけですね。
そこでは明確な反論をしなかったのですが、結局のところSNSは、便利だから大きな効果があるとかそういったものではなくて、一定以上のリテラシーとスキル、経験が必要で、一日大変な数の発信をしてやりとりを行い、そこから実際にリアルで人と会っていくなどを積み重ねていかないと、ネット選挙が解禁になったからというだけでちょっとやったぐらいでは、何の役にも立たないのですよね。
いい悪いは別として、ある程度長い期間SNSを活用してきた山本太郎氏や高橋亮平氏のような人は、規制がなくなったわけですから500%ぐらい活用できるわけですよね。でも、急に付け焼き刃で始めた人は全く使いこなせないのです。アメリカの大統領選挙でも、オバマ氏の方がSNSの使い方が上手いという指摘がありましたよね。
岩渕:民主党の大きな支持基盤にはハリウッドがありますし、大学は本質的にリベラルですから、学生と教授の多くもオバマを支持したのが大きかったと思います。例えば、選挙がらみで面白いビデオを作る速度が、民主党の方がまったくもって早いわけですよ。
相手の共和党候補をおちょくる秀逸なコンテンツがディベートの1時間以内にはアップロードされて、すぐにみんながいっせいにコメントしている。保守的な共和党の支持基盤は高齢者が多いので、そんな事態が起きていることにそもそも気づかず、3〜4日ぐらいたたないと反応がなかったわけですね。それからようやく怒り始めるわけですが、そのズレぶりが、また、民主党支持者の若者たちにからかわれて、そうした状況そのものが非常に興味深かった。あの違いは、大統領選を進める上で本当に大きかったと思います。
玉置:ネット選挙の恐ろしさというか効果というのは、そういう部分に顕著に現れるのですよね。今回の日本のネット上の選挙運動では、活かせた人というのは数人しかいなくて、まだ、これからだと思います。ニコニコ動画があるので、なんとなく安倍首相や世耕さんなんかは使いこなせている、自分たちのほうがいけているぜっていう思いはあると思うのですが、実際にどのような影響があるのかなどは、今回の選挙では本当に序の口で、次の選挙あたりで今ある政治地図を塗り替えるぐらい影響してくる可能性があると思っています。
岩渕:選挙の翌日ぐらいに、NHKの『クローズアップ現代』でネット選挙の影響についての番組がありました。結局、自民党の豊富な資金力と人数動員で成功したという結論になっていましたが、そういう単純な話にはならないと思っています。資金力とか動員数とかではなくて、有効な議論のできる面白い人が何人いるかということに意味があるということなのではないでしょうか。
次のアメリカの大統領選挙では、生まれた時からすでにインターネットがある、いわゆるデジタル・ネイティブ世代が参政権を得るということで、大きな転換期になるのではないかと言われています。前回の選挙は黎明期のような感じで、去年の選挙ではオバマ氏があれだけ苦戦と言われていたのに最後に大勝利を飾れたのは、学生をはじめとして、若い人たちを中心としたネット上での議論のやり取り、また、彼らのためにネット上で豊富に情報を供給したメディアの影響が強かったと思います。
次の大統領選では完全にデジタル・ネイティブたちが投票に加わるので、投票者数の分母を根本的に塗り替えるのではないかともアメリカでは言われていますが、日本でもそういうことが起きるでしょうか? 選挙で投票をする若者が増えるのでは…と、ちょっと期待しています。
玉置泰紀(たまき・やすのり)
関西ウォーカー編集長
1961年、大阪府枚方市生まれ。同志社大学文化学科哲学及び倫理学専攻卒業後、
産経新聞大阪本社に入社。記者として神戸支局、社会部で大阪府警本部捜査1課などを担当。その後、編集者に転じ、福武書店(現ベネッセ)で月刊女性誌カルディエ、角川書店でシュシュ、九州ウォーカー、東海ウォーカー、関西ウォーカーを担当した。長崎市観光専門委員、愛・地球博の食の専門委員、経団連の観光専門委員などを務めた。