2019/04/26 09:55

アートバーゼル香港
アジア最大のアートフェアに行ってきた Vol.1

Photo:エントランスに展示されたアレクサンダー・カルダーのBMWアート・カー ⒸKentaro Hirano

数億の作品が売られてる。アジア最大のアートフェア、香港アートバーゼル

by 平野健太郎(ひらの・けんたろう)

 平野健太郎さんはIT関係の会社の経営に携わっていますが、大学卒業後、しばらく私立美術館の学芸員だったという異色の経歴の持ち主。小さい頃からアートが大好きで、10年近く前にスイスのバーゼルで開催される「元祖」ともいうべき近・現代美術のアート・フェア(美術見本市)、アート・バーゼルを数日かけて見た経験もあります。今回は編集長の依頼を受け、世界の富裕層が一堂に会することで注目されているアート・バーゼル 香港を取材してきてくれました。

Photo:招待客用のVIPパス。QRコードで
入退場管理されている ⒸKentaro Hirano

 2019年、年度末の3月。「ちょっと、香港に行ってきます!」 この人は何を言っているのだ?と言われそうな雰囲気を横目に、エクスペディアで航空券とホテルを手配した。どうしても行きたいイベントがある「アートバーゼル 香港」だ。今年で7回目になるアジア最大のアートフェアである。アートバーゼルについてはwikiでも見てください。

前回、アートバーゼル香港に訪れたのは2017年。2年ぶりとなるアートバーゼルがどのように成長しているのかを見るのが楽しみだったことと、今回は「VIP」としての参加である! 

アートバーゼルの一会期は3月27日〜31日ですが、27日と28日は招待客のみ入場ができます。メインスポンサーである、UBSの顧客や出店ギャラリーの顧客など購入意欲が高い富裕層やアート関係者が招待されるわけです。

Photo:熱気溢れるVIPプレヴュー初日の会場 ⒸKentaro Hirano

 36の国と地域から242のギャラリーが集結。美術館でしか見れないような作品群が香港に集まり、実際に売り買いされる。今年は熱気のレベルが違う。人の多さに驚いた。VIPチケットを受け取るのも大行列。

Photo:Richard Nagy ギャラリーによるエゴン・シーレの展示 ⒸKentaro Hirano

 圧巻だったのが、Richard Nagy ギャラリーでグスタフ・クリムトと並んでウィーンのある時期を代表するエゴン・シーレの展示をしていた。これだけまとまった出展や作品群に巡り会うことができるのも、アートバーゼルの面白さ。お値段は日本円換算で数億〜でした。

Photo:ずらっと並ぶエゴン・シーレの素描作品 ⒸKentaro Hirano

 他にも、ピカソ、ジャコメッティ、ムーアとか・・・教科書に出てくるような作家の作品から、ジュリアン・オピー、草間彌生など現代作家まで幅広い作品が所狭しと並んでいる。

Photo:日本でも人気のバルテュスの作品
ⒸKentaro Hirano

 奥に見える作品はバルテュスだったり。バンクシーもバスキアも。バスキアは例の一件でお値段が上がったそうです。

会場内にはシャンパンの運び売りがあり、VIP用ラウンジが用意されていたりと、数億の作品を眺めながらお酒が飲めるという世界。

Photo:日本を拠点に活動するリー・ウーファン
(李禹煥)の作品 ⒸKentaro Hirano

 宮島達男、李禹煥 持ってくるのも大変だから気合いが入ってる。日本から出展しているギャラリーのオーナーと話をしてもセールスは好調のようだ。

29日(一般客の初日)会場では、チケットを買い求める長蛇の列。チケットは午前中には売り切れ。すごい盛り上がりと熱気である。見たことのないアジアの芸能人も来て取材をされてたり。華やかさと賑やかさが混在する。

入場するまでに長蛇の列ができている。VIPの場合、専用ゲートがあるため、並ばずに会場に入れる。そのような状況でVIPカードが数十万で取引されてるらしいなんて話も。

アートバーゼル香港の面白さは、アートを鑑賞するだけではなく多様な楽しみ方がある点だと思う。

Photo:子供が寝転がって作品を模写している姿 ⒸKentaro Hirano

 日本でだったら、すぐに警備員さんが駆けつけそうな、子供が寝転がって作品を模写している姿。気にとめるオトナはいない。

Photo:エゴン・シーレ作品の写真を撮りまくる! ⒸKentaro Hirano

 VIP客と一般客の違いは、SNSの利用だ。招待客で写真撮影をしている姿は殆どみられなかったが、一般会期はSNS映えする写真撮影大会である!美術館じゃ、絶対にそんな写真とれませんよ!

アジア最大のアートマーケットは、SNSなどを通して広く認知され、アートは限られた人が楽しむものではなく、アートを多様に楽しむ参加する価値のあるイベントへと進化している。地元の学生が、アートガイドと一緒に会場を楽しそうにまわっている姿がみられた。( *それは写真撮影NG)

アートバーゼルが単にマーケットとしてだけではなく、教育という視点でも大きな影響をもつまでに成長してきている。ローマは一日にして成らず。アートバーゼル 香港は7年目にしてアートマーケットから香港の文化形成においても大きな役割をはたしているような気がした。

PROFILE

平野健太郎(ひらの・けんたろう)

株式会社ハイブ代表取締役。1978年生まれ。大阪芸術大学を卒業後、箱根彫刻の森美術館の学芸員として勤務。美術館の企画やカフェのリニューアルなどを経験した後に、数名の仲間とともに株式会社エフアイシーシーを創業。社内新規事業として、2008年にクリエイターの採用支援事業であるMOREWORKSをスタートさせる。多くのプロダクションやクリエイターとのネットワークを持つ。人と人や企業が出会い、新しい価値創造の場に出会えるのが幸せ。新規事業立上げ経験、採用戦略などを通して、複数企業の役員を務めている。