2021/08/01 05:31

英国コロナウイルス予防接種とフリーダム・デー

Photo:ウェストミンスター寺院も一時は大規模ワクチン接種会場に ⒸAkiko Bianchi

英国コロナウイルス予防接種とフリーダム・デー

by ビアンキ曉子(ビアンキ・あきこ)

ビアンキ曉子さんは英国のLondon School of Economicsで修士号取得後、日本に帰国して外資系金融機関に勤め、その後、ご主人の転勤でロンドン、香港での駐在を経験。2010年からはニューヨークで暮らし、二人のお子さんの子育て真っ最中です。留学や駐在先での就労、妊娠、出産、子育てを4カ国で経験したことを活かし、現在は、JADP 家族療法カウンセラー、内閣府認定NPO法人 マザーズコーチ・ジャパンによる認定マザーズコーチとして活躍されています。現在海外で生活中の方、あるいは、これから海外で子育てにチャレンジする皆さんの子育てが少しでも楽に、そして楽しく、より充実した生活になるようにと願い、NY発の様々なお役立ち情報を発信する連載をお願いしてきました。そのビアンキさんが、今度は再びロンドンへ転勤となりました。新たなロンドンでの子育て、お子さんたちの教育について引き続き寄稿して頂きます。

Photo:NHSのスマフォ向けワクチン接種証明アプリ ⒸAkiko Bianchi

 7月19日にイングランドにおいて、コロナウイルス関連の規制がほぼ全て解除されることになりました。2月にロックダウンと規制解除のロードマップが描かれてから5ヶ月間、国民はロードマップに沿って歩んでいました。ロードマップが発表された時、イギリス全土は厳重なロックダウン中。学校は1年で2度目の閉鎖、最低限の生活用品の店舗のみ開いていました。外出も規制がかかっており、たとえ所有していても別荘などへの行き来もできませんでした。私たちは、その規制が終わるとされていた6月21日のマジック・デー(魔法の日)を待ち望んでいましたが、1ヶ月の延期を余儀なくされました。そして、7月19日がその待ちに待った日となりました。ボリス・ジョンソン首相は、そのコロナウイルスの規制から解放される日を、フリーダム・デーと呼びました。

 コロナウイルスの予防接種が始まってからちょうど7ヶ月が経ちました。7月13日現在、4千6百万人(国民の69%)が1回目の接種を終え、2回目の接種終了者は3千5百万人(国民の52.7%)です。先月から20代の人の1度目の接種も始まりました。これは世界で2番目に早いペースでの摂取率です。(参考:Our World in Data, Reuters )イギリスでは、オックスフォード大学と医薬品会社のアストラゼネカの共同開発のワクチンが主流です。このワクチンは、アメリカで主流のファイザーやモデルナとは違い、1度目のワクチン接種から2度目の摂取まで最低5週間空けなくてはいけません。その分、2回目の摂取率が下がっています。

イギリス政府は、自国のワクチン開発に力を入れるとともに、ワクチン確保にも注力しました。早い段階からワクチン確保担当者にビジネスウーマンのケイト・ビンガム氏をたて、他国のワクチン開発にも協力する見返りにワクチンを入手。ビンガム氏は担当者となるにあたり、チームの人選は彼女に一任すること、そして、政治論争などに彼女とそのチームを巻き込まないことを条件としました。彼女はワクチンを確保するということのみに集中し、その素晴らしい手腕で任務を遂行させました。たまたま同時期に起きた、ブリグジッドと言われるイギリスのEU脱退もワクチンをEU加盟国内で足並みを揃える必要もなく、イギリスのワクチン入手を加速させました。

Photo:寺院の中の来場者へのメッセージ
ⒸAkiko Bianchi

 イギリスにはNHS(国民医療サービス)と呼ばれる国営の医療機関と、私営の医療機関があります。イギリスに在住資格があれば誰でもNHSを利用できます。そのNHSに登録された情報を元に接種の順番が決まりました。まずは健康な90代の方と、癌や糖尿病などワクチン接種の妨げにならない疾患のある方。そして徐々に年齢が下がっていきました。健康な40代の私は4月と6月にワクチン接種しました。イギリスでは、現在、アストラゼネカ、モデルナとファイザーの3種類のワクチンが使用されています。この中から選ぶことはできません。とにかく、一刻も早く国民へワクチンを届けるため、その都度あるものが供給されていきます。2回目の接種は、1度目と同じものを受けることになっています。国が中心となり、ワクチン接種の順番を決め、接種会場への配布をすることにより、都市や地域によりワクチン接種に差が出ることを避けました。これも、国全体における免疫を高めるという政策に則っていると思われます。

 心配していたワクチン接種後の副反応は「思ったよりも軽かった」というのが感想です。40代女性は数日後に影響が出るという話もあり、数日後にあまりの怠さで早めに就寝しましたが、それ以外は通常の生活を送れました。逆に、私の周りでは夫を含め40度の熱が12時間程度出た人や、体の半分が激痛で何日間も動けなくなった人たちも。その副反応は様々です。

Photo:飛行機の搭乗者に配られるマスクと消毒用のお手拭き ⒸAkiko Bianchi

 ワクチン接種はコロナウイルスから自分や家族、社会を守るというのが大前提ですが、ワクチン接種をすることによりコンサートやスポーツ観戦、そして旅行に行けるなどの利点もあります。イギリスでは、試験的にコロナウイルスのワクチン接種終了者を対象に、マスクやソーシャルディスタンスなしで、リバプールでのコンサート参加(5月)、アスコット競馬観戦(6月)などが行われました。そしてウィンブルドンテニスやサッカーのユーロカップもワクチン接種者対象に観戦が可能となりました。また、10日間の自主規制と帰国後2日目と8日目のコロナ検査が対象とされている国からの帰国でも、ワクチン2回接種終了者とその子供(18才以下)には、自主隔離なしで帰国後2日目の検査のみが義務付けられると7月19日より変更となります。これにより、海外に住む家族や友人を訪ねたり、出張、長く待った海外旅行にも行きやすくなります。

 フリーダム・デーと形容された7月19日の規制解除。これによりマスクの着用が必要なくなり、屋内での人数制限もなくなります。そして、昨年の3月から閉鎖されていたナイトクラブも再開します。ただ、政府は、まだコロナウイルスは終焉していないという認識で、人々に常識的な自主規制を呼びかけています。ニュージーランドやイタリア、世界中の科学者や医療関係者がイギリス政府に再検討を訴えています。それに対し、ジョンソン首相は規制解除を秋に遅らせることの懸念を示しました。それは、規制解除によりコロナウイルスの感染者が増えた場合、学校に影響が及ぼされることと、風邪やインフルエンザなど冬に流行する病気と時期が重なることです。

 数日後から突然、1年半前の暮らしに戻ることの想像も難しく、レストランやお店でマスクなしで他人と近距離で話すこと、始めて会った方との挨拶である握手にも違和感を感じています。まだイギリスでもコロナウイルスが終焉したわけではなく、多くの国はまだコロナウイルスに苦しめられています。そして先進国でもワクチン接種が遅れている国、金銭的にワクチンを購入できない後進国の国々もあります。日本のように国籍保持者以外の入国の規制をしている国もありますし、政府指定ホテルでの隔離、自主隔離、飛行機搭乗前のコロナウイルス検査陰性証明、ワクチン接種証明証の提示も引き続きあることでしょう。また、街角や店頭における消毒液の設置、QRコードによるメニュー、ミュージアムなどの人数規制も、きっと定着していく事でしょう。常識としてコロナウイルスに警戒して生活を営む。フリーダム・デーは、決してコロナウイルスからの解放を意味することはなく、多くのニュー・ノーマルを受け入れる日なのかも知れません。

PROFILE

ビアンキ曉子(ビアンキ・あきこ)

東京都出身。 高校卒業後渡英。 London School of Economics修士号取得後、2000年に帰国して外資系金融機関に勤める。夫の転勤により、ロンドンと香港での駐在を経験。2児を育児中。留学、夫の赴任先での就労、妊娠、出産、子育てを4カ国で経験。現在は、JADP家族療法カウンセラー、そして内閣府認定NPO法人 マザーズコーチ ジャパン認定マザーズコーチとして活動。自身の海外経験を活かし、海外生活や海外での子育てが少しでも楽に、そしてより楽しく、より充実した生活になる事を願い、コーチングを行なっている。2010年からニューヨーク、2019年夏にロンドンへ再び転勤。ロンドンの暮らしをお伝えするインスタは:third_time_the_charm_london ビアンキアキコ

ビアンキさんへの執筆、講演依頼、取材して欲しいテーマ、コーチングについてのご相談、また、記事に対する感想などがありましたら、info@agrospacia.comまで。