平野健太郎(ひらの・けんたろう)
株式会社ハイブ代表取締役。1978年生まれ。大阪芸術大学を卒業後、箱根彫刻の森美術館の学芸員として勤務。美術館の企画やカフェのリニューアルなどを経験した後に、数名の仲間とともに株式会社エフアイシーシーを創業。社内新規事業として、2008年にクリエイターの採用支援事業であるMOREWORKSをスタートさせる。多くのプロダクションやクリエイターとのネットワークを持つ。人と人や企業が出会い、新しい価値創造の場に出会えるのが幸せ。新規事業立上げ経験、採用戦略などを通して、複数企業の役員を務めている。
アートバーゼル香港
アジア最大のアートフェアに行ってきた Vol.3
数億の作品が売られてる。アジア最大のアートフェア、香港アートバーゼル~アートマーケットについて 日本マーケットへの期待~
平野健太郎さんはIT関係の会社の経営に携わっていますが、大学卒業後、しばらく私立美術館の学芸員だったという異色の経歴の持ち主。小さい頃からアートが大好きで、以前、スイスのバーゼルで開催される「元祖」ともいうべき近・現代美術のアート・フェア(美術見本市)、アート・バーゼルを数日かけて見た経験もあります。今回は編集長の依頼を受け、世界の富裕層が一堂に会することで注目されているアート・バーゼル 香港を取材してきてくれました。
- 資料:UBSとArtbaselが発行している
The Art Market 2019
続けてアートマーケットについて少しだけ。UBSとArtbaselは、The Art Market 2019を発行している。408ページにも及ぶ資料だけど、気になったところだけ抜粋させていただく。ここからダウンロードできます。
- 資料:The Art Market 2019より引用
世界のアートマーケットは674億ドル=約7.5兆円。フィリピンの国家予算と同じくらい。
- 資料:The Art Market 2019より引用
日本はといいますと、3,000億程度と言われています。
景気が悪いとか言われても、GDPはアメリカ・中国に次いでの第3位。それなのに、アートマーケットにおいての影響力は少ないのが現状。
調べていると面白いドキュメントを発見。
- 資料:文化庁作成『アート市場の活性化に向けて』
より引用
文化庁が作成をした「アート市場の活性化に向けて」。
内容みるとUBSとArtbaselのドキュメントの引用が多いけど、個人的には税制改革が興味のあるポイント。
日本におけるアート市場の活性は「コレクター」が重要かと思う。
コレクターが育たなければ市場拡大に繋がらないのはその通り。
- 資料:文化庁作成『アート市場の活性化に向けて』
より引用
なんで、相続税に飛ぶかな?と突っ込みつつ、USなどは美術館への作品寄託における税制優遇などの仕組みなどを通して、ミュージアムに美術作品があつまる仕組みがある。日本において税制改革の第一歩としてはとても喜ばしい件だと思うけど、結局は納税猶予の特例でありマーケット形成においては意味ないし。美術作品を自由に流通させて活性化できる仕組みが求められているのですよ。
コレクターとミュージアムが連動するのではなく、コレクターはマーケットと連動したがっていることに気がつくべきなのかと。ここに描かれるリーディングミュージアムに必要な人ってアートマーケットに精通した人だと思うけど、日本における美術館の目的と開きが大きいこともあり今の学芸員?のイメージとはかけ離れていると思う。美術館で作品の売買ができる担当者が思い浮かばない。学芸員実習で、アートマーケットについてなんてありませんからね。大学教授に日本のアートマーケットを変えたければ政治家になりなさいと言われたのを思い出す。
- 資料:文化庁作成『アート市場の活性化に向けて』
より引用
それでも、日本は少しは前に進んでいるようなきがする。平成26年12月に法人税基本通達等の一部改正が行われ、美術品等にかかわる減価償却資産の範囲の取扱いが改正されています。簡単に説明をすると、2015年1月1日以後に取得した美術品は、取得価額が1点100万円未満であれば原則として減価償却することが可能となったわけです。企業は100万未満の美術作品を会社の「経費」で購入できる!ということです。
若手作家やギャラリーにとっては追い風だと思います。作品が100万未満であり、中小企業の経営者などが経費で美術作品を買い求めることができるようになったということは、個人コレクターの活性化に繋がる施策です。日本におけるアートフェアの役割の一つは、まずは個人コレクターと若手作家とのエンゲージメントに主軸をおきコレクターを育てる時期に入ってきました。
- Photo:アートフェア東京 2019のチラシ
アートセントラルの出店ギャラリーの20%は日本のギャラリーだそうです。現状では、日本だけではマーケットが狭く、世界に市場を求めていることがよくわかります。作家の支援(育てる)の一つはコレクターが一緒になってマーケットを作って行くことが重要です。
東京アートフェアのスポンサーで銀行枠は「ドイツ銀行」。ドイツ銀行はアートマーケットへの投資に積極的です。税制がかわり、個人コレクターが増加し、アートマーケットが世界におけるプレゼンスを発揮できる仕組みができればアートシーンやマーケットも活性化していくのではないでしょうか?ポテンシャルはあると思います。日本の大手銀行さん、アートマーケットのステークホルダーになる気概を持ちませんか?日本におけるアートフェアのスポンサーに日本の銀行がないのは少し残念です。
それにしても「寺田倉庫」は凄いな。一昨年は香港のアートバーゼルにもメディア出向していたのが記憶にあります。投資してアートフェアのノウハウを得て、国内のアートフェアに活かしていく姿勢がかっこいい。日本だと大きい作品を購入しても家に飾れないですからね。必然と倉庫とか必要ですから。アートコレクターのDBは価値があると思います。アートを通してマーケット創造ですね。
- Photo:ビールを飲みながら競馬観戦
ⒸKentaro Hirano
アート会場を歩き回った後は飲茶を食べて、ハッピーバレー競馬場でビール飲んだり。ちょっと蒸し暑い香港を二泊で満喫できます。
- Photo:香港名物の海鮮料理店にて
ⒸKentaro Hirano
—香港 アートマンスを楽しむ方法—-
LCCとネット予約。二泊ホテル代コミで5.5万でした。早めの予約を。
SIMフリーのスマホと香港国際空港内の「1010」という黄色いショップへ。(設定も全部やってくれて1,000円程度でスマホ使えます)
Artbaselなどのチケットは必ず事前ネット予約を。
会期中はタクシーが会場に近寄りたがりません。Uberを活用。
会場は広いので歩きやすい靴で。動きやすい格好で。
最後に・・アートを自由に楽しむ気持ちで参加しよう!
当日、会場でチケットを買うことは困難を極めます。チケットも年々高くなっているようですが、日本から数時間の香港でアジア最大のアートイベントに参加できるのは弾丸ツアーでも価値があると思いますよ。ぜひ、アジア最大のアートフェアを楽しんでみてください!