2018/12/13 10:22

ニューヨーク、ホリデー・シーズン!!!

Photo:ロックフェラー・センターのクリスマスツリー Ⓒ Akiko Bianchi

ニューヨーク、ホリデー・シーズン!!!

by ビアンキ曉子(ビアンキ・あきこ)

ビアンキ曉子さんは英国のLondon School of Economicsで修士号取得後、日本に帰国して外資系金融機関に勤め、その後、ご主人の転勤でロンドン、香港での駐在を経験。2010年からはニューヨークで暮らし、二人のお子さんの子育て真っ最中です。留学や駐在先での就労、妊娠、出産、子育てを4カ国で経験したことを活かし、現在は、内閣府認定NPO法人 マザーズコーチ・ジャパンによる認定マザーズコーチとして活躍されています。現在海外で生活中の方、あるいは、これから海外で子育てにチャレンジする皆さんの子育てが少しでも楽に、そして楽しく、より充実した生活になるようにと願い、NY発の様々なお役立ち情報を発信する連載をお願いしました。

Photo:歩道で売られるモミの木
Ⓒ Akiko Bianchi

 「ホリデー・シーズン」と聞いて、それが何かおわかりな方は、きっとアメリカ通でしょう。街には色とりどりのネオンが散りばめられ、ショーウィンドウは華やかに、人々の足取りも心なしか軽やかになる。11月末のサンクスギビング(感謝祭)、ハヌカ、クリスマス、クワンザ、そしてニューイヤー(お正月)と沢山のお祝いが次々と巡る1ヶ月半がホリデー・シーズンと呼ばれています。

 感謝祭は、11月の第4木曜日に祝われます。1620年にイギリスからアメリカ東部マサチューセッツのプリマス植民地へ移住したピルグリム(清教徒)の最初の1年は大変厳しく、多くの人が命を落とし、イギリスから持って来た食物の種も風土が合わず窮地に陥ります。その翌年に原住民インディアンのワンパノアグ族からとうもろこしなどの作物の栽培知識を習い、作物の収穫に成功します。そこで、ピルグリムはワンパノアグ族を招待し、神の恵みに感謝し、ともに収穫を祝った事に感謝祭は由来します。 感謝祭では、七面鳥、とうもろこし、じゃがいも、インゲン豆は欠かせません。当時の様子を描いた子供の絵本にも必ず七面鳥が饗宴の中心にありますが、当時は鹿肉で、七面鳥が感謝祭に出されるようになったのは、その100年後くらいだそうです。有名なケーキ屋さんには行列ができるほどパンプキンパイやピーカンパイが売られ、楽しみなデザートですが、パイは南部の人々が感謝祭を祝う様になってから加わったもので、ずっとずっと後のことです。そして、忘れてはならないのは、この様な私たちの知っている感謝祭は、移民者であるピルグリム側から見た話。実は、入植者が増えるに従い、アメリカ国内でインディアンは土地を迫われ、殺戮も繰り広げられました。そこで、多くのインディアンは今でも感謝祭を祝うことはないそうです。近年では、収穫祭と言うよりも、家や親しい友人と共に、日々当然のことと思っている健康や安全、綺麗な飲み水、豊富な食べ物、家族の愛、友情など、多くのこと、特に日常的で当然と思われていることへ感謝する日として祝われています。

 日本では、ハヌカをご存知の方は少ないのではないのでしょうか。ハヌカはユダヤ教のお祝いで、起源は、紀元前2世紀に遡ります。その頃イスラエルはギリシア人の支配下にあり、ユダヤ人たちは弾圧されていました。ギリシア軍がエルサレムの神殿を占領していた時に、神殿のメノラーと呼ばれる燭台のツボが汚されたそうです。ついにユダヤ人は反乱を起こし、神殿を奪還、エルサレム解放に成功します。この時に、汚れていない油壺を1つだけ見つけました。その壺の中の油は1日も持たない量しかなかったにも関わらず、8日間も燃え続けたそうです。この神の奇跡を記念し、ハヌカは「光の祭り」と呼ばれ、祝われることとなりました。お祝いは西暦ではなく、ユダヤ暦キスレブ月の25日から8日間行われます。 今年は12月2日から10日の8日間です。 現代では、ハヌカはどちらかというと子ども向けの特色が強くなっています。クリスマスにプレゼントをもらう子どもたちが多い中、宗教の違うユダヤ教の子どもたちはクリスマスプレゼントをもらえません。そこでハヌカの間の8日間、1日1つづつ(!)のプレゼントをあげる家族が増え、ハヌカをとても大きく祝う風潮にあるそうです。今では、少なくともニューヨークではハヌカが1番良く知られているユダヤ教の祭日で、子供達は学校でクリスマスの歌と共にハヌカの歌も習います。

 長い間キリスト教国であるイギリスで暮らした私にとって、ニューヨークのクリスマスはとても商業的に思えます。マンハッタンでは、感謝祭が終わるとすぐに歩道でモミの木が売られます。ヨーロッパでは、東方の三博士がベツヘレムに到着しイエス・キリストを拝んだ1月6日までクリスマスツリーは飾られますが、ニューヨークでは、クリスマスの終わりとともに、その他のゴミと同じように、道端のゴミ収集所に捨てられます。因みに、どこからともなく現れるモミの木売りの人達は北欧から来るそうで(でも、モミの木はカナダで調達)、感謝祭翌日からクリスマスの直前まで親戚や知人の家や、路上のトラックで生活するそうです。クリスマス・イブにミサに行くキリスト教の人も少なく、クリスマスの日も多くのお店やレストランが開いています。ヨーロッパの様に家族や親戚との時間と言うよりも、寒いマンハッタンを離れ、フロリダやカリブのビーチへ行く人も多く、逆にニューヨークには、世界中からの観光客が集まります。クリスマスの食事もその家庭それぞれの伝統の食事(つまり移民前の文化を継承)をすることが多く、街にも色々な国の食材やケーキなども売りに出され、ニューヨークに居ながらも色々な国を旅している様に感じられ、料理や食べるのが好きな方には楽しい時期です。

Photo:メイシーズの感謝祭パレード
Ⓒ Akiko Bianchi<

 皆さんは子供の頃、サンタクロースを信じていましたか? 長女は小学校2年生の時に、サンタクロースが来ないユダヤ教やイスラム教の友だちから話を聞き、サンタクロースの存在を疑いました。2年生で事実を知らせるのはかわいそう、そして良い子の所にだけ来ると言うと友達を否定してしまう事になるので、我が家では「サンタクロースを信じる良い子の所へのみ来る」ということにしてあります。多宗教の国だからこその配慮が求められました。

ニューヨークに来くるまでクワンザは聞いた事が有りませんでした。スワヒリ語に由来するクワンザは、12月26日から1月1日に行われ、アフリカ系アメリカ人の間で、アフリカ文化にちなんだ食事、そして贈り物もやり取りされます。 1960年代の黒人民族主義台頭の頃にクワンザを提唱したマウラナ・カレンガは、アフリカ系アメリカ人にアフリカ文化や歴史的文化資産に繋がる、アフリカの共同体主義の哲学の7つの基本原則を提唱します。クワンザの間は、共同、労働と責任、目標、信念など7つの行いがそれぞれの日にあり、それを全うすることとされています。アフリカ文化を継承するお祝いと言うことで、ヨーロッパでも祝われ始めたと言うことです。

そして、ニュー・イヤー! タイムズ・スクエアでのカウントダウンは日本のテレビでも毎年放映されますね。カウントダウンには有名な歌手による歌や踊りのショー、ニューヨーク市長によるカウントダウン、そして花火が上がり、盛大に祝われます。日本の除夜の鐘を聞きながらの静寂な新年を迎えるのとはとても違います。

この一連の様々な宗教や文化的なお祝い事を纏め、多様性を受け入れるために、ホリデー(アメリカ英語で祝祭日と言う意味)という言葉が、「ホリデー・シーズン」や「ハッピー・ホリデー」などと使われています。2015年に有名なコーヒーチェーンが普段の白と緑から赤と緑のカップに変えた時に、一つの宗教(キリスト教)だけを象徴すると消費者から批判されたりもしました。この様にホリデー・シーズンは、いつも以上に多様性への配慮が求められる時期でもあります。このホリデー・シーズンの1ヶ月半、学校や会社が休みになると思われれている様ですが、感謝祭は4連休、冬休みは10日から2週間くらいです。この休暇までに学校の試験があったり、商談や案件を纏めたりと、通常よりも忙しくなることの方が多いように感じます。

感謝祭の1週間ほど前からニューヨークの街は、ホリデーの雰囲気に包まれます。有名なデパートは毎年様々なテーマでショーウインドウを飾ります。大手デパートのブルーミングデールズは、その冬公開の映画を題材にした装飾をすることが多く、今年は映画化に合わせ、こどもの絵本で有名なドクター・スースのグリンチを題材に、道行く人が参加できる様なとても画期的なデコレーションがなされています。また、この時期は、先日公開されたグリンチやくるみ割り人形の様なクリスマスや、家族愛を題材にした映画が多く公開されます。毎年恒例のニューヨーク・シティー・バレエ団による『くるみ割り人形』や、メトロポリタン・オペラの『魔笛』、そして今年85周年のロケットというショーも見逃せません。

感謝祭の翌日は、ブラック・フライデー(由来は、商売が黒字となることから)、そして月曜日はサイバー・マンデーと呼ばれ、大セールが行われます。ブラック・フライデーから始まり、それぞれのお祝いのためのプレゼントや、外食、旅行、ホリデー・パーティなども含め、フォーブスによると今年は1人当たり1250ドル(14万円)の出費が予想されています。そして、年賀状ならぬホリデー・カード、お世話になっている方々へのプレゼントや、マンションの管理人やスタッフ、ベビーシッターなどへのお心づけを渡したりと、とても出費の多い時期でもあります。

ここで忘れてはいけないのは、感謝祭後の最初の火曜日、ギビング・チューズデー (#Giving Tuesday)。国連を始めNGO、学校などが献金を呼びかける日です。私たちの多くは不自由なく生活し、年末年始を楽しみに過ごしていることでしょう。世界では多くの人がいまだに貧困や飢餓に苦しんでいます。その様な人々や、地域社会、学校へ、たとえ少なくても、自分の持っているものを還元する。それがギビング・チューズデーです。皆さまはこの一年、どのように過ごされ、どのようなことに感謝されますでしょうか?

それでは、どうぞ良いお年をお迎え下さい!

PROFILE

ビアンキ曉子(ビアンキ・あきこ)

東京都出身。 高校卒業後渡英。 London School of Economics修士号取得後、2000年に帰国して外資系金融機関に勤める。夫の転勤により、ロンドンと香港での駐在を経験。2010年からニューヨーク在住。2児を育児中。 留学、夫の赴任先での就労、妊娠、出産、子育てを4カ国で経験。現在は、JAPD家族療法カウンセラー、そして内閣府認定NPO法人 マザーズコーチ ジャパン認定マザーズコーチとして活動。自身の海外経験を活かし、海外生活や海外での子育てが少しでも楽に、そしてより楽しく、より充実した生活になる事を願い、コーチングを行なっている。ライフコーチの特性を活かし、200校以上あると言われているニューヨークの私立校から、生徒やその家族にとって最良の学校選びの為のアドバイスも行う。

ビアンキさんへの執筆、講演依頼、取材して欲しいテーマ、コーチングについてのご相談、また、記事に対する感想などがありましたら、info@agrospacia.comまで。