2018/10/22 15:13

地球こどもサミット 2018
―子どもたちが考えるフードロス問題

Photo:サミットに参加した各国の子ども大使達 Ⓒにこにこ一般財団法人

地球こどもサミット 2018
―子どもたちが考えるフードロス問題

by ビアンキ曉子(ビアンキ・あきこ)

ビアンキ曉子さんは英国のLondon School of Economicsで修士号取得後、日本に帰国して外資系金融機関に勤め、その後、ご主人の転勤でロンドン、香港での駐在を経験。2010年からはニューヨークで暮らし、二人のお子さんの子育て真っ最中です。留学や駐在先での就労、妊娠、出産、子育てを4カ国で経験したことを活かし、現在は、内閣府認定NPO法人 マザーズコーチ・ジャパンによる認定マザーズコーチとして活躍されています。現在海外で生活中の方、あるいは、これから海外で子育てにチャレンジする皆さんの子育てが少しでも楽に、そして楽しく、より充実した生活になるようにと願い、NY発の様々なお役立ち情報を発信する連載をお願いしました。

Photo:地球こどもサミットポスター
Ⓒにこにこ一般財団法人

 「もう大人なんかに任せてられない。僕らの地球は僕らで守る!」をスローガンに、この地球上で起きている様々な問題を子供たちが考える、地球こどもサミットが8月に東京で開催されました。今でも飢餓に瀕している人は世界中に9人に1人。10秒に1人の子供が餓死しています。その反面、先進国においては食べ物を無駄にするフードロスの問題が深刻化しています。地球こどもサミット第1回めの今年はSDGs(持続可能な開発目標)の12番、「つくる責任、つかう責任」から、「フードロス問題」について、アメリカ、イラン、ギニア、日本、ジャマイカ、フランスなど9ヶ国からの9歳から17歳までの25人の子どもたちが各国代表の大使として参加しました。農林水産大臣を始めとする中央省庁やJAXA(宇宙航空研究開発機構)、国際連合世界食糧計画、大手食品企業や流通業、日本を代表するシェフ、全日仏教青年会、オリンピック選手など、様々な「大人先生」の前で子供達が、フードロスに関する意見の交換、議論、アイデアの発表を行いました。
 主催者である一般財団法人にこにこ代表・浅野敬子さんは、「食にまつわる課題についてこどもが議論できれば」と企画したそうです。その裏には、「世界の子どもたちが子どもの今、国境を越えて手を繋ぎ、一緒に考え、そして手を繋いだまま一緒に成長すれば、今より平和な地球をこの子たちの子どもには残してくれる」との強い思いがあるのです。

 「おもてなし」と同様に日本が世界に誇れる「もったいない」の精神。各国の子ども大使からの食べ物を無駄にしないためのアイデアは、どんなものがあったのでしょうか。コンビニのお弁当をおかずとご飯に分けて販売する案や、お米、野菜、果物、お惣菜などを必要な分だけ買える様に量り売りにすることも提案されました。実際に、海外ではこの様な量り売り専門店や、大手スーパー内で一部量り売りができるところも多くありますし、スープやサラダに付いてくるパンやクラッカーも、事前に一緒に包装されることは少なく、支払いの際にいるか否かを聞かれます。また、日本語だと間違われやすい「賞味期限と消費期限」をもっと分かりやすく記載することにより、賞味期限が切れたばかりの物を捨てることを避け、消費期限が切れるまでに食べるようにすべきではないか」という鋭い指摘もありました。見た目の悪い野菜や果物は小さく切ったり、ピュレ状にして利用することや、消費期限が切れそうな物は冷蔵庫の前の方に置くことなど、今日からでも始められる実用的な案も。
 豆腐を作る過程で生まれ、家畜の餌や廃棄されることの多いおからの他の有効な利用方法について出された相模屋食品(株)・鳥越社長からの質問に対し、「校庭やグランドに使われている白線が目に悪いと聞いたので、おからをその代わりに使ったら良いと思います」と、土の校庭やグラウンドのある日本ならではの提案を信岡愛未ちゃん(11歳)が行いました。また、手作りお菓子といえばクッキーの国アメリカからのビアンキ・ミカちゃん(10歳)は「おからを触ってみたところ感触が良かったので、3原色に色付けした物と普通のおからの4色セットとして、混ぜて色や形を作ったりと、遊びながら作り、食べられるクッキーの素材としての商品化はどうでしょうか?」という案が出されました。どちらの意見も子供ながらの視点、何よりも、その国ならではのアイデアでした。

Photo:地球こどもサミット参加者
Ⓒにこにこ一般財団法人

 150年前に起きた明治維新を始め、近代日本において国際化が叫ばれるたび、欧米信仰、欧米化が促されている様に思え、時折、遺憾に思う事もあります。このサミットでは、子ども大使達の育った国や文化、習慣、価値観が違うからこそ、多様な意見が出されたのだと思います。イラン代表のコサール・カラマニさん(17歳)とモハメッド・カラマニ君(14歳)が「イランでは、食べ物を残すのは、貧しい人より食べ物を盗んでいるのと同じことだと考えられている」と述べた時、多くの人が共感していました。おからの利用法のアイデアもそうでしたが、各国の大使達は、相手の意見や文化を尊重しつつも、自分の文化も否定することなく、それぞれの視点から1つの問題を共に解決しようとしていました。国境や文化を軽々と越え、共感し合う。この会場には、小さな国際人、そしてグローバル・シチズン(地球市民)が沢山いました。

 サミットの最後に総合監修をされ、国連世界食糧計画顧問でもあるシェフの山下春幸氏は、まず、「子ども先生」と呼びかけて子どもたちを讃えました。そして、大人になるとエゴや社会のルール、お金などの自己利益、快適さや格好ばかりに目が行ってしまい、この子どもたちの様な感覚を忘れてしまうことを子どもたちに謝罪されました。その山下氏の言葉を聞き、私はハッとしました。そうなのです・・・私はここに参加している各国代表の子どもたちと同じ年の頃、嫌いだった、軽蔑していたはずの大人になってしまっていることに気付かされたのです。自分の微力や限界、日々の生活での忙しさや余裕のなさなどをできない理由として並び立て、行動や努力を怠り、諦めてしまう。できないことを正当化する・・・。「分断の時代」と呼ばれる現代、目の前にいる子どもたちは純粋に、このかけがえのない地球のために、そこに住むみんなのために、自分には何ができるかを柔軟に、そして一緒に、一生懸命に考えていました。彼らの源にある思いは、ギニア代表のトラオレ・ダウダ・一真君(9歳)の発言に的確に集約されていました。「人の肌の色も見た目もちがうけど、中身は同じ心のある人間」。この子どもたちがこの地球のリーダーとなる時まで、このかけがいのない地球を守っていくことが、私たち大人の使命なのではないでしょうか?

PROFILE

ビアンキ曉子(ビアンキ・あきこ)

東京都出身。 高校卒業後渡英。 London School of Economics修士号取得後、2000年に帰国して外資系金融機関に勤める。夫の転勤により、ロンドンと香港での駐在を経験。2010年からニューヨーク在住。2児を育児中。 留学、夫の赴任先での就労、妊娠、出産、子育てを4カ国で経験。現在は、JAPD家族療法カウンセラー、そして内閣府認定NPO法人 マザーズコーチ ジャパン認定マザーズコーチとして活動。自身の海外経験を活かし、海外生活や海外での子育てが少しでも楽に、そしてより楽しく、より充実した生活になる事を願い、コーチングを行なっている。ライフコーチの特性を活かし、200校以上あると言われているニューヨークの私立校から、生徒やその家族にとって最良の学校選びの為のアドバイスも行う。

ビアンキさんへの執筆、講演依頼、取材して欲しいテーマ、コーチングについてのご相談、また、記事に対する感想などがありましたら、info@agrospacia.comまで。