2018/04/03 09:35

ニューヨーク私学キンダーガーデン受験の「真実」とは?

Photo:日本にもプリスクールのあるドルトン校 ⒸAkiko Bianchi

ニューヨーク私学キンダーガーデン受験の「真実」とは?

by ビアンキ曉子(ビアンキ・あきこ)

ビアンキ曉子さんは英国のLondon School of Economicsで修士号取得後、日本に帰国して外資系金融機関に勤め、その後、ご主人の転勤でロンドン、香港での駐在を経験。2010年からはニューヨークで暮らし、二人のお子さんの子育て真っ最中です。留学や駐在先での就労、妊娠、出産、子育てを4カ国で経験したことを活かし、現在は、内閣府認定NPO法人 マザーズコーチ・ジャパンによる認定マザーズコーチとして活躍されています。現在海外で生活中の方、あるいは、これから海外で子育てにチャレンジする皆さんの子育てが少しでも楽に、そして楽しく、より充実した生活になるようにと願い、NY発の様々なお役立ち情報を発信する連載をお願いしました。

Photo:私学キンダーガーデン入学案内と受験参考書
ⒸAkiko Bianchi

 ハーバード大学受験よりも難関とすら言われる、ニューヨーク私学キンダーガーデン受験の一斉合格発表がありました。昨年は、在校生の父親が大統領に選出された学校にてまさかの定員割れと言う大波乱がありました。今年は、男子校の受験が厳しいなど、受験の始まった初秋より色々な噂が立っていました。
 ニューヨークの就学は、日本より1年早いキンダーガーデンと呼ばれる日本の幼稚園の年長の年からです。その1年前の4〜5歳児を対象とした受験がニューヨーク・エリート街道の最初の一歩とされ、ハーバード大学を始めとするアイビー・リーグ大学受験よりも難しいとさえ言われています。
 ニューヨークの私立の学校は、一部のとても裕福な家庭の子供達の為の学校であると言うイメージが定着してしまっています。 特にアッパー・イーストの高級住宅地には、一般に一流校と言われる学校がその狭い中にひしめいています。卒業や在校生にはニューヨーク出身の歴代の大統領のお子様達や、ヨルダンの王女、ビリオネアー(資産一千億円以上!)と呼ばれる実業家、ニューヨーク・ヤンキースやメッツ球団の筆頭株主など、セレブのお子さんたちもいます。昨年はロバート・デニーロの娘、今年はドリュー・バリモアやスティーブ・マーティンの娘たちの進学先が話題になりました。もちろん、生徒全員がその様な家庭から来ているわけでは有りませんし、その様な人の方が少ないからこそ話題になるのです。それでも、ニューヨークに住む大半の人にとって私立校は未知の世界です。それこそが、私学受験を難しくしている理由でもあります。

 キンダーガーデンから中学2年生、または高校3年生までの9年、13年一貫教育が多い中で、学校側は入学してくる生徒や家族が学校に合っているか否かと言う、学校との価値観の合致、学校と言うコミュニティの一員として長い年月楽しく、幸せに通学していけるかをとても重視しています。つまり、多くの人にとって閉ざされた世界である私学の学校選びにおいて、生徒とその家族に合った学校を選ぶということは、とても重要となります。そのため、受験者は持っているネットワークを駆使し、できるだけ多くの在校生の保護者から生の声を聞きます。逆に、情報不足などで合っていない学校を受験した場合、合格するのがとても難しく、10校受験しても1校も受からないなんてことも珍しくはありません。

 私学の情報を考えた時に、残念ながら日本人コミュニティーはとても遅れを取っています。駐在の方は公立校へ通われるのが一般的ですし、何よりも高額な授業料から私学を諦める方も多くいらっしゃるでしょう。都市伝説的に日本人コミュニティ内で語り継がれている話や、日本語で書かれているインターネットの情報も内容が更新されていないものが多く、華やかな生活に特化された話ばかりが溢れ、学費援助を利用するなどの現実的な情報がほとんどないなど、残念ながら生の情報が得られにくいのが実情です。
 では、生徒や家族に合った学校を受験したら必ず合格するのでしょうか? 残念ながらそうもありません。それは、キンダーガーデン受験が、俗語で「数当て賭博」とさえ表せられる、合格者数の割り出し方にあります。先にも述べた様に多くの私立の学校は、同じ様な価値観を持った、それぞれの「ファミリー」からなる「コミュニティー」であることを重視しています。ですので、在校生の兄弟や、卒業生の子供達がまず優遇されます。そして、残った席が一般受験者へと回されます。ある年を例にすると、ある学校では、1学年60人のところ10席のみが一般枠であったと聞いています。因みにその一般枠への出願者数は400人位だったそうです。そして、その一般枠の中が更に細分化されて行きます。と言うのも、多くの学校は、ダイバーシティ(多様化、多様性)に力を入れていて、色々な人種、宗教、住んでいる地域、性的少数派を持つ保護者、経済格差のある生徒がいる様にする風潮にあります。まるで、教室の中がミニチュア・ニューヨークの様です。また、15—20%の生徒は、何かしらの学費援助を受けて入学しています。つまり、誰もがそれぞれの家族の背景に合った枠を狙って受験をしているのです。その枠たるや数席に過ぎないこともあります。これこそが、キンダーガーデン受験が難関とされるゆえんです。
 学校ランキングなんて言うものにはとらわれず、自分の持っているネットワークを最大限に利用し、家族に合った進学先を決断し、出願から合格発表までの半年間という長い期間を全速力で駆け抜けるスタミナ・・・お受験さえもニューヨーカーらしく感じられます。では、何故そこまでして私学受験をするのか。私学の魅力について次回お伝えしたいと思います。

 本年度受験された皆様、お疲れ様でした。9月からのご進学先でお子様がのびのびと、そしてご両親様が楽しく、共に学校生活を送れらる事を願っております。

★ 2018年5月21日(月曜日)、NYママの会にて、ニューヨーク私学受験とファイナンシャル・エイドについての説明会を行います。説明会の後には、私学をより身近に感じ、私学も選択肢に有ると思って頂ければと思っております。ご興味の有る方は、NYママの会 nymamama@hotmail.com までご連絡下さい。

PROFILE

ビアンキ曉子(ビアンキ・あきこ)

東京都出身。 高校卒業後渡英。 London School of Economics修士号取得後、2000年に帰国して外資系金融機関に勤める。夫の転勤により、ロンドンと香港での駐在を経験。2010年からニューヨーク在住。2児を育児中。 留学、夫の赴任先での就労、妊娠、出産、子育てを4カ国で経験。現在は、内閣府認定NPO法人 マザーズコーチ ジャパン認定マザーズコーチとして活動。自身の海外経験を活かし、海外生活や海外での子育てが少しでも楽に、そしてより楽しく、より充実した生活になる事を願い、コーチングを行なっている。ライフコーチの特性を活かし、200校以上あると言われているニューヨークの私立校から、生徒やその家族にとって最良の学校選びの為のアドバイスも行う。

ビアンキさんへの執筆、講演依頼、取材して欲しいテーマ、コーチングについてのご相談、また、記事に対する感想などがありましたら、info@agrospacia.comまで。