2017/10/31 07:35

マンハッタンでお家探し?

Photo:ジャックリーン・ケネディ・オナシスが住んでいたコープ。セントラル・パークに面した5番街の高級マンション ⒸAkiko Bianchi

マンハッタンでお家探し?

by ビアンキ曉子(ビアンキ・あきこ)

ビアンキ曉子さんは英国のLondon School of Economicsで修士号取得後、日本に帰国して外資系金融機関に勤め、その後、ご主人の転勤でロンドン、香港での駐在を経験。2010年からはニューヨークで暮らし、二人のお子さんの子育て真っ最中です。留学や駐在先での就労、妊娠、出産、子育てを4カ国で経験したことを活かし、現在は、内閣府認定NPO法人 マザーズコーチ・ジャパンによる認定マザーズコーチとして活躍されています。現在海外で生活中の方、あるいは、これから海外で子育てにチャレンジする皆さんの子育てが少しでも楽に、そして楽しく、より充実した生活になるようにと願い、NY発の様々なお役立ち情報を発信する連載をお願いしました。

Photo:ハロウィンの装飾を纏ったタウンハウス。毎年、トリック・オア・トリーティングで賑わう ⒸAkiko Bianchi

 海外で新居探し中にカルチャーショックを受ける方は多いのではないでしょうか。今まで、イギリス、香港、アメリカで暮らしてきましたが、家探しの度に思うのは、日本の住環境や賃貸のあり方の常識は全く通用しないこと、さらにその国、都市によって住環境、文化、治安、環境問題などが違うため、一度海外に生活したことがあるからといっても、その経験が他の国ではあまり役立たないことには驚かされます。では、マンハッタンでの家探しはどうなのでしょうか?

■タウンハウス、レンタルビルディング、コンドミニアム、コープ??? 

 イギリスでは「ハウスかフラット」、香港では「コンドミニアム」。慣れていると思った英語での家探しでしたが、「タウンハウス、レンタルビルディング、コンドミニアム、コープ。どれを探しているの?」と不動産業者に聞かれてもその違いが分かりません。そして日常会話でよく使う「アパートメント」という単語が、その中には含まれていないのです。。。
 一軒家と言うと庭付きの一軒家を想像される方が多いと思いますが、まず、マンハッタンでは皆無。ここで一軒家というとタウンハウスとなります。 大抵、3階建から7階建、庭付きの家でも裏庭のみです。大きなタウンハウスの中を改修し、数世帯で住める賃貸のタウンハウスもあります。日本でも放映された「セックス・アンド・ザ・シティ」の主人公、キャリーが住んでいたのがそうですね。レンタルビルディング、コンドミニアム、コープは集合住宅です。レンタルビルディングは、全室賃貸。コンドミニアムやコープは、分譲物件ですが、所有権に違いが有ります。コンドミニアムはその部屋、つまり不動産を所有します。その反面、コープ(ハウジング・コーポレティブの略)は、コープが建物全体を所有し、所有者はその株式を所有します。つまり、不動産は所有していないということです。
 コープは購入時や賃貸時にも理事会の承認が必要なために面接を義務づけられたり、こと細かな規約があり、改修工事においても部屋の間取りから、床の材質、カーペットを敷く範囲まで承認が必要になることも有ります。自分の所有する家でありながら、思うように改修工事ができたなどという話はこれまで聞いたことがありません。また、パパラッチがビルの周りに常駐するのを嫌がるコープも多く、コープの理事総会で有名人の購入の承認が下りない例も少なくありません。ポップスの女王と呼ばれるかの有名な歌手は、コープの理事会により購入の承認が下りず、その側に建つ大きなタウンハウスを購入したと言う噂もあるんですよ。

Photo:ウエストヴィレッジにあるタウンハウス。テレビや映画の撮影に使用されたり、セレブも多く住むエリア ⒸAkiko Bianchi

■洗濯機が無い!  

 学生寮に住んでいた時にコインランドリーを利用していましたが、洗濯物の多い小さな子供がいるのに洗濯機が付いていないなんて…。ニューヨークには戦前に建てられた古い建物が多くあり、各家に洗濯機がついていることは珍しいのです。マンションの規約によって決まっているため、勝手に洗濯機は設置できません。高級住宅街で1億円を超える分譲物件や、家賃が月額数十万円もするマンションでも同じこと。そのため、規模の大きな建物には、建物内にコインランドリーがあります。
 次に驚いたのが、床や壁の質の悪さ。床が傷んでいるのでハイハイ時期の子供の手のひらや膝に棘が刺さるのを心配し、更に斜めなので、ジェンガもまるでピサの斜塔。壁に穴が開いていたり、入居前に塗り直してもらった壁のペンキが暖房を入れたら、溶けてきたという話も聞いたことがあります。マンハッタンの集合住宅も不便なばかりではありません。高級な物件となってはしまいますが、スーパーインテンデントやドアマンのいる集合住宅もあります。スーパーインテンデントとは、常駐の修理の方で、洗濯機や食洗機の故障やドアの不具合の修理、絵画やテレビの取りつけなどをしてくれます。ドアマンは、建物の入口に立ち、タクシーを呼んだり、郵便物の受け取り、安全のために住民以外の出入りを確認します。子供向けアニメの「おさるのジョージ」にもドアマンは登場しますね。余談ですが、ジョージは典型的な裕福な家庭の生活を送っています。

■契約社会の賃貸借契約

 日本は借地借家法や民法により借主が守られていますが、国際的にはとても珍しいことです。そして、アメリカも然りです。一般的な賃貸借契約では、契約期間中の中途解約はできません。つまり、予期せぬ理由でその部屋を退去してからも、契約期間終了までの賃料の支払い義務を負います。さらに、契約によっては転賃借ができない場合もあります。又、ペットを契約違反で飼った場合の罰則や、家庭内暴力が起きた場合の即刻退去事項なども記載されている契約書もあります。通常、契約期間終了後に再契約する場合の賃料の上げ率も契約書に記載されています。たとえ市場での賃料が下がっても契約にのっとり賃上げします。実際に、昨年の夏の終わりから今年の春まで集合住宅の供給過多と新政権への不安により賃料が下がった地域もありましたが、再契約の場合は、元々の契約通り市場よりも高い賃料で契約されていた様です。賃借人からすると納得のいかないことですが、契約社会であるアメリカらしいですね。

PROFILE

ビアンキ曉子(ビアンキ・あきこ)

東京都出身。 高校卒業後渡英。 London School of Economics修士号取得後、2000年に帰国して外資系金融機関に勤める。夫の転勤により、ロンドンと香港での駐在を経験。2010年からニューヨーク在住。2児を育児中。 留学、夫の赴任先での就労、妊娠、出産、子育てを4カ国で経験。現在は、内閣府認定NPO法人 マザーズコーチ ジャパン認定マザーズコーチとして活動。自身の海外経験を活かし、海外生活や海外での子育てが少しでも楽に、そしてより楽しく、より充実した生活になる事を願い、コーチングを行なっている。ライフコーチの特性を活かし、200校以上あると言われているニューヨークの私立校から、生徒やその家族にとって最良の学校選びの為のアドバイスも行う。

ビアンキさんへの執筆、講演依頼、取材して欲しいテーマ、コーチングについてのご相談、また、記事に対する感想などがありましたら、info@agrospacia.comまで。