2017/06/26 14:27

第17回 NY:プログラミング教育から見るプログレッシヴ
or トラディショナル教育 (後編)

Photo:プログラミングコード ⒸPixabay by simplu27

第17回 NY:プログラミング教育から見るプログレッシヴ or トラディショナル教育 (後編)

by 高木悠凪(たかぎ・はな)

 高木悠凪さんは、2010年にご主人の転勤に伴ってニューヨークにお引っ越し。大学時代、美術史を勉強していた高木さんは、2011年に女の子に恵まれて、以来、お子さんをベビーカーに乗せて美術展へ行くなど、いつも親子で積極的にアートに親しんできました。今年(2017年)4月に日本に帰国された高木さんですが、今回は帰国前のNYで取材した、子どもたち向けのコンピュータのプログラミング講座を通じて、教育のあり方を考える寄稿、その「後編」です。

 
 それでは、トラディショナル教育が軸となる日本の場合はどうだろう? 日本も文部化科学省(以下文科省)の主導で2020年には小学校の必須科目としてプログラミングを導入することが検討されている。

文科省のサイトで小学校のプログラミング教育への考え方を見てみると…

■学校教育として実施するプログラミング教育は何を目指すのか・・・ ※1より抜粋
プログラミング教育とは、子供たちに、コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら、発達の段階に即して、次のような資質・能力を育成するものであると考えられる。
【知識・技能】身近な生活でコンピュータが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気付くこと。
【思考力・判断力・表現力等】
発達の段階に即して、「プログラミング的思考」(自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力)を育成すること。
【学びに向かう力・人間性等】
「発達の段階に即して、コンピュータの働きを、よりよい人生や社会づくりに生かそうとする態度を涵養すること」…などとある。担当するのは小学校の教員で、研修を受けた後にプログラミングの教鞭をとる。

実際の学校での取り組み例を挙げると・・・ ※2より抜粋

ある小学1年生のクラスではひとりに1台のIPadで実施。
使用したプログラミング言語はPuffin Web Browser Free
「しゃくとりむしをうごかそう」というテーマで:
・基本的な操作説明と実際に動かしてみる。
・様々な動きを取り入れて動かす。
・虫以外に絵を描いて、絵を動かす。
・・・といった流れだ。

評価基準は:
A 絵の動かし方を考えてプログラムを作成し、実際に動かすことができる。
B 基本的な操作をして絵を実際に動かすことができる。
Cと判断した児童への手立て 具体的な基本説明と比較して異なっている部分を個別指導で確認させる
・・・とある。

ほかの例を見ると、スクラッチやLab Viewなど様々なプログラミング言語を使用。

クラスの進行の仕方は:
・教員が模範のプログラムを用いて説明。
・プログラミングの作品を見て、仕組みを理解する。

クラスの目的や評価基準は:
・動作をするフローチャートを考え、実際に動かすことを通してプログラミングの仕組みを体験的に理解することが目的。(できているかどうか?評価)
・課題解決のためのプログラムを考えることができることを目的としている。
・評価基準は、グループで積極的に意見の交流ができ、独自のプログラムを考えて取り組みことが出来るかどうかとする。といったところだ。

 これらNYのプログレッシヴ教育を通したアプローチと日本のトラディショナル教育を通したアプローチでのプログラミング教育をまとめてみると:

<目的>
プログレッシヴ:自分の思い描く世界を表すためにプログラミングを使って表現する。
トラディショナル:技能としてのプログラミング。そのための手順や工夫を重ねていく。

<進め方>
プログレッシヴ:解説やサンプル作品を先に見聞きせずに取り組む。
トラディショナル:サンプル作品を見たり・手順を習ってから取り組む。

<評価>
プログレッシヴ:コンセプトや自分の考えが明確に表現され、課題に意欲的に取り組んでいるか?
トラディショナル:カリキュラムに沿った項目が達成できているかどうか?を重視。

・・・とそれぞれの特徴の違いが鮮明に見えてくる。それぞれの教育法で学んだその先に、どういう大人になるのだろうか?

ちなみに冒頭でご紹介したプログレッシブ教育のカテゴリーに入るモンテッソーリメソッド。この教育を受けて世界的に成功している有名人を挙げると:
Google創業者ラリーページ、セルゲイ・ブリン。Amazon創業者のジェフ・ベゾス。Facebook創業者のマーク・ザッカバーグ、Wikipedia創業者ジミー・ウェルズなど、誰もが知っているITにまつわる企業の創業者たちだ。

「多くの努力は行き止まりになってしまうことが多いが、そんなことを繰り返しているうちにいつか路地裏に迷い込み、最後には大きな所に辿り着くものなんです。」とジェフ・ベゾスは言う。

世間で注目を集める「プログラミング教育」だが、重要なのは、この学びを通してどういう大人になってもらいたいかということだろう。子どもの特性を伸ばすためにはどういう取り組み方が効果的か? まずは親が熟考することから始めてみるのが子どものためにもなるのではないだろうか?

※1 小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/attach/1372525.htm

※2 文科省:プログラミング実践ガイド
http://jouhouka.mext.go.jp/school/programming_zirei/

<The Wall Street Journal.> モンテッソーリ教育について:
Mr. Bezos often compares Amazon’s strategy of developing ideas in new markets to ‘planting seeds’ or ‘going down blind alleys,’ ” writes The Wall Street Journal. “Amazon’s executives learn and uncover opportunities as they go. Many efforts turn out to be dead ends, Mr. Bezos has said, ‘But every once in a while, you go down an alley and it opens up into this huge, broad avenue.’ ”

「多くの努力は行き止まりになってしまうことが多いが、そんなことを繰り返しているうちにいつか路地裏に迷い込み、最後には大きな所に辿り着くものなんです。」とジェフ・ベゾスは言う。

PROFILE

高木悠凪(たかぎ・はな)

占星術とコーチングをかけ合わせた「占星術×コーチング=アストロコーチング」を実施中。広島県出身。2010年より夫の赴任にてNYで7間過ごした後、2017年4月帰国。大学時代は西洋美術史を専攻。アクセサリー会社から生活雑貨店勤務を経て現在に至る。趣味の芸術鑑賞ではNYでオペラ40本以上、クラシック、ジャズ、美術館・ギャラリー・オークションハウスなどに足繁く通いながら、育児に奮闘の日々を送ってきた。アストロコーチングのほか、自分軸を強くする「才能育成講座」も好評。内閣府認証NPO法人 マザーズコーチジャパン認定 マザーズコーチ。

*高木さんへの執筆・講演依頼、取材して欲しいテーマ、コーチングについてのご相談などがありましたら、info@agrospacia.comまで。