2016/01/13 10:53

第13回(Vol.2) NY:リトミックの真髄をNYで学ぶ
よりよいメソッドを求めて・・・ある音楽教室の先生の挑戦

Photo:マイケル先生の講義の様子 ⒸHana Takagi

第13回 NY:リトミックの真髄をNYで学ぶ
よりよいメソッドを求めて・・・ある音楽教室の先生の挑戦

Vol.2 ダルクローズ理論で感覚を育て、音の感情を表現する 
「ユーリズミックス」「ソルフェージュ」について

by 高木悠凪(たかぎ・はな)

 高木悠凪さんは、2010年にご主人の転勤に伴ってニューヨークにお引っ越し。大学時代、美術史を勉強していた高木さんは、2011年に女の子に恵まれて、以来、お子さんをベビーカーに乗せて美術展へ行くなど、いつも親子で積極的にアートに親しんでいます。今回は、「リトミック」教育について、ある音楽教室の先生の挑戦をとりあげています。

Photo:今日のクラスのキーワード
ⒸHana Takagi

 
<ユーリズミックスについて>
―実際にどのようなことを学ばれているのですか? 新たな気づきなど教えてください。

吉田: これは動きとリズムの連動を学ぶもので、ピアノが鳴ると音の力強さ・長さに合わせて動きを変えていきます。拍子の切り替わりや、コード(長調・短調)の切り替えをする時に動きを変えるルールをあらかじめ作っておきます。このクラス受けて行く中で、私の今までの固定観念は見事に崩されていきました。私は今まで音の高・低を表現する時に〝きれいな音”を使っていましたが、クラスではジャズやブルースのコードが頻繁に使われ、違和感のある音の組み合わせなども積極的に使われていたことに驚きました。今後私のクラスでも、子ども向けの単純な曲ばかりではなく、ジャズなどのコードも当たり前に心地良いと感じられるように、どんどん使っていこうと思いました。
 またあるリズムの時、今まで日本の講習会では前進のみで、まるで何かの訓練みたいだなと思っていました。本講座では四方に動いて、ターンなど自由に組み合わせて動いてもいいという発見もありました。本来のダルクローズの考えた方である「感覚を育てる+人と関わる」ということそのものなのだなと、その時に理解しました。音に合わせながら周りの人たちの様子を見て、彼らの動きに合わせてぶつからないように…と、全体を俯瞰しながらその中で自分を表現していくのです。あと印象に残ったのは、スキップとギャロップの違いを音で使い分けるという課題をクラス全員が様々なアイディアを出し合って研究したことも面白かったです。

Photo:シンシア先生のクラスの様子
ⒸHana Takagi

 
<ソルフェージュについて>
―筆者はこのクラスを見学させて頂いた

 クラスの中では「ド・シ・ラ ラ・ソ・ソ・ソ・ファ・ミ・ファ ファ・ミ・レ・ミ…」とシンシア・リレイ(Cynthia Lilley)先生の合図で受講生全員のCマイナーの音階での合唱が始まった。音の感情を表現するために全員が身体をゆすったり、腕を動かして席を立ち、歩き始める。シンシア先生がその音階に合わせて”Fly,Fly,Fly”と詞を歌うと、同じフレーズを皆が繰り返す。”Fly,Fly,Fly…
 The leaves are leaving the branch, Cold are the winds, Winter is comming.”
「このコードは何だか寒い冬がやってきたような気分になりますね。こんな歌詞が合うでしょ?」とシンシア先生。彼女は身体をいっぱいに使って音の感情について説明し、これに受講生たちは引き込まれ、より自由に、伸びやかに、大きく身体を使ってそれぞれの表現を合わせていく。

―このソルフェージュのクラスではどういう発見がありましたか?

吉田: ダルクローズでは音の幅で音階を捉える重要性を説いていますが、日本で学んだ時にはその部分を強調してやっておらず、実際に私自身、音と音の幅に名称があることを大学受験の時に初めて知りました。この音の幅で音階を捉えるということは、音程が取りやすくなるということで、歌や弦楽器や管楽器などではとても有効になります。こちらでは鍵盤上のド・レ・ミの、黒鍵をはさむ音と、ミ・ファのはさまない音の幅をハンド・サインで表現していました。
 さらに、音の幅に長調、短調を加えることにより、♯(シャープ)や♭(フラット)の感覚がより分かるようになります。机の上で音符という記号を追う理論の世界ではなく、見て、聴いて、声を出す・・・音を身体全体で受けとめていく過程は、なるほどと納得させられました。また、「ド・レ・ミ」という音を「1・2・3」と数字に替えていうことや、カノン(輪唱)も多く用いていたのも新鮮でした。

 ほんの一瞬ピアノを習った時のソルフェージュが実に面白くなく、苦痛だと思っていた筆者にとって、見学したクラスの楽しい雰囲気やユニークな取り組みでもし学ぶことができていたら・・・人生が変わったかも知れないと悔やまれる。

PROFILE

高木悠凪(たかぎ・はな)

内閣府認証NPO法人 マザーズコーチジャパン認定 マザーズコーチ。広島県出身。2010年より、夫の赴任によりNYに駐在中。2011年、女児を出産。大学時代は西洋美術史を専攻。アクセサリー会社から生活雑貨店勤務を経て現在に至る。趣味の芸術鑑賞にNYはもってこいの場なので、オペラ、クラシック、ジャズ、メトロポリタン美術館、MoMA、グッゲンハイム…などに足繁く通いながら、育児に奮闘の日々を送っている。子育て・産後のキャリアチェンジ・家族やママ友の人間関係など、子育てママ向けのコーチングを実施中。

*高木さんへの執筆・講演依頼、取材して欲しいテーマ、コーチングについてのご相談などがありましたら、info@agrospacia.comまで。