高木悠凪(たかぎ・はな)
広島県出身。2010年より、夫の赴任によりNYに駐在中。2011年、女児を出産。
大学時代は西洋美術史を専攻。アクセサリー会社から生活雑貨店勤務を経て現在に至る。
趣味の芸術鑑賞にNYはもってこいの場なので、オペラ、クラシック、ジャズ、メトロポリタン美術館、MoMA、グッゲンハイム…などに足繁く通いながら、育児に奮闘の日々を送っている。
内閣府認証NPO法人 マザーズコーチジャパン認定 マザーズコーチ。
子育て・産後のキャリアチェンジ・家族やママ友の人間関係など、子育てママ向けのコーチングを実施中。
*高木さんへの執筆・講演依頼、取材して欲しいテーマ、コーチングについてのご相談などがありましたら、info@agrospacia.comまで。
第11回 NY:子供たちの夏の過ごし方
~さまざまなサマースクール&キャンプを楽しむ~
第11回 NY:子供たちの夏の過ごし方
~さまざまな種類のサマースクール&キャンプを楽しむ~
高木悠凪さんは、2010年にご主人の転勤に伴ってニューヨークにお引っ越し。大学時代、美術史を勉強していた高木さんは、2011年に女の子に恵まれて、以来、お子さんをベビーカーに乗せて美術展へ行くなど、いつも親子で積極的にアートに親しんでいます。今回は、アメリカの子供たちが夏休みに参加するサマーキャンプ(スクール)がテーマです。
- Photo:サマーキャンプの野外活動
ⒸYuko Shinomiya
アメリカの子供たちの夏休みは6月後半~9月初までの2か月間以上ととても長い。幼稚園~高校生は基本的に夏休みの宿題というものはなく、あったとしても小学生の場合、読んだ本について各自プロジェクトボードを作って、新学期に持って行くといったことのようだ。
その2か月以上もの間、子供達は何をして過ごすのか? 親が外国人の子供の場合、特に日本人は6月最終週の学年最終日を待たずして、6月中旬には日本に帰省し小学校が夏休みになるまでの期間、体験入学をするケースが多い。
また日本の塾のように夏期講習(Test Prep)というものもあり、高校受験や大学受験の際はテストの方式が授業で習うものと異なるため、学力レベルの高い学校を狙う場合にはこの夏期講習に行かせる必要が出てくるようだ。ほか旅行に行く、公園やビーチなどで遊ぶ、サマーキャンプ(スクール)に参加するなど、各家庭のあり方や親の考え方でそれぞれのスタイルが出来てくるだろう。
- Photo:乗馬のサマーキャンプにて Ⓒ Yuko Shinomiya
アメリカでは13歳未満の子供は親と一緒でないと公園で遊ぶことはできない。そのため、夏休みに親が一日中子供の面倒を見ないといけないなどの事情もあり、またさまざまな体験をさせるために実に多彩なプログラムが用意されている。対象年齢は3歳くらい~高校生までと、プログラムによって異なるが幅広い年齢に対応している。アメリカのサマーキャンプ(スクール)は、分類すると次のようになる。
<学校主催のもの>
・プライベートスクールなど学校が夏季も開校して行うサマーキャンプ(スクール)
通常の授業の内容と同じ、もしくは遊びの要素を加えたものもある。違う学校のカリキュラムを経験することもできる
<各種スクールや団体が開催するもの>
各種スクールやYMCAなどが開催するサマーキャンプ。様々なプログラムが選べる
・アカデミック…数学・ELA(English Language of Arts 日本でいう国語にあたり、読み・書き・読解力が含まれる)など学校のお勉強の延長
・スポーツ…水泳・サッカー・テニス・バレーボール・体操など
・クリエイティブアート…絵画・彫刻・映像など
・パフォーミングアーツ…音楽・バレエ・ダンスなど
・サイエンス&テクノロジー…ビデオゲームデザイン、ロボット制作など
・アニマル&ネイチャー…動物と触れ合ったり、植物を育てたりする
・アウトドア…公園や山・湖、動物園などで野外活動
・クッキング…料理
・プリスクール…就学前の子供対象で学校生活に慣れさせるためのキャンプ
・・・など、多岐にわたる。※1
また、日帰りのキャンプ『デイキャンプ』、宿泊のある『スリープアウェイ』も選べる。各テーマに興味のある子供たちが集い、普段学校では深掘りできないテーマにじっくり取り組み、将来の仕事をイメージするような活動まで可能になりそうだ。期間も一週間単位で受けれるものもあるので、スポーツ+サイエンス+アート+アウトドアなど色々と組み合わせて楽しむこともできる。これらのプログラムは全て有料だ。
ほかNY市では市営の公園にあるプールで夏季、水泳プログラムが行われている。無料ということもあり、毎年好評を博している。※2
- Photo:ハンター校のサマースクールのリュックサック ⒸKoyuki Iwamoto Fischman
上記の学校主催のもので、ハンターカレッジ・エレメンタリースクールが開催するハンターカレッジ・キャンパススクール・サマーエンリッチメント・フォー ザ・ギフテッド(Hunter College Campus School Summer Enrichment For The Gifted=何らかの才能が認められる子供たちのための夏期特別プログラム。後はSEGとする)というユニークな運営をしているサマースクールがある。※3
ハンターカレッジ・エレメンタリースクール (Hunter College Elementary School) は、マンハッタン在住者しか受験出来ない全米でもトップレベルの超難関公立校で、このプログラムは五つの居住区(マンハッタン・クィーンズ・ブルックリン・ブロンクス・スタテン島)の公立小学校の優秀な生徒たちの各学年40人ほどが対象となる。SEGが選んだ学校(NYパブリックスクール・ランキングの高い学校が対象のようだ)に招待状が送られ、学校によって対応がまちまちだが、生徒が担任教師から推薦状をもらう場合と担任教師から生徒に「チャレンジしたらどうか?」推薦する場合があるようだ。その推薦状をSEGに送り、合格したら参加できるという仕組みだ。現在の対象はグレード1~7までの生徒で、プログラムの科目は数学・ELA・科学・アートとなる。
- Photo:ハンター校のサマースクールの招待状 ⒸKoyuki Iwamoto Fischman
二人の息子さんがこのプログラムに参加した経験を持つ、クィーンズ在住のフィッシュマン岩本小裕紀さんにお話を聞いてみた。
―ハンター校のサマースクールに応募したきっかけは?-
本人が応募した訳ではなく先生から「ぜひチャレンジしてみて下さい」と言われて招待状を渡されました。各学年で招待状を受け取れたのが10人くらいだったので、素晴らしいチャンスだと思い受けてみました。息子の学校から実際に行った子は、学年で毎年ほぼ4〜5人くらいでした
―息子さん達はこのプログラムで何を得たと思いますか?―
勉強としては当然学んだ事は多かったようです。教え方のアプローチが現地校と違い、勉強というより知恵遊びのようで楽しんでました。また、近隣の五つの居住区から集まってくる精鋭たちとのコミュニケーションも刺激的だったとようです。また兄弟共に毎年招待状を頂いていたので、必ず知っている顔が毎年戻ってきて共に学べたことも大きかったですね
長男のマックス武蔵さんは、「一番楽しかった事は友達とのコミュニケーションで、中学受験で合格した学校でまたその時の友達と一緒になれたことも嬉しいサプライズでした」と語ってくれた。
このようにトップ公立校が門戸を広げて、その教育プログラムを他校の生徒にもシェアしていくという考え方はとても興味深い。これをきっかけに生徒達がさらに新たな学びにチャレンジしていくだろう。
さまざまなジャンルのアクティビティを選び、存分に楽しむアメリカの子供たちの夏…どんな思い出ができるのか楽しみで、うらやましくもある。
※1 NYのサマーキャンプガイド 他にも色々あるので見比べることを勧める。
http://mommypoppins.com/new-york-summer-camp-guide
http://www.timeout.com/new-york-kids/camps/summer-camps-for-kids
※2NY市営の公園が運営するプールでの水泳プログラム(無料)
http://www.nycgovparks.org/programs/aquatics
※3ハンターカレッジ・エレメンタリースクールのサマーキャンプ
http://www.hunterschools.org/es/summer-enrichment