『ターナー、光に愛を求めて』
〜イギリスの初夏の光と風を感じる映像美
『ターナー、光に愛を求めて』
〜イギリスの初夏の光と風を感じる映像美
昨年の秋からいくつか美術をテーマにした映画の公開が続いているが、『ターナー、光に愛を求めて』(原題:Mr. Turner)もその一つで、間もなく日本での公開が予定されている。 18世紀末から19世紀半ばにかけて活躍したイギリスの画家、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの晩年を描いたマイク・リー監督作品で、主演はイギリス人俳優のティモシー・スポール。私たち日本人にとっては、『ハリー・ポッター』シリーズのピーター・ペティグリュー役の印象が強いのではないだろうか。
- Photo:ⒸChannel Four Television Corporation, The British Film Institute, Diaphana, France3 Cinéma, Untitled 13 Commissioning Ltd 2014
本作は2014年の第67回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、マイク・リー監督はパルム・ドールを逃したものの、主演のティモシー・スポールは主演男優賞を受賞、さらに、第80回ニューヨーク映画批評家協会賞でも主演男優賞を獲得するなど、彼の演技が高く評価されて評判を呼んだ作品である。ロンドン生まれのティモシー・スポールは、ナショナル・ユース・シアターと王立演劇学校で演技を学んだ後、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに2年ほど在籍するなど、舞台俳優としての経験を積み、TVや映画に出演するようになり、マイク・リー監督との初めての出会いは1996年の『秘密と嘘』。以後、2002年、本作と同じくカンヌでパルム・ドールにノミネートされた『人生は、時々晴れ』にも出演している。マイク・リーは、きっと彼にとって相性の良い監督なのだろう。
- Photo:ⒸChannel Four Television Corporation, The British Film Institute, Diaphana, France3 Cinéma, Untitled 13 Commissioning Ltd 2014
本作は、世界中で人気の高い近代画家、ターナーの晩年がテーマなので、一度は美術館か、あるいは、画集などで目にしたことがある絵画作品が頻繁に登場する。彼がどのように、あの光に溢れた画風を確立するに至ったのかを、美しい田園や野山、穏やかな日の出、猛り狂う嵐の海など、彼自身が辿った足跡を、本作ではターナーの視点から存分に見せてくれる。そういう意味で、私たちの想像をまったく裏切らない映像美と見応えの内容となっている。ターナーの絵画が好きか嫌いかによって、見る人の反応は異なるとは思うが、主演のティモシー・スポールの演技が高く評価されているだけあって、ドラマとしての緻密な構成も見事だ。
ターナーのファンにとっては、彼と親交のあったヴィクトリア朝時代を代表する美術評論家、ジョン・ラスキン邸を訪問するシーンや当時のロイヤル・アカデミーの様子、コレクターとのやり取りなどが出てくるので、そのあたりについても、お楽しみが多いことだろう。
公開前の映画について、あまりお喋りし過ぎることはルール違反なので、ドラマとしてのストーリーには詳しく触れないが、絵画を描くこと以外、ほとんど学校での教育を受けずに育ったターナーと、その息子をひたすら支え続けた父との関係、また、あまり魅力的とはいえない容貌のターナーが、思いがけなく女性にかなりもてたことなど・・・興味深い点はつきない。
日本の6月は梅雨時で鬱陶しい季節だが、本作の中で旅するターナーの目を通して、美しい大自然の光と風を感じてみてはいかがだろうか?
2015年6月20日(土)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開予定
ⒸChannel Four Television Corporation, The British Film Institute, Diaphana, France3 Cinéma, Untitled 13 Commissioning Ltd 2014.
配給:アルバトロス・フィルム/セテラ・インターナショナル
http://www.cetera.co.jp/turner/
監督:マイク・リー
出演:ティモシー・スポール、ドロシー・アトキンソン、マリオン・ベイリー、ポール・ジェッソン、レスリー・マンヴィル
2014/原題:Mr.Turner/英・仏・独/英語/150分/日本語字幕:古田由紀子/後援:ブリティッシュ・カウンシル、英国政府観光庁
配給・宣伝:アルバトロス・フィルム、セテラ・インターナショナル/
宣伝協力:テレザとサニー レーティング:PG12