2015/04/17 06:44

第9回 NY:マザーズコーチング(後編)
ホントに子供を伸ばす育て方とは?
―『真逆の法則』&『強み』を知って子育てをしてみる―

Photo:個人セッションの実践風景 ⒸHana Takagi

第9回 NY:マザーズコーチング(後編) ホントに子供を伸ばす育て方とは?
―『真逆の法則』&『強み』を知って子育てをしてみる―

by 高木悠凪(たかぎ・はな)

 高木悠凪さんは、2010年にご主人の転勤に伴ってニューヨークにお引っ越し。大学時代、美術史を勉強していた高木さんは、2011年に女の子に恵まれて、以来、お子さんをベビーカーに乗せて美術展へ行くなど、いつも親子で積極的にアートに親しんでいます。

Photo:自己肯定感について語る青木理恵さん
ⒸNews Week

 
 NYでのマザーズコーチングのクラスで青木さんが“自己肯定感”について説明した時、このエピソードを紹介してくれた。

■ NYで大成功した小売業オーナーの育ち方

“自己肯定感”「それでいい」と言われ続けた男子がどういう大人になったか? — NYで小売業を営み、大成功したTさん

彼は幼少期の頃から両親・祖父母からいつも「Tはそれでいい」と言われ続け育った。何に対してもだ。例えば学校に忘れ物をした時、テストでひどい点を取った時(赤点レベル)など、普通の親なら、「ダメじゃないか! どうして忘れたんだ? ちゃんと毎日勉強しないからこうなるんだ! 次からは気を付けなさい、勉強しなさい!!」など叱責するだろう。しかし、彼の親・祖父母は全く違う反応を続けた「Tはそれでいい」と。
 確かに学校の勉強はサッパリのようだったが、彼独自のセンスで仕入れた古着を東京のフリーマーケットで売り出してからみるみる才能が開花。1日100万円を売り上げることも。そして夫婦で蓄えもないまま渡米。完全に裸一貫の状態でNYで商売を始めるが、常に自分を信じて迷いなく動いてきた。そして今ではNYで有名な小売業のオーナーとなり別荘を2件所有するほど大成功をしたのだ。
 全く学問に暗かった息子(孫)を常に「それでいい」と支え続けた親と祖父母たち。どういう状態であれ、完全に自分を全面的に肯定してくれる家族の存在に彼自身、勉強が全く出来なくても、忘れものなどして先生に叱られても卑屈に思ったり・自信を失うことがなかったという。こうして彼は自身の中に揺るぎない“自己肯定感”を作ることが出来たようだ。そうして、自分のやりたいと思うことを迷いなく突き進んで今がある。

 青木さんは言う「とっても面白いでしょ?これを『真逆の法則』って言うんです。「それでいい」は100%承認の言葉。その結果、自分の強みを活かしてあそこまでなられたんです。自己肯定感の塊のようなTさんは淀みのない眼をされていますよ! 自分の思うように人生を送られて素敵ですよね!」と。

 子供が一般的な王道(学業優秀や“いい会社”に就職)を外れてしまったとしても、子供を丸ごと受け止めて「それでいい」と信じ抜くことが出来るだろうか? その確たる信念を持てるということは親自身の揺るぎない“自己基盤”の賜物といえるだろう。

Photo:ストレングス・ファインダーの34資質
ⒸHana Takagi

 
■ 『強み』を知れば、恐いものはない — ストレングス・ファインダーを使って、効果的な子育てをする

 2015年1月、NYで開催された「マザーズコーチング・シンポジウム」でNPO法人マザーズコーチジャパン代表理事の佐々木のり子さんがストレングス・ファインダーを使って自分の『強み』を知り、それを子育てに生かす方法を教えてくれた。

◆ストレングス・ファインダーとは ※1

 個人の強みを築く最も優れた潜在能力がある分野を特定するオンライン「才能診断システム」。ここで取り上げるのは米・ギャラップ社のもので、180の設問に答えることで独自のアルゴリリズムにより34の資質に順位付けされる。上位にあるものが自分の強みの元となる才能を具体的に表す。
注:才能=意識に繰り返される思考・感情・行動パターンのことをいい、“資質”という言葉でも置き換えられる。

 ストレングス・ファインダーは「人間関係構築」「影響力」「実行力」「戦略的思考力」の4つの資質群に分類され、それぞれの中に計34の資質が分類される。これらには良い資質、悪い資質という見方はなく、すべては“傾向性”と見る。基本的に国籍・性別で違いはなく、何度受けても大きく変化しない。

<例>「飛行機の最終便に乗り遅れる」という設定の場合、資質が違うとどう反応するか?
“戦略性”が高い人→「他に方法がないか? 新幹線? それとも高速バス?」と考える。
“適応性”が高い人→「しょうがない。なるようにしかならない…」と考える。
“自己確信”が高い人→「大丈夫、きっと何とかなる!」と考える。
それぞれに思考のフィルタをかけて考えるので、同じシチュエーションに遭遇しても全く違う考えになるのは興味深い。

 なぜ、『強み』にフォーカスするかと言うと…ギャラップ社による実験では、速読が元々不得意なグループと得意なグループでトレーニングを実施し、その習熟度合を比較したところ、1分当たりの単語の読める数の伸びに大幅な違いが出た。(不得意なグループ→3.8倍、得意なグループ→19.3倍)

 日本では不得意なこと(教科)を人並みにすることにフォーカスされがちだが、この結果を見ると得意なものを伸ばす方がより効果的なのは一目瞭然だ。では、この『強み』を子育てに生かすとどうなるか?
「まず親が自分の強み(傾向性)を知り、その資質を強み使い(前向きな使い方)している時と弱み使い(否定的な使い方)をしている時を知ることから始めます」と佐々木さんは説明を始める。

Photo:強みについて解説する佐々木のり子さん
ⒸHana Takagi

 
 例えば、ストレングス・ファインダーの資質で「最上志向」の人の場合、『強みに焦点を当てて自分自身の、あるいは子供(組織)の成果を引き上げようとする。平均ではなく卓越していることが評価基準であり、最高のものを追い求めていく』とのことだが、これを日頃無意識に子供に使う言葉になるとどうだろう? 「もっとできるよ! まだまだできるよ! 同じするなら最高のものにしよう!」といった具合だ。これが強み使いできれば子供を鼓舞して、子供の能力を伸ばすことが出来るかもしれない。
 「弱み使いをすると、子供がテストで90点だった時、子供への反応は『100点取るには、あと10点足りなかったね…まだ頑張りが足りないよね…』と最高の結果を取れなかったので、子供がベストを尽くした結果としても評価できないでしょう」さらに「親の持つ資質を弱み使いして、子供の現状・努力のプロセスなどを承認せず、やる気を削ぐようなことをしていないか? 注意が必要ですね」と佐々木さんは『強み』の扱い方について解説された。
 親自身が自身の『強み』を知り、自分の使う言葉を意識して日常の子育てに生かすことができれば、子供は伸び伸びと子供自身の『強み』を伸ばしていくことが期待できそうだ。このように、マザーズコーチングの学びは幅広く・深い。

 子供が小さい時だけではなく、自立した大人になるまでずっと活用できるスキルやツールがあるので、この学びを身に付けることで子育てのイライラ軽減はもとより、子供のイヤイヤ期や思春期、引きこもりなどを恐れることはないだろう。この学びと場を、NYという海外で孤独な子育になりやすいママたちが絶大に支持するのは当然のことといえよう。

※1 米・ギャラップ社のストレングス・ファインダーのサイト。
いずれも言語設定をすれば、日本語でテスト並びに結果も見ることが可能。
◆新規で34資質を取得する場合
https://dl.dropboxusercontent.com/u/52932534/SF/ALL34.pdf

◆新規で資質のTOP5を取得する場合 (日本円で約1000円程度)
https://dl.dropboxusercontent.com/u/52932534/SF/TOP5.pdf

PROFILE

高木悠凪(たかぎ・はな)

広島県出身。2010年より、夫の赴任によりNYに駐在中。2011年、女児を出産。
大学時代は西洋美術史を専攻。アクセサリー会社から生活雑貨店勤務を経て現在に至る。
趣味の芸術鑑賞にNYはもってこいの場なので、オペラ、クラシック、ジャズ、メトロポリタン美術館、MoMA、グッゲンハイム…などに足繁く通いながら、育児に奮闘の日々を送っている。
内閣府認証NPO法人 マザーズコーチジャパン認定 マザーズコーチ。
子育て・産後のキャリアチェンジ・家族やママ友の人間関係など、子育てママ向けのコーチングを実施中。
*高木さんへの執筆・講演依頼、取材して欲しいテーマ、コーチングについてのご相談などがありましたら、info@agrospacia.comまで。