頭の中はいつもヴェルディ Vol.9:2015年
今年もAGROSPACIAは日本社会の多様性について考えます
2015年:今年もAGROSPACIAは日本社会の多様性について考えます
そんな中、2月に入って目を引いたニュースがあります。東京都の渋谷区が3月に議会提出する、同性カップルに対し「結婚に相当する関係」と認める「同性パートナー証明書」発行する条例案に関するものです。日本ではLGBT(性的マイノリティ)に対する暴力事件が目立って起きているわけではないものの、同性婚の法的認知へ向けての議論はようやく端緒についたばかり。可決されれば全国初の制度となりますが、このニュースに続き、世田谷区でも同性カップルのパートナーシップを認めるよう求める要望書が、3月上旬に区長に提出されることが明らかになりました。さらには、同性愛を「正しく理解し、偏見を解消していくことが必要」と市の人権施策基本指針に謳う横浜市の林文子市長が18日の記者会見で、渋谷区でのニュースを「とてもいいこと」と述べ、横浜市でも同性間でのパートナーシップを認める環境づくりに向けての検討が始まったようです。こうしたニュースが数日の間隔で相次いだことから、性的マイノリティ当事者のみならず、非当事者からも注目が集まることとなり、様々な反応の中には、好意的ではない意見も見られました。
同性間での結婚へ道を開くことは「伝統的な家族のカタチの崩壊を招く」、「少子化に歯止めがかからなくなる」など、日本以外の国でも、同性婚に否定的な人々の間ではよく聞かれる意見です。ただ、少し考えてみればわかるとおり、性的マイノリティは条例の成立如何に関わらず、ずっと存在しています。日本が直面する少子高齢化問題の原因は、別のところにあるはずなのです。また、ほとんどの女性が働いている今の日本社会において、「伝統的な家族のカタチ」の理想とはいったいどのようなものなのか、それじたいの議論も必要でしょう。
今まで私たち日本人は、性的マイノリティについて議論することを避けてきましたが、それは、あたかも彼らが存在しないかのように振る舞ってきただけで、言葉にして議論することによって、日本では「無い」とされてきたLGBTへの偏見が、実は、根深くあったのだということを自覚することになるのかもしれません。それでも、議論を始めること、今のままでは問題があるのだと自覚することは、ポジティブな変化へ向けての第一歩になるでしょう。
性的マイノリティにも暮らしやすい社会を実現することは、以前から懸案となっているシングル・マザーやシングル・ファーザーでも暮らしやすい社会を考えることであり、今の時代にふさわしい婚姻とは、家族とは何かを考えることに他ならないのです。正にこのタイミングで、長年判断が示されずにきた夫婦別姓の可否と女性の再婚禁止期間について、最高裁が初の憲法判断をするというニュースからも目が離せません。渋谷区や世田谷区、横浜市の取組みを「2020年のオリンピックを意識した付け焼き刃の人権対策」という批判が、これは、LGBT当事者の一部から聞こえてきていますが、理由はともあれ、他の先進国で当然とされていることが日本でも可能になることは、決して悪いことではないはずです。
そんなわけで、今年もAGROSPACIAは日本社会のさらなる多様化の実現へ向け、青山BB(Beyond Borders)ラボの若い学生諸君と供に、様々なテーマと取り組んでいきたいと思っています。オリンピックまで残すところ5年を切りました。それまでに東京は・・・日本は、どれだけ変われるでしょうか? そのためには、まず、私たち自身が偏見を捨て、どこに問題があるのかを見極めてゆかなくてはなりませんね…