2014/11/12 12:00

第6回 NY:よい環境とよい学校を求めて郊外へ(前編)
—お受験戦争から離れ、環境と学区共によい所をどのようにして選ぶか?— 

Photo:グレンロック 緑の中の学校 ⒸHana Takagi

第6回 NY:よい環境とよい学校を求めて郊外へ(前編)
—お受験戦争から離れ、環境と学区共によい所をどのようにして選ぶか?— 

by 高木悠凪(たかぎ・はな)

 高木悠凪さんは、2010年にご主人の転勤に伴ってニューヨークにお引っ越し。大学時代、美術史を勉強していた高木さんは、2011年に女の子に恵まれて、以来、お子さんをベビーカーに乗せて美術展へ行くなど、いつも親子で積極的にアートに親しんでいます。

NYの公立校は学費はかからないが学区によって学力の差が大きく、それは住むエリアの豊かさにも比例していることが悩ましいということを前回お伝えした。(第4回:NYの公立校のお受験(前編)参照)
また住んでいるエリアの学校区が良くなくても、G&Tなどで充実したプログラムの学校に入れればいいけど、皆が皆そういう訳にはいかない。
その問題をニュージャージー州に引っ越すことで解消した方にその経緯とその方法について話を伺ってみた。

Photo:窓の外は緑がいっぱい
ⒸHana Takagi

 ハドソン川の対岸にあるニュージャージー州はNY(主にマンハッタン)で働く人のベッドタウンとして多くの人が住んでいる。
学校(公立校)のレベルも高いところが多く、News Week誌のAmerica’s Top Schools 2014では全米トップ100校中、12校選ばれている。※1
ニューヨーク州は100校中16校。(うち5ボロー内は4校、郊外は12校)とニュージャージーはニューヨークと拮抗している。
ほか、US News誌などでも同じようなランキングが出ている。※2

3歳半の娘さんを持つCさんは、昨夏(2013年)にNY・クィーンズからニュージャージー州に引っ越した。その理由は居住区の環境と学区に満足できなかったからだ。

「娘が2歳半の時にクィーンズからニュージャージーのグレンロック区に引っ越しました。住んでいたクィーンズのエリアは環境が良いとは言えず、ペットの犬も散歩の度に足が真っ黒になるような所で、子育てには向かない場所だと思いました。学区も良くないのが分かったので、住んでいた物件がよいタイミングで売れる頃をきっかけに郊外へ引っ越そうと考えていました。」とCさん。

― この場所へはどういう経緯で決めたのですか? ―
「もともとはウエストチェスターを希望していました。仕事で行った時に電車を降りた途端に緑の匂いしたのが印象的でした。夏は涼しく、とても住み易い場所だなと思いました。環境と学区がよいだけに、このエリアでは私たちの予算では満足できる物件がなく、そこで次に探したのがニュージャージーでした。」

― ニュージャージーには色んな街がありますが、今の場所はどういう基準で選びましたか? ―
「まず街を選ぶにあたり、バーゲンカウンティ(群)(日本語補習校や日本語教育機関がバーゲン郡に多いことから)に絞りました。その中で公立学区の良いところと言えばテナフライとリッジウッドなので、その二つ+リッジウッドの隣町で学校ランキングもいいというグレンロックを追加しました。NY、NJあわせて50件ほど見て、1件だけ気に入った物件が見つかって、それが今の家グレンロックとなりました。あとシティデータ※3というサイトで人口、人種、平均収入、平均不動産価値、犯罪率など色んな情報も参考にしました。

例:人口比率でいうと、テナフライが白人62%、アジア人29% (シティデータによる)、リッジウッドやグレンロックのようなハドソン川沿いでない町は白人が80%くらいでアジア人は10~13%くらいとなる。

これらのエリアは公立校の学区が小学校(キンダーガーデン)から高校(ハイスクール)までよいところが多いのが特徴です。学区のよいエリアに住めば、高校までお受験がなくそのまま良い学校に入れるので良いと思いました。リッジウッド、テナフライはバーゲン郡の中でも1,2位を争う公立校のレベルの高さ、グレンロックは引っ越しを考え始めた2012年のNJマンスリーマガジンのハイスクールランキング※4では4位だったので、これらのいずれかにしようと思いました。いい学校といっても色んな尺度があると思うのですが、私の見たポイントとしては、ひとつは統一テスト(SAT)のスコアが高いこと(小~高すべていいところということで見たが、最も重要視したのがハイスクール)と、他に1クラスあたりの先生数や生徒数、出席率、卒業率なども参考にしました。娘はきっとアメリカ人として生きていくことになると思うので現地校が疎かにならないようにすることを第一に考えています。補習校や日本人学校に行くかどうか分かりませんが、通いやすい地域に住んで彼女が選択できるようにしておこうと思いました。」

Cさんはこのように語ってくれたが、娘さんに美しく正しい日本語で絶え間なく話しかけている様子が印象的だ。

Photo:America s Top Schools 2014
ⒸNews Week

NJには日本語の補習校が数校あるだけでなく、全日制の日本人学校もあり、駐在員の子女が日本に戻った時の編入対策の学習塾もあるので、永住者だけでなく子供のいる日本人駐在員家族も多く住んでいる理由といえよう。
このようにして、自ら街や学校の情報を入念に精査してエリアを選定し、物件を探していくという方法でCさんは自分の求めていた環境を手に入れることが出来た。
彼女の情報収集・分析力と自身の明確な判断基準をもっての選択法は多いに参考になりそうだ。

※1.News Week誌のAmerica’s Top Schools 2014
http://www.newsweek.com/high-schools/americas-top-schools-2014
※2.US News誌の全米Best High Schools Ranking 2014
http://www.usnews.com/directories/high-schools/
※3.シティ・データのサイト
http://www.city-data.com/
Cさんの選んだ街、グレンロックの情報
http://www.city-data.com/city/Glen-Rock-New-Jersey.html
※4.NJマンスリーマガジン誌のハイスクールランキング2014年の結果はこちら。ここは2年に1回ランキングを掲載。
https://app.box.com/shared/static/yklbcbv5loktm7zz9yax.pdf

このようなランキングはいくつかあるので、見比べてみることをお勧めする。

(続く)

PROFILE

高木悠凪(たかぎ・はな)

広島県出身。2010年より、夫の赴任によりNYに駐在中。2011年、女児を出産。
大学時代は西洋美術史を専攻。アクセサリー会社から生活雑貨店勤務を経て現在に至る。
趣味の芸術鑑賞にNYはもってこいの場なので、オペラ、クラシック、ジャズ、メトロポリタン美術館、MoMA、グッゲンハイム…などに足繁く通いながら、育児に奮闘の日々を送っている。
内閣府認証NPO法人 マザーズコーチジャパン認定 マザーズコーチ。
子育て・産後のキャリアチェンジ・家族やママ友の人間関係など、子育てママ向けのコーチングを実施中。
*高木さんへの執筆・講演依頼、取材して欲しいテーマ、コーチングについてのご相談などがありましたら、info@agrospacia.comまで。