2014/11/14 12:00

第6回 NY:よい環境とよい学校を求めて郊外へ(後編)
—自然と共に生きる充実の日々— 

Photo:庭で伸び伸び遊ぶ ⒸHana Takagi

第6回 NY:よい環境とよい学校を求めて郊外へ(後編)
—自然と共に生きる充実の日々— 

by 高木悠凪(たかぎ・はな)

 高木悠凪さんは、2010年にご主人の転勤に伴ってニューヨークにお引っ越し。大学時代、美術史を勉強していた高木さんは、2011年に女の子に恵まれて、以来、お子さんをベビーカーに乗せて美術展へ行くなど、いつも親子で積極的にアートに親しんでいます。

子供にとってよりよい環境を求め、ニュージャージー州に引っ越した3歳半の娘さんを持つCさん一家。
学区の良さだけでは測れない、季節の移り変わりを肌で感じながらの生活はプライスレスのようだ。親子共に満たされた生活を送るとはどういうことなのだろうか?

Photo:シマリスも散歩
ⒸHana Takagi

 
― 新たな環境はどうですか? ―
「引っ越し前に娘と二人で今の家に訪れた時、昼食時に庭で聞いたことのない鳥の声が聞こえとても感動しました。家のドアを開けたらすぐに外なので、アリや虫、野ウサギ、シカ、シマリスなど色んな動物がすぐそこに居て、一緒に暮らしているように思えます。また庭を眺めながら四季の移り変わりを感じ、自然と共に生きているんだなと実感する日々です。今年は家庭菜園にチャレンジしてみました。虫がシソを食べたり、兎かリスがトマトをたべたりすることはありますが、お日様の当たった採れたての温かいトマトって本当に美味しいですよ!オーガニックで自分で育ててるから愛着も湧きます。」

― 娘さんの反応はどうですか? ―
「娘は春に庭に咲く木蓮や桜などの花見をし、初夏には庭にお花や野菜の苗を植えて毎日の水やり当番をしながら、植物の成長や虫を観察しました。秋は落ち葉を集めた中でジャンプして遊び、冬は庭でそり遊びや雪合戦、雪だるまをつくるのを楽しんでました。アパート住まいでは、走り回ったりジャンプすることに私は抵抗を感じてましたが、今はそれがないので娘は伸び伸び自由に遊ぶことができます。」

「そしてペットの犬は病気をしなくなりました。ゴミのない街なので、散歩後は独特な臭いが身体についていたのが今はなく、皮膚病もなくなりました。
また、ご近所は同じような家庭環境の人が多く、いい意味でも悪い意味でも似たところが多いので安心感が持てます。娘の学校の先生は品のある英語で話してくれます。」

― 生活面ではいかがですか? ―
「生活面では、主人のオフィスがあるマンハッタンへは電車で約1時間(車で45分)くらいと以前よりはずいぶん時間がかかりますが、通勤圏内です。」
ニュージャージー州はセールスタックス(日本でいう消費税のようなもの)が7%。ただし、洋服・靴・薬・食品には税金がかからず、ガソリン代も安いので生活費をセーブしやすい。ちなみにニューヨーク州ではこの税金が8.875%かかる。服・靴に関しては、110ドル以下のものに関してはこのセールスタックスがない。
「一番近いスーパーが車で5分の所のホールフーズで今までは敬遠していましたが、モノを選べば高くないということが分かりました。近所には巨大なショッピングモールや日系スーパーマーケットもいくつかありとても暮らしやすいです。
ただし、私の住むバーゲン郡はアメリカで唯一日曜日に食料品と日常最低必需品しか売ることができないことになっています。はじめは不便かなと思いましたが、それを見越して買い物をすればいいだけなので、特に問題はありません。」
と、よほどのことがない限りマンハッタンに行く必要がない様子だ。

― 街の環境はいかがですか? ―
「図書館の充実ぶりに驚きました。施設・蔵書ともにとてもきれいです。
子供向けプログラムはユニークなものがあり、活用しています。この夏のイベントの娘のお気に入りはBook Buddieというもので、毎回違う小学生のお姉さんとペアを組んで本を読んでもらっていました。図書館のスタッフに本の選定についてのアドバイスをもらうこともできます。娘が大きくなったら、今度は読む側になって小さい子達の面倒を見てあげられるといいなと思いました。他に面白かったのは、Chick Haching Projectといって、卵からひよヒヨコが孵化していく様子を日々観察できるものがありました。私たちが行ったら10分前に生まれたという、まだ身体が濡れた黄色じゃないヒヨコを見ました。」
この図書館のプログラムでは読書といっても先のように「大きい子供が小さい子供の読む」ものや「親子で読む」もの、Paws for Readingという「犬と読むもの」もある。行儀よく躾けられ認定を受けたセラピー犬と二人きりになり、一緒に本を読むことによって読書や人前で話すスキルを磨き、癒される。自閉症や人前で読むことに自信のない人に向けたものなど誰でも参加できる様々な試みがある。
また科学やクラフト、トリビアゲームなど、多方面から子供の興味をそそる内容のプログラムで図書館に通える仕掛けがある。この地域の教育水準が高いのは街をあげてのこのような活動が根付いていることも大きな要因なのではないか?

Cさんが環境を変えたことで得たことをたくさん聞かせて頂いた。Cさん一家が新たな環境を求めて移動し、いま自然と共に充実した日々を送っているのは、教育の方向性から学校選び、何より暮らしそのものについて、周りに惑わせられないご自身の“幸せの基準”を持っているからなのではないかと筆者は思うのであった。

(了)

PROFILE

高木悠凪(たかぎ・はな)

広島県出身。2010年より、夫の赴任によりNYに駐在中。2011年、女児を出産。
大学時代は西洋美術史を専攻。アクセサリー会社から生活雑貨店勤務を経て現在に至る。
趣味の芸術鑑賞にNYはもってこいの場なので、オペラ、クラシック、ジャズ、メトロポリタン美術館、MoMA、グッゲンハイム…などに足繁く通いながら、育児に奮闘の日々を送っている。
内閣府認証NPO法人 マザーズコーチジャパン認定 マザーズコーチ。
子育て・産後のキャリアチェンジ・家族やママ友の人間関係など、子育てママ向けのコーチングを実施中。
*高木さんへの執筆・講演依頼、取材して欲しいテーマ、コーチングについてのご相談などがありましたら、info@agrospacia.comまで。