2014/10/17 12:00

第10回 中国は世界への扉
上海で元気に働くビジネスウーマン: 北川 裕子さん

Photo:店内の様子 ⒸYuko Kitagawa

第10回 中国は世界への扉
上海で元気に働くビジネスウーマン: 北川 裕子さん

by 深水 エリナ(ふかみ・えりな)/ 析得思(上海)商務諮詢有限公司 総経理

アグロスパシア株式会社は「私たちは社会にイノベーションを起こすエンジンだ!」を合言葉に、従来の「ベンチャー」の概念では定義の難しいニッチなテーマ、次世紀のライフ・スタイル研究、地球以外の惑星で生きてゆくために宇宙で必要となる技術…などを取り上げ、そこに関連する人と情報のアグリゲーションを目ざしています。

深水エリナさんは、自身も上海でマーケティング&セールス・コンサルティングを専門とする会社を立ち上げて活躍中ですが、『AGROSPACIA』では深水さんの協力を得て、上海を中心にアジアでダイナミックにビジネスを展開する人たちをご紹介するインタヴューのシリーズを連載しています。

今回の第10回目では北川裕子さんが登場。1973年大阪生まれ東京育ち。オーダースーツの工場やアトリエを経て2000年に独立。2003年に上海の大学に留学。卒業後上海にて日系企業に就職。2008年に婦人服オーダーメイドサービス、アトリエ・ヘリンボーンをスタートし、2012年上海徐家匯にショップをオープンした、これからさらに活躍が期待されているお一人です。

Photo:店内の様子
ⒸYuko Kitagawa

深水:いつから“洋服作り”に興味を持ったのですか?

北川:中学生の頃、母親が持っていてまったく使っていなかったミシンで洋服を作り始めました。教えてくれる人がいなかったので、作ったけど着ることができない服を作ってしまうということもよくありましたが…(笑)そんなこともあり、中学卒業時も服飾科のある高校を選びました。

Photo:店内の様子
ⒸYuko Kitagawa

深水:上海に来たきっかけを教えて下さい。

北川:最初、上海には語学留学目的で来ました。もともと日本でも独立してオーダーメイドやお直しをやっていたので、留学期間中も上海で店を開けないか機会を伺っていました。でも、2003年当時の上海の物価はまだまだ安くて既成品の洋服は数十元で買えましたし、布市場でのオーダーメイドをしてもシャツ一枚100元以下という状況でした。それに、街を歩く人たちも今ほどおしゃれではありませんでしたから、すぐの独立はあきらめて日系のギフト会社に就職をしました。ギフト会社では主に日本輸出向けのバッグを担当し、OEM商品の生産管理や貿易などを任されていました。この会社には2年半ほど在籍していたのですが、中国人とのコミュニケーションや中国の工場との仕事の進め方、さらには中国ならではの人事・会計など、多くの経験を積むことができました。貿易に携わっている方ならどなたでも経験なさっていると思いますが、納期と品質の点で日本の顧客と中国の工場との板ばさみになり、苦労させられました。

Photo:店舗外観
ⒸYuko Kitagawa

深水:アトリエ・ヘリンボーンのコンセプトを教えて下さい。

北川:ヘリンボーンというのは伝統的な布の織り柄の名前なのですが、時代を超えて人気があります。自分が作る服もヘリンボーンの柄のように長く愛されるようにと思ってデザインしています。アトリエ・ヘリンボーンは、30~50代の女性を対象とした“きちんときれいに見える”ベーシックな服をオーダーメイドで提供しています。30歳を超えると体型も変わってくるので、お気に入りだった服が似合わなくなったり、既製服が体型に合わなくなってきたりと、洋服に関する悩みも増えてきます。アトリエ・ヘリンボーンでは、私がデザインした服のオーダーだけでなく、他の店で購入された服のお直しも受け付けています。大切な一枚をずっと着続ける。私たちはファーストファッションの対極にいます。

Photo:縫製作業
ⒸYuko Kitagawa

深水:中国人女性と日本人女性の好みの違いはありますか?

北川:中国人女性は、コーディネートの必要のないワンピースや、私たちの提案するコーディネートでセットでオーダーされます。また、高価に見える洋服とか、自分をスタイルよく見せてくれるということにもとてもこだわりを持たれています。費用対効果が高い服とでも言ったらよいでしょうか。一方日本人女性は、スタイルがよく見えることよりも、自分が着たいものとか、自分自身が着心地のよい服を求めている気がします。これは大きな違いだと思います。

私は上海に長く住んでいますが、常に自分は上海では外国人だということを意識しています。日本のやり方を一方的に押し付けるのではなく、中国人のお客さんや社員を理解し尊重しながらここ上海で息長く仕事をしていきたいと思っています。

深水:本日はありがとうございました。

PROFILE

北川 裕子(Yuko Kitagawa)
アトリエ・ヘリンボーン
オーナーデザイナー

1973年大阪生まれ東京育ち。オーダースーツの工場やアトリエを経て2000年独立。2003年に上海の大学に留学。卒業後上海にて日系企業に就職。2008年に婦人服オーダーメイドサービス、アトリエ・ヘリンボーンスタート。2012年上海徐家匯にショップオープン。

アトリエ・ヘリンボーン
上海市天平路238号(×広元路)
http://herringbone-sh.com/
http://herringbone.jugem.jp/

深水 エリナ(Erina Fukami)
析得思(上海)商務諮詢有限公司
総経理

アパマンショップホールディングス、中国・インドでマーケティングリサーチ&コンサルティングを行うインフォブリッジを経て、2013年アイザックマーケティンググループの析得思(上海)商務諮詢有限公司の総経理に。
中国市場で事業を行う日系企業に対し、データ分析(統計解析やデータマイニング、テキストマイニングなど)やデータを軸としたシステム開発、ビジネスインテリジェンスサービスを提供している。
2008年より上海在住。
http://cds-cn.com/
http://chinabzz.com/