2014/09/08 12:00

第5回 NY:NYの公立校(小学校)のお受験
—最高得点を獲得した子供のママさんに聞く、取組みとは— (中編)

Photo:「NEST+m」の学校の様子 ⒸHana Takagi

第5回 NY:NYの公立校(小学校)のお受験
—最高得点を獲得した子供のママさんに聞く、取組みとは— (中編)

by 高木悠凪(たかぎ・はな)

 高木悠凪さんは、2010年にご主人の転勤に伴ってニューヨークにお引っ越し。大学時代、美術史を勉強していた高木さんは、2011年に女の子に恵まれて、以来、お子さんをベビーカーに乗せて美術展へ行くなど、いつも親子で積極的にアートに親しんでいます。

前編ではNYの公立小学校のG&T(特別クラス)お受験の激戦ぶりについて触れましたが、実際どういう選考をしているのでしょうか? そして、高得点を獲得した子供たちは今までどういう取り組みをしてきたのでしょう? G&Tテストで99%タイルを獲得したお嬢さんを持つママさんに実際のところを取材したのが今回の内容です。

Photo:Bさんの娘さんが99%タイル獲得した通知
ⒸHana Takagi

 G&Tの入学試験は『NNAT2』と『OLSAT』と呼ばれる2種類がある。
『NNAT2』は図形認識なので、英語の能力や話の理解は問われない。集中して形の把握や、色の識別、順列の違いを把握する能力が問われる。
『OLSAT』は先生からの質問内容を理解し、生徒が解答欄に書かれている絵を選択するという、正解を探す能力を問われるテスト。口頭で答える必要はなく、回答を指差して答える。内容は季節感のあるもの、算数(簡単な足し算・引き算)、日用品の識別に至る様々なものが盛り込まれる。日本は馴染みの少ないものの識別などもあるので注意が必要。また、今年から配点が変わり、OLSATの比重が高くなったようだ。

この試験対策の塾もあり、大手のサイトで見ると1回45分のマンツーマンのクラスで、6回1,000ドル、10回1,375ドル(1回あたり150ドル前後)。さらに1冊50ドル前後の過去問題集のような本を数冊購入して特訓をしていくようだ。このように異常なまでの高額ぶりだが、長年の私立校の出費を考えると、このくらいでG&Tプログラムに受かるなら…と考える親の気持ちも分からないこともない。
※仮に99%タイル取れてもあとは抽選なので、確実に合格とは言えないが。

2014年のテストで娘さんが最高得点の99%タイルを取ったママさん(クィーンズ在住、以下Bさん)にどのような取り組みをされてきたかを聞いてみた。

_G&Tテストに挑戦しようと思ったきっかけは何ですか?-
「3歳の小児科健診で、スタンダードなパブリックスクールに向かないと思うと先生に言われたのが決定的な動機です。学区にあまり恵まれていないことは、子供が生まれて間も無く気が付いていました。」
-いつから・どのくらいの期間取り組みをされましたか?-
「G&Tテストの問題集自体は、2歳代の頃に人に譲って頂いて、どういった内容のテストなのかということをまず私が把握することから始めました。
ちょうど新しいテストへの移行時期でしたので、NNAT2のテキストは、買い足しました。
テキストブックを実際に使い始めたのは、プリスクールを卒業した4歳の時だったと思います。2月生まれの娘にとっては、4歳11ヶ月の時が試験月です。
G&Tテストに的を絞った準備期間は、半年程です。」

-そのテキストブックはどこで入手されましたか?-
「G&Tのテキストブックをいろいろ取り揃えている書店でお薦めは、Bank Street College Bookstore(112st &Broadway) http://www.bankstreetbooks.com です。
書店の方も色々と相談に乗って下さいます。」
-テキストを実際に使い始める前には何かされていましたか?-
「1歳代から寝る前の読み聞かせを続けています。赤ちゃんの頃は一日に20冊を目標に読み聞かせをしていました。
現在は、私が日本語の本を3冊、主人(アメリカ人)が英語の本を3冊読み
就寝することが、我が家の習慣となっております。」

「G&Tテストのテキストブックを実際に使い始める前にできておいた方が良いと考え、日常生活の中で与えた知識は、以下の通りです。

・形の把握
・色の識別
・数の認識、概念
・順列
・ものの名前(英語)
・習慣(例えば、サンクスギビングでなに食べる?とかイースターバニー、エッグは、春だよとか、ジンジャーブレッドクッキーは、クリスマスなど。日本では、馴染みの薄いものは、特に注意!)
・お話の理解
・間違えさがし
・I spy 
などです。試験では問われませんが、アルファベット(大文字・小文字)も取り組みました。」

-ずいぶん沢山のことを取り組まれてこられたようですが、どのように考えてそのようにされたのですか?-
「こう言った知識はいずれ必要な知識ですので、日本語英語問わず・無理やりではなく、ゲーム感覚であるいは、日常に取り入れることは大いに可能だと思います。散歩に行った際、季節感のある話をしてみる…この時点で、季節花、食べ物、洋服(夏服冬服)、遊び道具(砂浜グッズ、ソリなど)話は膨らませると思います。ストローラーを押している際でも、積極的に、路駐されている車の色を一緒に言ってみるとか、何気無く意識してみると、勉強しようと構えなくても小さなうちから日常生活の中で出来ることたくさんあると思います。」

-他に必要と思われること、やってきて良かったことは何ですか?-
「基本的な日常英会話ですね。これは今のところ、G&Tテストは日本語で受験することが出来ない為、特にOLSATは英語の出題を理解し指差しではあるけど回答することが出来ないと厳しいのが現実です。」
「またOLSATのテキストは、使い始めるとわかるのですが、読み手(先生役)と聞き手(子供)のテキストが別々になっているものの方が使い易いです。一冊に質問と解答欄がまとまっている場合は、読み手ページを全てコピーして、別冊を作ると使い勝手が違います。 」

-普段英語を使わない日本人家族ではどのような取り組みがおススメですか?-
「日本人家庭で就学前は日本語強化をされている家庭でG&T対策をされるのであれば、「夜は、英語のごほんを少し読んでみようね」と英語の絵本を図書館から借りてきて、読み聞かせをはじめてみてはいかがでしょうか?
お話把握能力は、就学後も絶対に必要ですし、早期幼児教育や詰め込み学習には、当たらないと思います。」

ちなみにBさんの娘さんは、プリK(日本でいう年中組)が合わずに2か月で中退した。Bさんはこの問題に悩みぬいた結果、ムリに学校に行かせることに固執せず、親子で日々の生活の中で共に学び、娘さんの良さをうまく引き出せたことがこの結果に繋がったのだろう。血眼になり、また背後霊のようにくっつきガリガリと勉強させた訳ではなく、いい時も悪い時も絶えず娘さんを見守り・導いてきたBさん。

Bさんは苦悩の日々があったことも感じさせずに、これまでのことを軽やかに語るのを逐一聞きながら、筆者は沢山の“爪の垢”を頂いた。この素敵な“垢”をどう煎じて飲めばいいのか… そういっている間に煮詰まってしまうのであった。

(続く)

PROFILE

高木悠凪(たかぎ・はな)

広島県出身。2010年より、夫の赴任によりNYに駐在中。2011年、女児を出産。
大学時代は西洋美術史を専攻。アクセサリー会社から生活雑貨店勤務を経て現在に至る。
趣味の芸術鑑賞にNYはもってこいの場なので、オペラ、クラシック、ジャズ、メトロポリタン美術館、MoMA、グッゲンハイム…などに足繁く通いながら、育児に奮闘の日々を送っている。
内閣府認証NPO法人 マザーズコーチジャパン認定 マザーズコーチ。
子育て・産後のキャリアチェンジ・家族やママ友の人間関係など、子育てママ向けのコーチングを実施中。
*高木さんへの執筆・講演依頼、取材して欲しいテーマ、コーチングについてのご相談などがありましたら、info@agrospacia.comまで。