2014/09/05 12:00

第4回 アイザック・マーケティング株式会社
畠山正己代表取締役に聞く〜データ分析との出会いと変遷

Photo:上海シルポートゴルフクラブ(淀山湖) ⒸErina Fukami

第4回 アイザック・マーケティング株式会社
畠山正己代表取締役に聞く〜データ分析との出会いと変遷

昨今大量のデータを分析して市場開拓などに活かす「ビッグデータ」への関心から、そのバッググラウンドとなる統計学を「ビジネスに活かしたい」と考えるビジネスパーソンが増えています。今でこそデータの活用は当たり前のように叫ばれていますが、その実態をわかっている人は多くはありません。そこで、90年代よりデータや社内に蓄積されたデータに着目し、クライアントのビジネスインテリジェンスをサポートしてきたアイザック・マーケティング株式会社の代表取締役 畠山正己氏が「データ分析の変遷」について6回連載で語ります。今回は連載4回目です。

■懸賞キャンペーンのデータ整理の重要性

前回は大量のデータから効率的にターゲットを探すという話でしたが、今回は“顧客データの収集およびそれを活用した企業のコミュニケーション戦略”にテーマを絞ってお話させていただきます。

20年前ほど、各社はプロモーションや自社マーケティングに役立てるため、個人情報を集めるためのキャンペーンを積極的に行っていました。特にタバコ業界は、マスメディアへの広告規制もあり、懸賞付きのキャンペーンをよくやっていました。
当時特に人気があったのが、“PeaceのブルーチタンZIPPO”。ブルーチタンZIPPOは当時、Peaceの懸賞でしか手に入らず、特殊な焼き付け塗装をしているためひキャンペーンの都度風合いや色や雰囲気が異なるため、コレクターも多く存在していました。

人気があるあまり、一つの懸賞キャンペーンに一人の人が複数枚応募することも多くありました。企業側としては、Aさんという個人の正確な情報を収集したい。しかし、応募される方も当選するために試行錯誤されているので、名前の漢字を一文字変えてみたり、よみがなを変えたり、電話番号をわざとずらしたり…と、正しくない個人情報も大量にまざりこんでいました。

そのため、わたしたちはAさんを特定するために、例えば、会社であれば名前を一字でも間違えると当選の結果がいかないので、会社の住所であれば名前は正しいであろう、自宅であれば住所が名前が一文字間違えていても届くので住所は正しいだろうなどなど、複数の条件を組み合わせて、大量の個人情報を正しいものにしていきました。結局、たくさん集まったと思うキャンペーンでも、だぶりのない応募者は、実は20%ほどだったりする。自社内でこのようなノウハウを貯めこむことで、様々なデータベースの取り扱いに精通してきました。

■DB化されたデータの活用方法

このような形で顧客情報がDB化されていくと、次はこれをどのように活かしていくかということに焦点は移ってきます。
当時は、顧客属性に合わせて複雑に異なった印刷物を封入するアッセンブリーマシンや、それぞれ異なる情報を印刷するオンデマンド印刷機の登場によって、顧客の購買傾向や趣味嗜好に合わせたメッセージやキーワードを効率よく顧客毎に印刷できるようになった時でした。

顧客属性によって異なる情報を届けるために重要になってくるのが、データ分析に基づいた顧客セグメントです。

顧客セグメントをするにあたって一番イメージしやすいのは、Recency(最新購買日、最後の利用日)、Frequency(累計購買回数)、Monetary(累計購買金額)から消費者の傾向をみるRFM分析だと思いますが、それに加え、ショッピングの経験がある・ないなどの目的変数とその事象に対する説明要因を探るデシジョンツリーや、購買確率を的確に算出するニューラルネットワーク等を利用したグルーピングが盛んに行われるようになってきました。

このようにデータ分析の世界は、広告規制や個人情報保護方案など外的要因と、テクノロジー技術の進歩によって、手法や考え方がどんどん変化していくのがよくわかります。

(続く)

PROFILE

アイザック・マーケティング株式会社
代表取締役社長
畠山 正己(Masami Hatakeyama)

1979年、大手広告代理店㈱大広に入社。関東および東北の大手食品メーカーや通信業界の広告・マーケティングサポートに従事。その後、1989年にIBMグループの戦略情報システム導入支援を通じデータの世界へ。
1990年、アイザック・マーケティングの前身となる㈱ヒズコミュニケーションを設立。オペレーションズ・リサーチの概念を元に、クライアントの意思決定や戦略策定のためのシステム導入支援、またそれらを利用したサービスの提供を開始する。
1997年、より消費者インサイトを追求するため分社化し、アイザック・マーケティングを設立。
2009年、アイザックグループのグローバル化を推進するため、中国上海に活動拠点を移し、日系企業のマーケティング支援を行う。