2014/08/04 19:33

第9回 中国は世界への扉
上海で元気に働くビジネスウーマン: 佐藤 佳寿子さん

Photo:浦東からみた外灘の風景 ⒸKazuko Sato

第9回 中国は世界への扉
上海で元気に働くビジネスウーマン: 佐藤 佳寿子さん

by 深水 エリナ(ふかみ・えりな)/ 析得思(上海)商務諮詢有限公司 総経理

アグロスパシア株式会社は「私たちは社会にイノベーションを起こすエンジンだ!」を合言葉に、従来の「ベンチャー」の概念では定義の難しいニッチなテーマ、次世紀のライフ・スタイル研究、地球以外の惑星で生きてゆくために宇宙で必要となる技術…などを取り上げ、そこに関連する人と情報のアグリゲーションを目ざしています。

深水エリナさんは、自身も上海でマーケティング&セールス・コンサルティングを専門とする会社を立ち上げて活躍中ですが、『AGROSPACIA』では深水さんの協力を得て、上海を中心にアジアでダイナミックにビジネスを展開する人たちをご紹介するインタヴューのシリーズを連載しています。

今回の第9回目では佐藤佳寿子さんが登場。フリーアナウンサーを経てイベント企画・運営会社を創業。その後、自身の経験から事業をベビーシッターの派遣業、幼児教室の運営、企業内託児所の運営に転換し、全国で約96ヶ所の保育室を運営。さらに、株式会社北海道フットボールクラブコンサドーレ札幌運営会社の役員を経て、北海道のプロバスケットボールチーム“レラカムイ”を運営する㈱Fantasia Entertainmentを設立。2013年より、現職の颯拓商務諮詢(上海)有限公司(SATOグループ)の総経理に就任し、人事・労務コンサルティングサービスの提供を行っている、これからさらに活躍が期待されるお一人です。

Photo:外灘から見たプラ東の風景
ⒸKazuko Sato

深水:佐藤さんは女性経営者として若いころからご活躍されていますね。起業されたきっかけを教えて下さい。

佐藤: 学生時代、ずっと編集者に憧れてました。その仕事にプラスになることを考え、放送局でアルバイトをしていたのですが、結局、地元北海道で就職しようと思うと、編集の仕事など皆無で、卒業後もフリーアナウンサーとして拾ってもらい、ラジオやイベントなどで活動していました。イベントに関わっていると、自然と改善点などがわかってくる。それをクライアントさんに提案しているうちに、話すお仕事だけでなく、イベントの企画・運営やコンパニオンの手配まで仕事が広がってきました。大手企業さんとお仕事していくのに会社という形が必要だったというのが起業のきっかけで、もともと社長になりたいという強い願望があったわけではないですね。当時はバブルだったことも合って、企業さんがこぞってイベントやパーティを行っていましたので、自然と会社も成長していきました。こんなことをいうと、バリバリと仕事だけの人生のような気がするかもしれませんが、当時は女性が仕事と家庭を両立するというロールモデルがなかった時代。私自身も結婚や子育てに強い憧れを持っており、23歳の時に結婚し、20代で3人の子供を出産しました。

Photo:愛犬の宙(そら)ちゃん
ⒸKazuko Sato

深水:3人の子育てをしながらの経営者の仕事は大変だったのではないのでしょうか?

佐藤:もちろんとても大変でしたよ。子育ても大変だったのですがもうひとつ20代後半に大事件があって、当時の夫が起業したのですが、バブル崩壊も間近ということもあって一年間で5千万の負債を抱え、倒産、相談もなく自己破産されるという自体に…。子供を守らないといけないし、連帯保証人になった借金の返済もしなくてはいけない、それに何よりも自身の会社もバブル崩壊で仕事が減っていましたので、大きな方向転換が必要でした。そこで、自身の子育て経験とコンパニオンの登録者の中に幼児教育の資格者がいるのに着目し、ベビーシッターの派遣などの子育て支援事業に大幅な転換をしました。結果このサービスは、回りにいたアナウンサーや看護師、バスガイドさんなど、不規則な時間で働いている女性を中心に徐々にサービスを拡大し、その後企業内託児所の業務受託というビジネスモデルに進化させ、全国約100か所の拠点を展開するまでに成長しました。

ただ、このビジネスを始めたときから、自分が子育て世代の方との年齢差が拡大すると勘所が難しくなるだろうと感じていたこと、上場準備の為毎年監査を受けていたこと、自信の思わぬ再婚話などのタイミングが重なり、東証一部の企業から会社を売ってもらえないかというオファーがあったことから、株式売却という形で会社を譲渡しました。

Photo:上海で一緒に暮らす風ちゃんと花ちゃん
ⒸKazuko Sato

深水:その後、売却された資金でスポーツ団体の経営をされていたとか。

佐藤:事業の売却資金で世の中の役に立つことが何かしたい、と考えていた時にスポーツ団体に経営参画しないかとお話を頂きました。業界に入る前まではよくわかっていなかったのですが、スポーツ団体の経営って単純にプレイヤーを支えるだけでなく、人の動きを活性化し、地元経済にも還元されるなど、色々と波及効果があることがわかりました。実際に私が出資していたプロバスケットボールチームも、新たなスポーツ経営のスキームを生み出し、集客もリーグ参戦以来、日本1をずっとキープし続け、リーグ参戦の三年目には経常黒字が出せていたのですが、その矢先、強引な形で残念ながらスピンアウトさせられてしまいました…

深水:スピンアウトですか…?

佐藤:詳細は省きますが、信頼していた方々に数か月の用意周到なやり方がそこにはあり、人間の恐ろしさを体験しました。一時は人に会うのも怖く、一歩も外に出られない、外に出ると過呼吸になってしまうと言った生活を送っていました。そんな時にたまたま、夫から「上海法人を立てるからちょっとだけ手伝って」と誘われ立ち上げに携わることになりました。これは、今思えば夫の私への愛情だったのだと思いますが、この年齢で初の海外生活、しかもひとりきり。言葉もわからず、最初はかなり不安でした。でも、中国人の人たちの裏表のない解りやすい性格、他人の目を気にせず好きに生きている人たち、メディアの情報ではなく私という人間を見て判断して付き合ってくれる人たちに刺激をもらったり、癒されたりしながら、私はこんな上海にパワーをもらい解放されました。これからは再起の力をもらったここ上海で事業を成功させていきたいですね。

PROFILE

佐藤 佳寿子(Kazuko Sato)
颯拓商務諮詢(上海)有限公司(SATOグループ)
総経理

フリーアナウンサーを経てイベント企画・運営会社を創業。その後、自身の経験から事業をベビーシッターの派遣業、幼児教室の運営、企業内託児所の運営に転換し、全国で約96ヶ所の保育室を運営。その後、株式会社北海道フットボールクラブ コンサドーレ札幌運営会社の役員を経て、北海道のプロバスケットボールチーム“レラカムイ”を運営する㈱Fantasia Entertainmentを設立。2013年より、現職の颯拓商務諮詢(上海)有限公司(SATOグループ)の総経理に就任し、人事・労務コンサルティングサービスの提供を行う。

著書
恋するように働きなさい

褒賞
札幌商工会議所第一回起業家奨励賞受賞、日経ウーマンオブザイヤー2002年リーダー部門受賞、北海道ノーススター賞

深水 エリナ(Erina Fukami)
析得思(上海)商務諮詢有限公司
総経理

アパマンショップホールディングス、中国・インドでマーケティングリサーチ&コンサルティングを行うインフォブリッジを経て、2013年アイザックマーケティンググループの析得思(上海)商務諮詢有限公司の総経理に。
中国市場で事業を行う日系企業に対し、データ分析(統計解析やデータマイニング、テキストマイニングなど)やデータを軸としたシステム開発、ビジネスインテリジェンスサービスを提供している。
2008年より上海在住。
http://cds-cn.com/
http://chinabzz.com/