2014/06/16 12:00

第4回 NY:マンハッタンのプリスクール(幼稚園)のお受験
—幼稚園から実社会の仕事の進め方を学ぶ!?  
プレイデート面接~合格までの道のり(後編)

Photo:クィーンズ:カトリック教会と付属の学校(幼稚園~中学校) ⒸHana Takagi

第4回 NY:マンハッタンのプリスクール(幼稚園)のお受験
—幼稚園から実社会の仕事の進め方を学ぶ!?  
プレイデート面接~合格までの道のり(後編)

by 高木悠凪(たかぎ・はな)

 高木悠凪さんは、2010年にご主人の転勤に伴ってニューヨークにお引っ越し。大学時代、美術史を勉強していた高木さんは、2011年に女の子に恵まれて、以来、お子さんをベビーカーに乗せて美術展へ行くなど、いつも親子で積極的にアートに親しんでいます。

 NYの学費は桁外れに高い。小学校~高校までは公立校があるので公立校に行けば学費の心配は要らないが、プリスクール(ナーサリー)という日本でいう幼稚園は公立の入れる枠がわずかなので、ほとんど私立となる。特にマンハッタンでは驚くほど高く、受験料は100ドル前後、学費はおよそ年間17000~30000ドル弱。+α “寄付金” と大学並みの学費になる。(週3日~5日、半日/全日などで異なる)中でも名門校とされる学校では、申し込みの時点から熾烈な戦いが始まる。アッパーイーストサイドに住む友人達にその様子を聞いてみた。

Photo:プレイデート面接後のThank you Letter
ⒸHana Takagi

 学校の申し込みからオープンハウスまでは親が全面に出てくるが、プレイデート面接になってやっと子供の出番となる。「プレイデート面接」とは、受験する複数人の子供が集められ、指定された場所で決められた時間内で遊ぶ様子を観察される。学校側からはオープンハウスなどで事前に着飾らないように指示があり、普段通りの姿で臨む。9月初に申し込み、オープンハウスを経て翌年1月にプレイデート面接。実に長い道のりだ。

学校側から「どういう子供を選ぶか?」の選考基準を尋ねると通常はこのような回答だ。「クラス全体のバランスを考える。男女比はもちろん、リーダー的な子、おとなしい子、ちょっとでしゃばりな子、おしゃべりな子、色んなタイプの子を集めてバランスを見るので、『こういうタイプを合格させる』という“タイプ”はない」とのこと。アメリカでMBAを取得しコンサルティング会社を経営するAさんは先の学校側の選考基準の考え方についてこう洞察する。「性別・月齢・性格など様々な要素が集まる“小社会”が形成されるようにバランスを取るのだろう」と。

Photo:クィーンズ 幼稚園の下校風景1
ⒸHana Takagi

 1月に受けたプレイデートの結果(合格発表)が一斉に出るのは2月末頃になる。「合格」「ウエイティングリスト」などの発表があり、およそ1週間以内でどこに入学するか決め、手続きを済ませる。志望するウエイティングリストの学校へは、電話を何度もかけて繰り上げ合格にならないかを確認。
「92Yでは『2歳11か月の女子のお子さんの最後の一枠は先ほど埋まってしまいました』と言われました。」とAさん。Aさんは並ならぬ努力の結果、6校中3校の合格を得ることが出来た。

Aさんは今回のお受験についてこう振り返る。彼女はMBA取得の際、クラスの中で様々なチーム編成での実習に参加。さまざまな人種や異なる文化・考え方を持った人で構成されたチームでの実習が最も成果を出したという実体験を持つ。「アメリカではチームでプロジェクトを遂行するのが主流なので、色んな考えを出し合って最大限に成果を出すことを目指す場面が多いです。実社会での仕事の進め方をこの“小社会”を通して学び・育んでいくのではないかと思います。」さらに「野球チームだって、スター打者ばっかり集めたからといって優勝できるとは限らない。多様な機能・才能を持つ人たちが集まってはじめて、『チーム』としての大きな成果が上げられる。」とAさん。このお受験の過程や学校の取り組みの考え方に説得力があると感じているようだ。日本だと成績のよいもの順での選抜・個々で勉強が一般的だろう。それとは全く異なったアプローチでの世界で戦えるエリート養成の仕方はとても興味深い。

Photo:Aさんの合格通知
ⒸHana Takagi

 この他、カトリック系やジューイッシュ系などの宗教色の強い学校、多人種・多文化を幅広く受け入れる学校など様々だ。そういう特色のある学校もAさんは受験したようだが、「まだ子供自身が自分の意思で学校を選べない歳なので親の介入する場面が多いだけに、学校の質(カリキュラムと教師)が最も重要なのですが、一緒になる親御さんの雰囲気を見て学校を選ぶという側面もあり、かなり悩みました。」と語ってくれた。

Aさんの場合、ジューイッシュ系を数校受けたが、そのうちのひとつは「ウチの学校は親の参加を積極的に取り入れています」ということを売りにしていたところもあったそうだ。つまり医者のお父さんが、『お医者さんの仕事のお話』をしに来る日があったり、単に『お父さんが来てみんなに本を読んであげる』という日があったり、あるいは『こんなことができる!』 という提案も得ながら、親を積極的にクラスに参加させていくのだそうだ。
このように学費、様々な特色を持つカリキュラム、教師の質、宗教・人種など色々な要素が絡み合う中、家族一丸となり長い選考期間を経て戦っていくマンハッタンのプリスクールのお受験。それぞれの学校に選ばれた子供達がこれからスタートラインに立ち、どのように成長していくのか大いに気になるところだ。

PROFILE

高木悠凪(たかぎ・はな)

広島県出身。2010年より、夫の赴任によりNYに駐在中。2011年、女児を出産。
大学時代は西洋美術史を専攻。アクセサリー会社から生活雑貨店勤務を経て現在に至る。
趣味の芸術鑑賞にNYはもってこいの場なので、オペラ、クラシック、ジャズ、メトロポリタン美術館、MoMA、グッゲンハイム…などに足繁く通いながら、育児に奮闘の日々を送っている。
内閣府認証NPO法人 マザーズコーチジャパン認定 マザーズコーチ。
子育て・産後のキャリアチェンジ・家族やママ友の人間関係など、子育てママ向けのコーチングを実施中。
*高木さんへの執筆・講演依頼、取材して欲しいテーマ、コーチングについてのご相談などがありましたら、info@agrospacia.comまで。