2014/05/17 11:44

TOKYO RAINBOW PRIDE 2014
—みんなが自分らしく生きられる日はもうすぐそこ…

Photo:Tokyo Rainbow Pride 2014 のセンター・ステージ ⒸArisa Ishikawa

TOKYO RAINBOW PRIDE 2014
—みんなが自分らしく生きられる日はもうすぐそこ…

by 藤牧 望(ふじまき・のぞみ)& 中村 聡子(なかむら・さとこ)

 4月27日、東京代々木公園を舞台にTOKYO RAINBOW PRIDE 2014 が開催された。TOKYO RAINBOW PRIDE(以下、TRP)とは、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)と呼ばれる性的マイノリティーの方たちがアライ(Ally=LGBTを支援する人たち)と共に、「“生”と“性”の多様性」を祝福し、その存在を知らしめ、差別のない社会を実現するため、共にメッセージを発信するための「場」だ。2012年に始まって、今年で第3回目を迎える。春というよりは、もはや夏を感じる陽気のなか、私たちは代々木公園に到着した。

Photo:大勢の人たちで賑わうブース
ⒸArisa Ishikawa

 公園内に入るとすぐ、ファッションやアクセサリーにレインボーカラーを取り入れた人たちの姿が目に飛び込んできた。虹の七色は多様性の象徴である。それを見て、今回初めてTRPに参加する私たちの期待は高まった。
 イベント広場に到着すると、そこはむせ返るような熱気に溢れていた。思い思いのコスチュームを身にまとった参加者、ビラを配る外国の人たち、TRPに協賛する企業のブース、そこに立つスタッフ、さらには世界各国の大使館のブース。LGBT当事者も、支援する側のアライも、みな生き生きとした表情を浮かべ、自分の、そして自分たちの社会の“生”と“性”の多様性を祝福しているように見えた。

 実はこの日、青学BBラボの協力教員で英国大使館職員の佐野直哉さんと英国大使館のご厚意によって、私たちは英国大使館ブースのお手伝いをさせていただくことになっていた。ブースでは”Love is GREAT”というタトゥーシールを貼り、撮影してその写真をコラージュし、”UK”という文字を作るという企画を行っていた。英国大使館がTRPに参加することには「英国大使館、そして、英国はLGBTの方々を歓迎する環境が整っています」というメッセージが込められている。私たちは会場内を回ってイギリスについてのパンフレットを配ったり、ヴォランティアとしてささやかながらお手伝いをさせていただいた。スタッフとしてお手伝いをすることによって、ほかの団体のメンバーや参加者の方とも親しくお話をすることができたのは、今回のイベントに参加した最大のメリットとなった。

Photo:駐日英国大使ティム・ヒッチンズ氏と
ⒸArisa Ishikawa

 また、本当に幸運なことに、駐日英国大使ティム・ヒッチンズ氏にも直接お話しを伺う機会に恵まれた。イギリスは多様性に対して極めて寛容な社会であり、今年3月には同性婚が合法化されている。それまではシヴィル・パートナーシップという制度があり、同性愛者どうしでも準夫婦のような関係が認められていたが、今回の同性婚合法化で、より幅広くカップルとしての権利が認められ、税控除などを受けることもできるようになった。3月の法制化の結果、大使の妹さんの同性婚も実現したそうだ。

 とはいうものの、イギリスという国が始めからLGBTにとって住みよい国であったわけではない。例えば30年前に遡ると、イギリスの外務省では同性愛者が働くことはできなかった。その後、LGBTの権利がストレートの人たちと同等に守られるようになって、様々な人が外務省で働くようになり、今ではとても多様、かつ、ダイナミックな組織になっているそうだ。様々な人が働く組織では、多様な考え、意見が生まれ、それぞれの考えは大事にされるというわけだ。ヒッチンズ大使は「政策などを理解するために、想像力や様々な意見を理解する能力は何よりも重要で、個人的にも組織的にも、多様性は非常に重要であると認識している」と述べた。

 そもそもイギリスが多様性に寛容なのには理由がある。ご存知のように100年前イギリスは大英帝国の時代であり、世界中に数多くの植民地があった。そこからやってくる移民たちによって現在のイギリス社会は多様性豊かなものになった。世界のあちこちに存在するかつての大英帝国の植民地では、そういった影響が現在に伝えられているところも多い。実際、大使夫人のお父上、つまり大使の義父はインドの方だそうで、「イギリスとインドとの深い結びつきがなければ自分は妻に会うことができなかった」と、大使は振り返った。

Photo:虹色の風船は多様性の象徴
ⒸArisa Ishikawa

 そんなイギリスにやってくる日本人の留学生や観光客に対して、「イギリスのどんな部分を知って、感じてもらいたいですか?」という質問に対しては、「いかにして個性をつちかうのか。自分の考えをしっかりと遠慮なく発言できるようにするにはどうすれば良いのか。それを、イギリスを訪れることで少しでも学んで頂ければうれしいです」とのこと。  
 この日ヴォランティアとして参加した私たちも、「みんな一生懸命、個性をつちかうように!」という大使の言葉を胸に刻み込んだ。

 TRPに参加して、一番強く感じたことは「“生”や“性”に対してここまであけっぴろげに語れる日本」というものを生まれて初めて体験した驚きだ。かろうじて局部しか隠していないようなコスチュームを着た人や、売られているグッズなどを見ても、通常の日本の常識であったらタブー視されてしまうようなものまで、何の躊躇もなく存在する自由な空間。また、そこに訪れている人々の中に家族連れが多かったのも印象的だった。
 一見すると子供には似つかわしくない場所と映るかもしれない。しかし、今ここにきている子供たちは、将来大きくなってもLGBTやあらゆる多様な価値観に対して何の差別意識も抱かない人に育つのだろうと考えると、日本の未来だってそんなに捨てたものではない、むしろ明るい!と思えてきた。自分にとっても、全く未知の世界であったが、とても楽しかった。また来年もぜひとも参加したいと感じる、貴重な経験だった。

 最後に、お忙しい中、インタビューに応じて頂き、大変興味深いお話をしてくださった駐日英国大使ティム・ヒッチンズさん、英国大使館員の大野真美子さん、ジョー・オルシノさん、そして、こんな素敵な機会をくださった佐野直哉さん、本当にありがとうございました。 

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