2014/04/03 15:35

第1回 アイザック・マーケティング株式会社
畠山正己代表取締役に聞く〜データ分析との出会いと変遷

Photo:上海の夜景 ⒸErina Fukami

第1回 アイザック・マーケティング株式会社
畠山正己代表取締役に聞く〜データ分析との出会いと変遷

昨今大量のデータを分析して市場開拓などに活かす「ビッグデータ」への関心から、そのバッググラウンドとなる統計学を「ビジネスに活かしたい」と考えるビジネスパーソンが増えています。今でこそデータの活用は当たり前のように叫ばれていますが、その実態をわかっている人は多くはありません。そこで、90年代よりデータや社内に蓄積されたデータに着目し、クライアントのビジネスインテリジェンスをサポートしてきたアイザック・マーケティング株式会社の代表取締役 畠山正己氏が「データ分析の変遷」について6回連載で語ります。

■ 主観的な意見を可視化する“DEMATEL“との出会い

第二次オイルショックが起こった1979年、大手広告代理店に入社しました。大学では建築を学んでいたのですが、建設業界に興味が持てず、漠然とかっこよさそうなマーケティングができる広告代理店を希望しました。

当時は、広告営業として関東や東北の大手食品メーカーや通信業界のテレビや新聞、雑誌など、広告提案を行っていました。新潟に赴任していた時は東京よりも規模が小さくても会社のオーナーや社長と仕事を進めることができていたのでダイナミックに仕事ができていましたが、東京に戻ってからは、予算の規模は大きいけど、組織が大きい分なかなか業務が進まないもどかしさを感じていました。

また、クライアントへの広告提案をするにあたり、社内で意見交換をするのですが、「私はこっちの色の方がいい」、「いいや、私はこっちの方が好きだ」、と言った個人の主観的な意見で広告案や戦略が進んでいくことが多く、本当にこれでいいのかと常に疑問を感じていました。

そんな時、プライベートで付き合いの会った友人が一枚の紙を見せてくれたのです。その紙というのが“デマテル(DEMATEL)”。いわゆるオペレーションズ・リサーチの概念の一種で、主観的な意見やバラバラな意見を集約し、真に重要な課題を探り、優先順位付けを行うもので、“主観”を一枚の絵で表現し、クライアントや社内を説得する資料ができることに非常に感動を覚えました。

もともとオペレーションズ・リサーチは第二次世界大戦中、イギリスやアメリカが複数の軍事作戦から最も効率的で最適な作戦を検証し、最善な策を得る手法として開発されていました。今でこそこの概念は、企業の経営戦略にも当たり前のように採用されていますが、当時の私には非常に新鮮にうつりました。

■ コンピュータが経営戦略にも影響を与える時代が到来

もともと数学が好きだったこともあり、そこから意思決定手法や統計分析という考え方に非常に興味を持っていたので、34歳のときにIBMグループの戦略情報システム(SIS、Strategic uses of Information Systems)を専門に販売する会社へ転職をしました。そこでは、クライアントへのプレゼンを担当し、企業にSISを導入するといかに客観的に販売予測を評価できるか、SISが経営の意思決定にどのように活きていくのか、という根拠のある説明ができることが非常に面白かったです。

また、広告代理店時代、ワープロがフロアに数台ある程度で、提案書も手書きものが多く、IBMグループの最先端のIT技術には驚くことが多かったです。

それと、当時の日本市場は、唯一日本語対応ができていたNEC98シリーズが市場の7割以上を占めており、それ以外ではマッキントッシュが3割弱、そしてその他が多少あるかなというような世界的に見ると特殊な状況でしたが、1989年、ラスベガスで開催されたコンピュータ関連の展示会“COMDEX”に行った時に、マイクロソフトが“WINDOWS“という概念を発表したのを見て、“あーとうとう本格的にコンピュータの時代が来るな”と思ったのを今でも鮮明に覚えています。

(続く)

PROFILE

アイザック・マーケティング株式会社
代表取締役社長
畠山 正己(Masami Hatakeyama)

1979年、大手広告代理店㈱大広に入社。関東および東北の大手食品メーカーや通信業界の広告・マーケティングサポートに従事。その後、1989年にIBMグループの戦略情報システム導入支援を通じデータの世界へ。
1990年、アイザック・マーケティングの前身となる㈱ヒズコミュニケーションを設立。オペレーションズ・リサーチの概念を元に、クライアントの意思決定や戦略策定のためのシステム導入支援、またそれらを利用したサービスの提供を開始する。
1997年、より消費者インサイトを追求するため分社化し、アイザック・マーケティングを設立。
2009年、アイザックグループのグローバル化を推進するため、中国上海に活動拠点を移し、日系企業のマーケティング支援を行う。