2014/03/26 12:00

第5回 中国は世界への扉
上海で元気に働くビジネスウーマン: 伊瀬 幸恵さん

Photo:仕事場からの風景 ⒸYukie Ise

第5回 中国は世界への扉
上海で元気に働くビジネスウーマン: 伊瀬幸恵さん

by 深水 エリナ(ふかみ・えりな)/ 析得思(上海)商務諮詢有限公司 総経理

アグロスパシア株式会社は、「私たちは社会にイノベーションを起こすエンジンだ!」を合言葉に、従来の「ベンチャー」の概念では定義の難しいニッチなテーマ、次世紀のライフ・スタイル研究、地球以外の惑星で生きてゆくために宇宙で必要となる技術…などを取り上げ、そこに関連する人と情報のアグリゲーションを目ざしています。

深水エリナさんは、自身も上海でマーケティング&セールス・コンサルティングを専門とする会社を立ち上げて活躍中ですが、『AGROSPACIA』では深水さんの協力を得て、上海を中心にアジアでダイナミックにビジネスを展開する人たちをご紹介するインタヴューのシリーズを連載しています。

今回の第5回目は、グラフィックデザイナー/アートディレクターとして活躍する伊瀬幸恵さんが登場。伊瀬さんは多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後、同済大学国際文化交流院を修了。7年間日本で広告制作やパッケージ・デザインなどに関わった後、上海に渡り、2008年より在住されています。1年間上海の広告制作会社で唯一の日本人として勤務した後に、現在では「nicetomeetyoudesign幸會設計」名義でフリーランスのデザイナーとして独立、これからさらなる活躍が期待される一人です。

Photo:Abilia育乐湾/ グラフィック、グッズ、壁面等
グラフィックデザイン:伊瀬 幸恵
(nicetomeetyoudesign) ⒸYukie Ise

深水:上海はどれぐらいになりますか? まずは、いらしたきっかけを教えて下さい。

伊瀬: 2008年に上海にきて、今年で7年目です。日本でも広告やパッケージの会社で働いてきて、一区切りつけたいなという時に旅行で上海に出会い、現地の皆さんとの縁があって移住しました。でも、実際に住み始めた最初の頃は、空気の悪さ、人のマナーや現地の習慣などに耐え切れず、「旅行とは違って、上海イヤだ!」って思いましたね(笑) ただそう思ったのも移住して半年から一年の間ぐらいで、その後は上海が大好きになりましたけれども。当時は、もともと興味をもっていた香港や台湾の文化や音楽、映画などから、中国本土もそうだろうと思い込んでいて、いつも比べていたからつらかったんだろうなと思います。

深水:今はフリーランスで活躍されていますが、上海に来ていきなりフリーランスで仕事を始められたのですか?

伊瀬:最初の半年は上海の大学で語学を勉強しながら、現地の広告会社でアルバイトをしていました。当初は日本語が話せる中国人の方が助けてくれるという話だったのですが、蓋を明けてみたらその人はほとんど会社にいなくて。日本人は私一人。まだ中国語が初・中級程度の自分にとって、その環境はとてもハードでしたが、結果として中国語がかなり上達しましたし、何より中国の人が何を考えているのかや、言葉が使えなくても伝える技術が身に付いたと思います。ただ、日本と変わらぬ激務ぶりで、休みも月に1~2日しかなく、体力的にも限界を感じていました。結局、その会社は1年で退職し、フリーランスの道を選びました。独立した時期はちょうど上海万博前だったので、万博関連の仕事もあったのでタイミングも良かったと思っています。

Photo:上海高島屋RF1/ POP、ディスプレイ等
ディレクション:Anpas Consulting Co.,Ltd.
グラフィックデザイン:伊瀬 幸恵
(nicetomeetyoudesign) ⒸYukie Ise

深水:独立して一番良いと感じたことは何ですか?

伊瀬:クライアントさんと直接会話ができることですね。会社に勤めていると役割分担になっているので、営業さんや広告代理店の方を通して、クライアントさんの意見を聞くことが多いんです。例えば、「ここの背景を青に変更してください。」という指示ひとつとっても、クライアントさんにとって大きな意味を持つことなのか、ただ「青に変えたい」という気分なのか、といったクライアントさんの本心を直に感じることができます。

深水:中国人と日本人が好むデザインの違いはありますか? あったらぜひ教えて下さい。

伊瀬:いろいろあるのですが、一番は中国人が中国語でいうところの「設計感(デザイン感)」を好むことです。日本人だと、例えば、白い背景に文字だけといった、シンプルで洗練されたデザインを好むのですが、中国人は背景も全て柄が入っているようなものを好みます。せっかくお金を出したのだから、デザインしてもらおう!と「デザインした感じ」を求められるのだと思います。あとは、デザインの好みの話からはちょっと外れますが、日本だと一般的には会社やチーム、ポジションによってできる仕事内容は限られています。でも、中国だとデザインの専門家として、幅広い仕事を任せてくれることが多いので楽しいですね。

深水:伊瀬さんは上海在住7年目ですが、ここ数年上海にいて感じた変化はありますか?

伊瀬:そうですね・・・一番大きく変わったのは女の子が可愛くなったことですかね(笑) みんなお化粧やファッションに興味を持つようになったと思います。あと、中国の方もどんどんお金持ちになってきており、日常や旅行先でさまざまなことを経験することによって、「サービス」に対する欲求が高まってきている気がします。だからこそ、私が日本人であるということに感謝をされることが増えてきているのかな、と思います。

いつまで上海にいるかは未定ですが、上海にはいろいろな国籍、人種、文化を背景に持っている人たちがいます。これからもその違いをエンジョイし続けられる人でいたいと思います。

深水:伊瀬さんのますますのご活躍楽しみにしています。ありがとうございました!

PROFILE

伊瀬 幸恵(Ise Yukie)
グラフィックデザイナー/アートディレクター
インストラクター
東京都出身。女子美術大学附属高校、多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。同済大学国際文化交流院修了。2008年より上海在住。

7年間日本で広告制作やパッケージ等デザイン業に関わった後、渡上海。1年間現地の広告制作会社で唯一の日本人として勤務。

以降「nicetomeetyoudesign幸會設計」名義でフリーランスに。

深水 エリナ(Erina Fukami)
析得思(上海)商務諮詢有限公司
総経理
アパマンショップホールディングス、中国・インドでマーケティングリサーチ&コンサルティングを行うインフォブリッジを経て、2013年アイザックマーケティンググループの析得思(上海)商務諮詢有限公司の総経理に。
中国市場で事業を行う日系企業に対し、データ分析(統計解析やデータマイニング、テキストマイニングなど)やデータを軸としたシステム開発、ビジネスインテリジェンスサービスを提供している。
2008年より上海在住。
http://cds-cn.com/