西田卓矢(にしだ・たくや)
株式会社 DEICA JAPAN代表取締役/クリエイティブ・ディレクター
アパレル業界でパタンナーとしてスタート、その後、独自のデザインを追求するようになり、数多くのアーティストやCM衣装を手掛けてきた。デビュー以来、2001年まで浜崎あゆみの衣装を専属デザイナーとして担当。その後、自身のブランドSNARLEXTRAを立ち上げ、ストリート・クチュールをキーワードに、リメイク・デニムなどの斬新なデザインが注目された。2001年のレコード大賞での、記憶に残るhitomiの衣装は西田のデザイン。2005年、LAに拠点を移し、東京とLAからTAKUYA NISHIDAブランドを発信。2007年、安室奈美恵の復活ともいえる「Hide & Seek」の衣装を担当。中島哲也監督「パコと魔法の絵本」の衣装なども手掛けた。
2006年、趣味で始めたキャンドルが銀座エルメスのショーウィンドーに飾られ、それを機にラグジュアリー・キャンドルのブランドとしてDEICAをスタート。ホテル・ニューオオタニ、シャングリラなどの一流ホテル、シャネル、ピアジェ、マセラッティなどのヨーロッパの老舗ブランド、浜崎あゆみ、安室奈美恵、EXILEなどのアーティスト、バーニーズ・ニューヨーク、ANA、伊勢丹、梅田阪急などにも商品を提供。2011年からは新たにDEICAビューティのラインナップをスタート。2013年、ヴォーグ・ビューティアワードに選ばれた。
2014年はワインのラベル・デザインやジムなど、ライフ・スタイル全般のプロデュースに仕事を広げ、世界をフィールドに今後のさらなる飛躍が期待されている。
第5回 目に見えないものをデザインする
—日本発の「香」で世界を目ざす 株式会社 DEICA JAPAN
第5回 キャンドルからビューティ・プロダクトへ
もともとファッション・デザイナーだった株式会社 DEICA JAPANの西田代表は、当初、「香」よりも「オブジェ」としての存在を意識してキャンドルを作りはじめた。ところが、今ではアロマ・キャンドルのラインナップだけでなく、ハンドクリーム、ボディローション、バス・オイルなど、様々なスキンケア用品の開発、そして、ホーム用品のディフューザーや台所洗剤までを品揃えして、「香」をデザインするだけでなく、健康、そして、豊かなライフスタイルそのものをデザインしようとしているように見える。
岩渕:キャンドルづくりを始められて、最初は、ヨーロッパ系老舗ブランドのウィンドウ・ディスプレーや、芸能人やセレブの結婚式で使うような、オブジェとしての色彩の強いキャンドルを頼まれてデザインしておられたのが、だんだん「香」そのものを意識したプロダクトを作るようになっていった経緯は何だったのでしょう? 今では幅広いスキンケア用品を提供されるようになっていますし、ルームスプレーやディフューザー、さらには台所洗剤などのホーム用品も製品のラインナップに加わっていますよね?
西田:会社を設立して2年目ぐらいですかね・・・もっと体にいいものをと考えた時に漢方をキャンドルにできないかと思いまして、本格的な漢方の成分を配合したキャンドルを開発し、それがビューティ・ジャーナリストや芸能人の間で話題になりました。現在、「泥華健美コレクション」としてご提供しているラインです。世界初・・・だと思いますが、漢方と香、炎のゆらぎによる癒し効果を融合させたもので「漢香」キャンドルと呼んでいます。
香と調合した成分別に、逍遥香 (BLUE)、若巡香(PURPLE)、温的香 (WHITE)、蘇芳香 (BLACK)と命名し、そのイメージを色でパッケージに表現しました。漢方キャンドルを作ったのは、東洋と西洋をミックスした、ニュー・オリエンタルなテイストのモノを作りたいと思っていたこともきっかけでした。キャンドルであっても「漢方」を謳うわけですから、漢方に詳しいハーブ、アロマの専門家にコンサルタントとして監修をお願いして、ナチュラル・テイストを徹底することで、DEICAの自然に対するこだわりを広げていけたらなとも思いました。
そして、この「漢香」シリーズは、単に良い香りのするキャンドルというだけに終わらず、美・健康を意識したインナー・ビューティーに働きかけるキャンドルという受け止められ方をして頂くことができて、それがスキンケア、ビューティー・ワールドに入るきっかけになりました。そこから、ナチュラルなエッセンシャル・オイルやオーガニック素材を使ったハンドクリームやボディローションなど、現在扱っているコスメティックのライン、さらには、汗をかいた時にちょっと使えるような、かわいらしいポーチ入の、ハーブエキスをしみ込ませたアロマ・タオルなどにまでDEICAのプロダクト・ラインを広げることもできました。
岩渕:「香」は、実際、人の心や、やる気に大きな影響を与えるような気がします。ホンモノの漢方薬を配合したキャンドルというのは、ありそうで無かった発想ですね。西洋的な、はっきりした香りのアロマ・キャンドルとはまた違って、日本人にとってはどこか馴染み深い、ほのかな香りが精神をリラックスさせてくれるようで、お風呂に入っている時や睡眠前に使ったら、効果がありそうですし、海外でも話題になりそうですね。
(続く)