2013/12/27 12:03

第3回 文化的多様性の実現に向けて・・・
言うは易く行なうは難し

Photo: 新しくスタートする「青山BBラボ」のインターンは全員が大学2年生 ⒸHaruna Watanabe

by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長

 シアトルからサンフランシスコ、そして、東海岸へ…。ニュ—ヨークでは、2014年に創刊25周年を迎える、先駆的なLGBTとクリエーティヴな仕事をしているすべての人のための雑誌『メトロ・ソース』の創業
社長であるロブ・デイヴィス氏にお目にかかることができました。

 デイヴィス氏との出会いを機に、『アグロスパシア』は創刊1周年を前に、日本社会における、さらなる文化的多様性の実現へと向けて、学生インターン6名を迎え、「青山BB(Beyond Borders)ラボ」を新規プロジェクトとして立ち上げ、LGBT関連を含む、今までカバーできていなかったテーマ、分野についても積極的に取り組んでいこうと考えています。

Photo:来年、創刊25周年を迎える”Metro Source”
ⒸJunko Iwabuchi

 シアトルで生まれて初めての「ハヌカ」という異文化体験をして、翌日は勝手知ったる感謝祭の休日。夜までにはベイエリアの「アメリカの家族」の元へ移動せねばならないものの、朝は北欧のコテージのようなかわいらしい友人宅で隣家の猫の訪問を受けつつ、のんびり果物とヨーグルトの朝食を取りました。友人は空港まで私を送った後、感謝祭のパーティーにそのまま行くとのことでしたが、パーティーでは料理が持ち寄りのため、朝からせっせとメキシコ風のちょっぴりスパイシーなヤム・ポテトのローストや、コリアンダーやライム・ジュースをたっぷり使ったコールスローを作っていて、家中が良い匂いに包まれていました。誰かが家の中で料理をしている音を聞くのは、それがお母さんであっても、ボーイフレンドであっても、友人であっても、良いものですね…。

 夜8時過ぎにサンフランシスコの空港に着くと、「家では、まだみんなパイを食べているよ。ターキーもマッシュト・ポテトも大量にあるぞ。」とお父さんが一人で迎えに来てくれていました。帰る道すがら、「そうだ、まだ新しいベイブリッジを渡っていないだろう?」と言うので、ベイブリッジを渡るルートで家路を急ぎました。

 文化的多様性といえば、このファミリーもまた、文化的多様性そのものという感じで、結婚を通じて日系と白人がちょうど半々ぐらいの構成です。久しぶりに会う同世代の家族たちと話をしていてなかなか座れない私に、お母さんが「ディナーはどうするの?」と尋ねるので、「プロテイン(タンパク質)ちょうだい!」と言うと、「ターキーはプロテイン以外の何ものでもないわ」と笑って、スライスされた山盛りのお皿を示してくれました。ここでようやく、今年一回目のターキーや温野菜、ポテト、サラダなどにありつくことができました。気心が知れたファミリーなので、普通の場面だったら話題にしづらい人種ジョークや高校・大学の時の体験、アジア女性のステレオ・タイプについてなど、世代を超えてわいわいがやがやといろんな話をすることができました。

 そうこうするうちに感謝祭の週末はあっという間に過ぎてゆき、月曜日からのビジネスに備え、日曜日にはサンフランシスコからNYへと移動しました。今回の出張で最も重要な使命は、NYに拠点を置く『メトロ・ソース(Metro Source)』という、来年創刊25周年を迎える、先駆的なLGBTとクリエーティヴなすべての人へ向けたマガジンの創業社長であるロブ・デイヴィス氏とお会いすることでした。

 『アグロスパシア』は人種、性別、年齢、性的嗜好に左右されない、どんな価値観であっても寛容であろうとするメディアを標榜していることから、ロブ・デイヴィス氏には直接お会いして、ぜひ一度、日本に講演にいらして頂きたいというお願いをするつもりでした。デイヴィス氏とお目にかかる日程調整は日本を発つ前からしていたものの、感謝祭の週末が間に挟まってしまったため、日時がしっかりフィックスされずにNYに着いてしまい、ちゃんとお会いできるかかなり不安でした。幸い、メトロ・ソース編集部のスタッフの迅速な対応でデイヴィス氏とお目にかかれることになり、チェルシーのおしゃれな編集部にお邪魔することができました。 

 「日本の若いLGBTの人たちのロール・モデルとして、ぜひ来年、日本にいらして彼らと対話していただきたいのですが?」と提案すると、「6月のプライド月間のLAでのイヴェントの後、そのまま東京へ行くのであれば、一週間ぐらい時間が取れるかな」と言って下さり、「それじゃあ、このまま対話を続けて、日程を具体化することにしましょう」という話に至り、にこやかに握手をして別れることになりました。

 ロブ・デイヴィス氏といえばハンサムであることで有名で、NYのゲイの友人たちがこぞって「カレ、写真と同じぐらいグッド・ルッキングだった?」と聞くので苦笑してしまいましたが、「写真とまったく同じ!」と答えて、みんなを羨ましがらせることもできました。

 現在、NYの『メトロ・ソース』とは、ロブ・デイヴィス氏を日本にお招きして講演会を開催する計画を進めているほか、英語版の記事を『アグロスパシア』でライセンスして日本語の翻訳版を掲載することなど、様々なコラボレーションの可能性について協議しています。

 『アグロスパシア』では、この「文化的多様性」に対応するプロジェクトを推進していきます。また、メディアとしての機能を拡充するために、青山学院大学から学生インターン6名を迎え、新たに「青山BB(Beyond Borders)ラボ」というプロジェクトをスタートし、ロブ・デイヴィス氏の来日に備えます。学生たちは、自分たちが興味を持った対象にインタヴューをし、順次記事として発表しながら、デイヴィス氏の講演や『メトロ・ソース』の記事翻訳などを担当する予定です。彼ら自身のイニシアティヴにおいて、様々なレクチャー、勉強会、イヴェントも企画されることでしょう。彼らの活動が、次の、どんな新しいステップにつながっていくのか・・・? 

 日本社会における文化的多様性の実現に向けて、どうぞ読者のみなさまも、温かい目で彼らの活動を見守って頂ければ幸いです。

(了)