第2回 中国は世界への扉
上海で元気に働くビジネスウーマン: 下地麻貴さん
第2回 中国は世界への扉
上海で元気に働くビジネスウーマン: 下地麻貴さん
アグロスパシア株式会社は、「私たちは社会にイノベーションを起こすエンジンだ!」を合言葉に、従来の「ベンチャー」の概念では定義の難しいニッチなテーマ、次世紀のライフ・スタイル研究、地球以外の惑星で生きてゆくために宇宙で必要となる技術…などを取り上げ、そこに関連する人と情報のアグリゲーションを目ざしています。
深水エリナさんは、自身も上海でマーケティング&セールスコンサルティングを専門とする会社を立ち上げて活躍中ですが、『AGROSPACIA』では深水さんの協力を得て、上海を中心にアジアでダイナミックにビジネスを展開する人たちをご紹介するインタヴューのシリーズを連載しています。
第2回目は、弁護士法人北浜法律事務所の弁護士、下地麻貴さんが登場。下地さんは2004年神戸大学在学中に司法試験に合格。2006年の司法修習終了後、弁護士としてのキャリアをスタート。弁護士生活一年目、二年目は企業法務(M&A、事業再生、労務、その他顧問相談など)、刑事事件、民事事件等あらゆるジャンルの案件を対応、現在の専門は企業法務。2014年2月より、広州の金杜律師事務所にて現場研修を行っており、これからさらなる活躍が期待される一人です。
- Photo:2013年9月に設立された上海自由貿易試験区 Ⓒ 下地 麻貴
深水:下地さんは現在中国で語学・現場研修中なんですよね。中国での生活はどれくらいですか?
下地: 中国での生活は、語学研修期間を合わせて一年半が経ったところです。最初の半年は、上海の華東師範大学で語学を学び、2013年2月から7月までは上海の錦天城律師事務所、今は大成律師事務所というところで仕事をしながら中国法実務の勉強を行っています。実は来年の2月からは、弁護士サービスの需要の高い広州の律師事務所に研修場所を移す予定です。
深水:アグレッシブに活動されていますね! 現地の研修先はご自身で探されているのですか?
下地: 日本の同僚・先輩からの紹介もあったのですが、上海に来てから培った人脈などを駆使して探しました。
皆さん想像しにくいかもしれませんが、法律事務所は会社組織というより、弁護士個人が独立してやっているところが多いです。私の所属する北浜法律事務所も、海外研修について辞令が出るというわけではなく、何かをやりたいときは自ら「やりたい!」という意思表示をしなくてはなりません。今回私も中国で研修をしたいと思い、事務所に申請を出しました。私の所属する法律事務所は、研修中のサポート体制もしっかりしており非常に助かっています。
深水:最近日本ではチャイナ・リスクや中国経済沈没などなど、中国にマイナスのことばかり目がつきますが、なぜこのタイミングで上海を研修の地に選んだのでしょうか?
下地:私もネガティブな意見が多いと思います。しかし、いくら「チャイナ・リスク」という言葉があっても中国と日本の関係は切っても切れないというのが現状かと思います。
私自身はもともと海外案件を主に担当していたというわけでもなく、海外志向が強い方ではなかったのですが、2011年の春ごろに漠然と研修に行くなら中国、上海かなぁと思ったんです。研修に来る前では、クライアントから中国案件の相談を受けても、ただ現地の律師を紹介する役割で終わったり、現地の律師から言われたことをほぼそのまま伝えるしかないことも多く、もどかしく感じていました。だったら、自分でも仕事の中身をマネージメントできるように中国で実務を学んでみよう! 自分で現地の信頼できる律師を探そう!と思い立ったのがきっかけです。
- Photo:上海市内にある水郷古鎮・七宝。休みの日は近場の観光地でリフレッシュ! Ⓒ 下地 麻貴
深水:中国と日本の弁護士に違いがあれば教えて下さい。
下地: もちろん制度や慣習も違うので一概には言えないのですが、例えば日本で何年も弁護士をやってきて、単に法律の条項を伝えるのではなく、過去の判例や解釈を参考にして自分たちだったらこう考える、現時点でこうするべきだ、といったように複合的に結論を出すことが弁護士の仕事の重要な役割の一つだと思っているのですが、中国の場合、実務が違うので仕方ない部分もありますが、「法律の何条にこう書いてある」「当局はこう言っている」で終わってしまうケースが多い気がします。どのように結論を導き出したのかという過程をきちんと検討してくれる律師はまだまだ少ないと感じます。ただ、コミュニケーションを通じて次第に現地の律師も日本のやり方を意識して日本のクライアントの要望を理解しようという気になってきていて、「今回の仕事はクライアントさん満足してくれた?」なんて聞いてもらえるとちょっとずつ溝が埋まっていくみたいで嬉しいです。
誤解のないよう申し上げますと、中国がダメとか遅れているということではなく、どうしてそういう背景になるのかを理解することで、日本に戻ったあともうまく全体をマネージメントできる、クライアントに対してよりよいサービスを提供できるようになるのではと思っています。
深水:ちなみにどうして弁護士になろうと思ったのですか?
下地:ありがちな話なのですが、小学生の頃たまたま観た刑事もののドラマで弁護士が法廷で正義のために戦っているのを見てかっこいいなと思ったのがきっかけです。論理の戦いと事実の追求ってかっこいいなぁと思ったんです。小学6年生の時に作ったタイムカプセルにも、「将来の夢 弁護士」って書いたんですよ!
深水:子供の頃の夢を叶えるってすごいですよね。多くの方は小さい頃の夢って実現しませんよね・・・
下地:そうですね。笑 脇目もふらず頑張りました!今の中国生活も私は期間限定なので、いろんなことに挑戦しています。日本にいると同じ業界やクライアントさんとの接点しかありませんが、上海にいると色々な方にお会いできますね。本当に毎日新しい人に会えるのが楽しみ!
深水:プライベートもお仕事も充実されていて何より! 本日はありがとうございました!来年からの広州生活も楽しんでくださいね!
脚注:律師=中国の弁護士の呼び名
下地 麻貴 (MAKI SHIMOJI) | |
弁護士法人北浜法律事務所 弁護士 2004年神戸大学在学中に司法試験に合格。2006年の司法修習終了後、弁護士としてのキャリアをスタート。弁護士生活一年目、二年目は企業法務(M&A、事業再生、労務、その他顧問相談など)、刑事事件、民事事件等あらゆるジャンルの案件を対応、現在の専門は企業法務。2012年2月より中国上海語学研修を開始し、上海の錦天城律師事務所、大成律師事務所にて現場研修を、2014年2月より、広州の金杜律師事務所にて現場研修を行う。 |
深水 エリナ(Erina Fukami) | |
析得思(上海)商務諮詢有限公司 総経理 アパマンショップホールディングス、中国・インドでマーケティングリサーチ&コンサルティングを行うインフォブリッジを経て、2013年アイザックマーケティンググループの析得思(上海)商務諮詢有限公司の総経理に。 中国市場で事業を行う日系企業に対し、データ分析(統計解析やデータマイニング、テキストマイニングなど)やデータを軸としたシステム開発、ビジネスインテリジェンスサービスを提供している。 2008年より上海在住。 http://cds-cn.com/ |