2013/11/22 13:00

第5回 京都ヒストリカ国際映画祭……”ヒストリカ”ってなに? 
カウントダウン特集 IV

Photo: 京都の紅葉ライトアップ Ⓒ加藤 舞(かとう・まい)

第5回 京都ヒストリカ国際映画祭……”ヒストリカ”でこの映画を見よう!
カウントダウン特集 IV

山田 智也(やまだ・ともや)/松竹撮影所 製作部

2013年11月30日~12月8日に開催!
第5回京都ヒストリカ国際映画祭 カウントダウン特集 第4回

「京都ヒストリカ国際映画祭」カウントダウン特集第4弾となる今回は、前回に引き続き【ヒストリカ・ワールド】部門からもうひとつの日本初上映となる話題作『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』(イタリア、フランス、スペイン/2012年/106分/Dracula 3D)をピックアップ。映画製作者の視点から見どころをご紹介します!記事の最後までどうかお付き合いください。

イタリアン・ホラーの巨匠が描く鮮血のドラキュラ!

Photo:『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』
Ⓒ 2012 MULTIMEDIA FILM PRODUCTION s.r.l. – ENRIQUE CEREZO P.C. s. a. All Rights Reserved.
2014年春、シネパレス他全国順次公開!

 鮮血の帝王ダリオ・アルジェント。みなさん御存知ですか?世界中のホラーファンにとってビックネームの映画監督です。アルジェントは御年73歳、1969年に映画監督デビューして以来、約40年も鮮血に染まるホラーやサスペンスを撮り続けるという非常に高い作家性を持つ監督です。彼の映画はどのシーンを観ても不気味なカメラワーク、人工的で悪夢のようなライティング、常に漂う不穏な音楽、そして鮮やかな血しぶきに染まる美しい女性…。一度観たら脳裏に焼きつく濃厚な作品ばかりです。つじつまなんて少々合ってなくても構わない、映像美に重点を置いたビジュアルショックな監督です。

代表作は1977年に公開された『サスペリア』、日本でも「決して、ひとりでは見ないでください」というキャッチコピーと、映画を観ている時にショック死すると1000万円を払うという「ショック死保険」をつけて公開され、大ヒットを記録しました。他にも『サスペリアPART2』『インフェルノ』、『フェノミナ』など鮮血に染まるヒット作を次々と監督し、世界中に熱狂的なフォロワーを生み出しました。また彼は監督だけでなくプロデューサーとしても才能を発揮、アメリカの無名インディーズ監督だったジョージ・A・ロメロを見つけ出します。アルジェントのバックアップを得たロメロはホラーに新しい概念を生み出す傑作『ゾンビ』を作り世界的ブームを起こします。

アルジェントはまさに「マスター・オブ・ホラー」、筆者のようなホラー映画を観て育ち、そしてホラー映画を夢見て映画業界に飛び込んだ者にとって神様みたいな存在です。そんなアルジェントの最新作がなんと古典的なモンスター、ドラキュラなのです!

ホラー映画界のトップアイドル「ドラキュラ伯爵」

Photo:『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』
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2014年春、シネパレス他全国順次公開!

 知らない人はいない超有名モンスター、ドラキュラ。始まりはアイルランド人のブラム・ストーカーが書いた怪奇小説「ドラキュラ」に登場する男性吸血鬼。映画における彼の歴史はとっても古くホラー映画界の大先輩。

世界初の吸血鬼映画は1922年の『吸血鬼ノスフェラトゥ』。この映画、当初はブラム・ストーカー原作であるドラキュラの映画化だったのですが遺族の許可が降りずノスフェラトゥとして公開されました。そしてノスフェラトゥから9年後、正式な映画化権を獲得したユニバーサル社によって『魔人ドラキュラ』が作られました。現在のドラキュライメージを形成したと言えばこの作品でしょう。

『魔人ドラキュラ』のヒットによりその後もドラキュラを代表とした吸血鬼映画は数多く製作され、歴史上最も多く映画化された怪物が、実は吸血鬼なのです。まさにドラキュラは「キング・オブ・モンスター」、ホラー映画界のトップアイドルなのです。
 その「キング・オブ・モンスター」ドラキュラ対「マスター・オブ・ホラー」アルジェント!これは否応にも期待してしまいます。

例えるなら宮﨑駿がドラえもんを映画化するような事なのです!

アルジェントを支える往年の名スタッフ達、愛娘アーシア!

Photo:『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』
Ⓒ 2012 MULTIMEDIA FILM PRODUCTION s.r.l. – ENRIQUE CEREZO P.C. s. a. All Rights Reserved.
2014年春、シネパレス他全国順次公開!

 映画は監督だけでは成立しません。映画を製作するにあたり大勢のスタッフが集められます。ハリウッド映画などで何分も終わらない名前が続くエンドロール、あれだけの数が関わります。

邦画の場合ですと現場撮影スタッフだけでも70人から100人。スタッフ達は監督のイメージを実現するため撮影や照明など技術を分担し意見を交換、時には喧嘩もしながら撮影していきます。まぁスタッフみんな仲が良く現場の雰囲気も良くとも傑作ができるわけではありませんけど。

その数いるスタッフの中でも特に重要なのが撮影監督です。ヴィジュアル面において撮影監督が占める部分は大きいです。今回のドラキュラではルチアーノ・トヴォリという人が撮影監督をされています。トヴォリは『サスペリア』の撮影監督もしていました。サスペリアでは中国にしか残ってなかった古いフィルムを使い、悪夢のような色彩効果を作りあげました。余談ですが筆者はとあるフランス映画の京都ロケを手伝った時の撮影監督がトヴォリで、筆者所有の『サスペリア』DVDにサインを貰いました。その時にトヴォリは「サスペリアの事を言われたのは10年ぶり、(自身が教えている)生徒たちも誰も知らないんだ…」とこぼしていました。

トヴォリの他にも音楽を手がけるのはクラウディオ・シモネッティ。彼はもともとゴブリンというバンドに所属しており、このゴブリンはサスペリアの音楽はもちろん、傑作『ゾンビ』の音楽も手がけています。シモネッティはゴブリン脱退後も映画音楽に携わり、アルジェント作品の大半を手がけています。彼の作る不穏なサウンドがアルジェント作品の重要なパーツで、今回のドラキュラでも独特で気持ちの悪いサウンドが全編に渡って流れます。まさにアルジェント組集結ですね。

キャストでも愛娘アーシア・アルジェントがルーシー役で出演しています。アーシアは美しい全裸シーンまであり、監督はどんな顔で演出したのだろう?と気になる所です。

他の女優さんたちもさすがアルジェント、みんな美しい!透き通るほど白く美しい肌に飛ぶ真っ赤な血しぶき!監督が一番得意とする所ですね。

血しぶきの伝説が描く血を吸う伝説!

ホラー映画界の生きる伝説「アルジェント」が作るホラー映画最古のモンスター「ドラキュラ」。ストーリーはドラキュラのオーソドックスな部分がベースになっていて、ツッコミどころがたくさん有りますが、そこはアルジェント。ストーリー構成よりショック重視!彼の作品ではおなじみの虫もあっと驚く形で登場します!

細かい事は忘れて真っ赤な血しぶきと美しい女優が彩るアルジェントとドラキュラの伝説を楽しんでみませんか?

【作品情報】
■ http://www.historica-kyoto.com/films/world2/
【上映情報】
■ 11月30日(土)15:30~ 於)京都文化博物館
■ 12月8日(日)14:00~ 於)京都文化博物館
※両回とも上映後に、筆者によるトークがあります!

さて、第5回京都ヒストリカ国際映画祭カウントダウン特集は今回で最終回となります。今後も公式ホームページにて最新情報をチェックしてくださいね。お得な前売券はe+(イープラス)等にて販売中!スタッフ一同、第5回京都ヒストリカ国際映画祭でみなさまにお会いできることを楽しみにしております!

PROFILE

第5回京都ヒストリカ国際映画祭

[The 5th Kyoto HISTORICA International Film Festival]

世界でただひとつ「歴史」をテーマにした国際映画祭。第5回目となる今年度は、京都・太秦の撮影所で製作されたお正月映画をひと足先に楽しめる【ヒストリカ・スペシャル】、変化の中にある世界中の歴史映画最新作を集めた【ヒストリカ・ワールド】、アニメが拓く歴史映画の楽しさを紹介する【ヒストリカ・アニメ】、デジタル復元で甦った映画史を埋める幻の名作が並んだ【ヒストリカ・クラシックス】の全4部門18作品を上映。

期間:2013年11月30日(土)~12月8日(日)
上映会場:京都文化博物館、T・ジョイ京都、MOVIX京都
URL:http://www.historica-kyoto.com/