2013/11/01 17:39

第5回 京都ヒストリカ国際映画祭……”ヒストリカ”ってなに? 
カウントダウン特集 I

Photo: 京都の竹林 Ⓒ加藤 舞(かとう・まい)

2013年11月30日~12月8日に開催!
第5回京都ヒストリカ国際映画祭 カウントダウン特集 第1回

by 加藤 舞(かとう・まい)/京都ヒストリカ国際映画祭 作品担当

「京都ヒストリカ国際映画祭」とは?

 みなさんはこれまでに「ヒストリカ(HISTORICA)」という言葉を耳にしたことがありますか?ちなみに海外でこの言葉を口にすると、かなりの割合で「スペイン語?」と聞かれます。この「ヒストリカ」という言葉、実は造語で、京都で毎年秋冬に開催されている世界でただひとつ「歴史」をテーマにした国際映画祭の名称です。

なぜ「京都」なのか、なぜ「歴史」なのか…… 

キーワードは「時代劇」という映画ジャンルにあります。京都は日本映画発祥の地といわれており、また日本初の本格劇映画・時代劇といわれる『本能寺合戦』(1908年)が製作されたのも、ここ京都です。また、京都の太秦(うずまさ)はかつて多くの撮影所が存在し、日本のハリウッドと呼ばれていました。世界的に有名な黒澤明監督の『羅生門』(1950年)や溝口健二監督の『雨月物語』(1953年)といった名作も、この地で作られた作品です。

 太秦には今でも2つの撮影所が稼動し、映画やテレビドラマなどの製作が行なわれています。ここ数年、『水戸黄門』シリーズのような昔ながらの時代劇作品が減り続けているのに対し、『忍たま乱太郎』(2011年)や『るろうに剣心』(2012年)といったような、アクションやファンタジー色の強い、従来の時代劇ジャンルの枠を超えたエンターテイメント作品が徐々に増えてきています。また世界を見渡すと、日本の時代劇のように、世界各国にも類似する映画ジャンルがあります。たとえばアメリカならば西部劇、中国ならば武侠劇、欧米のコスチューム・プレイといったジャンルです。これらのジャンルでも、世界中の観客を魅了するような挑戦的な映画作りが近年行われています。まさに、世界の歴史映画の作り手はいま、それぞれに変革の時期を迎えているのです。

 京都ヒストリカ国際映画祭では、時代劇の製作の現場に携わる人材を含むスタッフが主体となって、このような世界中の優れた歴史映画をエンターテイメントとしての大きな枠組みから楽しんでいただきたいとの思いで開催し、今年度でついに第5回目という節目を迎えました。

地方映画祭の現在

 ところで映画祭というと、どこの国の、なんという映画祭を思い付くでしょうか?世界中に「映画祭」と名の付くイベントは無数あり、その代表格が以前にレポート等でお伝えしたカンヌ国際映画祭や香港国際映画祭、またベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭、日本でいえば東京国際映画祭などがあります。このような大きな映画祭に比べて、京都ヒストリカ国際映画祭は、いわゆる小規模の地方映画祭です。

映画祭を開催する目的は、国や自治体の映像産業振興、ある特定のテーマに関する興味・関心の喚起、地域の町おこしなどそれぞれ多種多様です。なお、地方映画祭の多くは専属のスタッフがいるわけではなく、自治体や関連企業の人材、ボランティアの力で成り立っており、それぞれの得意分野を活かして、他の仕事と兼務しながら映画祭を作り上げていくことが多いのではないかと思います。

もちろん、京都ヒストリカ国際映画祭も同じです。先述のとおり撮影所で働く製作者や、博物館の学芸員、自治体職員、制作会社のスタッフなどが集まってそれぞれ知恵と力を出し合い、企画・運営をしています。映画祭というと仰々しく聞こえますが、意外と「手づくり」の部分も多いのです。

上映作品をどう選ぶ?

 映画祭のコアともいえる上映作品の選び方は、それぞれの映画祭によってテーマや基準、優先順位が違います。京都ヒストリカ国際映画祭の上映作品の基準は「とにかく良質の歴史映画をお届けする!」ことです。

 そのために映画祭マーケットなどで情報収集を行い、まずはひたすら世界中の新作歴史映画をリストアップするという非常に地味な作業を行います(華やかさのカケラもありません…)。通常、大きな映画祭には「プログラミング・ディレクター」と呼ばれる上映作品の選定(プログラミング)のプロがいるのですが、京都ヒストリカ国際映画祭ではリストアップされた映画の数々を5人程度の選考委員で話し合って決めます。その基準が「とにかく良質の歴史映画をお届けする!」というわけです。

ちなみに、この地道なリストアップ作業などを担当しているのが筆者ですが、もともとはこの映画祭で海外ゲストのアテンドとして3~4日間だけボランティア参加をしたことがきっかけでした。それくらい映画祭というのは身近なもので、会場に行くと、なんとなくいつもと違う映画体験が待っている―そんな楽しさがあります。我々が「なんやかんや」と選りすぐった世界中の新作歴史映画のラインナップに、少し興味を持ってもらえたでしょうか。

 さて次回からは、「第5回京都ヒストリカ国際映画祭」のオススメポイントを紹介します。京都の秋といえば紅葉ですが、ついでに映画祭にもふらっと寄ってみませんか?詳細は公式ホームページにてご覧ください。そしてなんと、チケットは本日より順次発売開始です!

PROFILE

第5回京都ヒストリカ国際映画祭

[The 5th Kyoto HISTORICA International Film Festival]

世界でただひとつ「歴史」をテーマにした国際映画祭。第5回目となる今年度は、京都・太秦の撮影所で製作されたお正月映画をひと足先に楽しめる【ヒストリカ・スペシャル】、変化の中にある世界中の歴史映画最新作を集めた【ヒストリカ・ワールド】、アニメが拓く歴史映画の楽しさを紹介する【ヒストリカ・アニメ】、デジタル復元で甦った映画史を埋める幻の名作が並んだ【ヒストリカ・クラシックス】の全4部門18作品を上映。

期間:2013年11月30日(土)~12月8日(日)
上映会場:京都文化博物館、T・ジョイ京都、MOVIX京都
URL:http://www.historica-kyoto.com/