シアトル郊外的…最高の休日の過ごし方
“Sunset”誌で西海岸一に選ばれたサイクリングロードを自転車で行く
1年間の”201日間”が曇り空の街、シアトル
- Photo:”Sammamish River Trail”を示す看板 ⒸAmaryllis
ワシントン州の愛称はEvergreen State(常緑の州)だ。そう呼ばれるだけあって、年間を通じて緑が視界から消えることはなく、山、湖、海などの自然にも恵まれている。だが裏を返せば、これは雨量が多いということでもある。日本の雨期のように大雨が降る事は稀なのだが、年間のなんと「150日」が雨の日である。それだけではない。曇っている日は年間201日にものぼる!(Seattle Wiki参照) つまり、ほとんどの日は曇っているか、雨が降っていることとなり、そしてその大半が秋と冬に集中している。太陽光の乏しさから、Seasonal Affective Disorder(SAD=季節によって生じる鬱病)にかかる人もいるぐらいだから、これは深刻である。人工の光でもいいからと、強い蛍光灯の光を浴びる「ライトセラピー」を利用する人もいるが、これは効く人と効かない人がいるそうで、やはり自然の太陽に勝るものはないと言う事だろう。
というようなわけで、秋・冬の日照時間の少なさを乗り切ってきたシアトライト(Seattleite=シアトル地元人)にとって、夏の太陽には格別の意味がある。そうではなくても、シアトルの夏は最高だ。秋や冬とは打って変わって、その夏の過ごしやすさにより ”Los Angeles Times” (南カリフォルニア州地元紙)では「夏に過ごしたい街」のベストワンに選ばれているほどである。暑くなり過ぎない気温(7、8月の平均最低温度は13.3度、平均最高気温は24.4度)と夜間の涼しさ、そして、なにより日本と大きく違うのは湿度の低さである。これらの要素があいまって、シアトルでは大変心地良く爽やかな夏を過ごすことができるのだ。また、日照時間の長さも「夏に過ごしたい街」に寄与していると言えよう。一年で最も日照時間が長い夏至には、午前5時過ぎに太陽が昇り、午後9時過ぎに太陽が沈む。つまりは16時間も(晴れていれば)明るい野外を楽しめるということである。冬はその逆で、信じられない早さで日が沈むわけだが、それはおいておくとしても余りある魅力がシアトルにはある。
シアトルでも大人気の、夏を最大限に楽しめるアウトドア・スポーツの内の一つであるサイクリングに挑戦してみた。夏の間は、太陽の光を身体中に吸収できて、野外の自然も楽しめるアウトドアスポーツがシアトライトには大人気である。そして本エッセイで取りあげるのは、その中でも気軽に自然の中を散策できるサイクリングだ。バイクと聞くと日本ではオートバイを連想してしまいそうだけれども、こちらでは自転車はBikeと呼ばれている。本格的なオフロードのバイクを揃えている人もいるが、筆者が試したのはレンタルバイクである。好きな時間に行って好きな場所を走り、時間が来れば返却する。ガレージに自転車を保管するというスペースを取られることもないという、その気楽さが心地いい。今回はそのレンタルバイクに乗って、アメリカの生活スタイルを伝える雑誌 ”Sunset”で、西海岸一に選ばれたという、シアトル郊外の街 ”Woodinville” にあるサイクリングロード ”Sammarmish River Trail” を走ってみた。
自転車を所有していなくても安心。まずは自転車のレンタルからスタート。レンタル店へ車で直行すれば、自分の身体のサイズに合わせて自転車を選んでくれる。3時間のレンタルから選択できるが、近くを走り回るには3時間ぐらいで充分そうなので、これでGO。嬉しいのは、3時間のレンタル料金15ドルの中には自転車用ヘルメット、ロックも一緒に含まれていることである。ロックがあれば、自転車を止めて歩き回ったり、店で時間を過ごすことも可能だ。自転車は両ハンドルにそれぞれ数段階の切り替えギア付きで、オフロード専用のタイヤのもの。なかなか本格的だ。いざ出発!!
出発前に、レンタル店のお兄さんが「このトレイルの先には、ハンバーガーが美味しいビール醸造レストラン”Red Hook”(参照 1) があるよ!!ポークのハンバーガーが美味しいんだ!」と教えてくれた。目的地はこれで決まり。自転車で走ったカロリーが一気に元に戻りそうな話だが、ハンバーガーを目指して走るというのも初心者にはモチベーションが湧くルートではないだろうか。目的地も無事決定し、サイクリングロードへと向かう。
走り出しのギアは一番軽い状態に設定されているので、カラカラとほとんど抵抗の無いペダルを漕いでサイクリングロードのスタート地点へ向かう。スタート地点の公園は広々とした美しい芝生が広がり、色とりどりの花が植えられている。ベンチもあって休憩もできる「憩いの場」というような雰囲気のここからスタートをきる。