2013/08/26 12:00

春画:”江戸のクール”と”クールじゃない”今の日本

Photo: 香港サザビーズ会場入口 by the Courtesy of Sotheby’s, Hong Kong

春画:”江戸のクール”と”クールじゃない”今の日本

by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長

2013年5月19日付の東京新聞の朝刊に、この10月から来年1月にかけて、大英博物館(イギリス・ロンドン)で開催される春画展について、いかに大きな関心が寄せられているか、また、この展覧会を日本に巡回させるにあたって、引き受け先となる美術館がなかなか決まらないのはなぜか……といった内容の、今までになく詳細な記事が掲載されて大きな関心を集めた。

この大英博物館で開催される展覧会に、自身のコレクションからも春画を貸し出される浦上蒼穹堂主人の浦上満氏は、世界的に知られる東洋美術の美術商・コレクターであり、今年がちょうど日英交流400周年を記念する年にあたることから、大英博物館での展覧会企画には全面的に協力してこられた経緯がある。また、大英博物館での展覧会が大規模なもので、学術的にも充実した研究論文に基づくカタログが展覧会に合わせて出版されることからも、この展覧会を丸ごと日本に巡回させ、本来、春画を生んだ日本において美術館で展示し、正当な評価を得られるようと尽力されてきた。

そんな最中、10月の大英博物館での展覧会の前評判が高いこともあって、オークション・ハウス、サザビーズ・香港のギャラリーが浦上氏の春画コレクションを展示する特別企画を7月に行うこととなり、弊誌編集長・岩渕潤子が7月18日のオープニング・レセプションで浦上氏と現地で合流することとして、その直前、なかなか日本での展覧会受け入れ先が決まらないもどかしさについて、浦上氏にお話をうかがった。

浦上蒼穹堂主人・浦上満氏との春画をめぐる対話

岩渕:なぜ、日本の美術館は春画展の受け入れを躊躇するのでしょうか?

浦上:江戸時代の日本人というのは、女性も含めて、もともとおおらかだったわけですが、明治になって西洋人のキリスト教的な倫理観が持ち込まれ、お風呂の男女混浴は恥ずかしいとか、今まで日本の文化の一部であった価値観が「後進的である」とされ、そうした中に春画も含まれてしまったわけです。今では逆に、欧米では春画の美術的価値というものが認められて、普通に「アート」として鑑賞の対象になるわけですが、日本のほうが明治以来の固定観念に縛られてしまい、春画は「日本文化の恥部」であると思い込んでいる人が少なからず存在して、美術館側は「こういうものを公共の場所で見せて、もし、苦情を言う人が出たらどうしよう」ということで、とりあえず問題が起きるかもしれないことはやめておこうといった考え方に、どうしてもなってしまうのでしょうね。

キュレーターの皆さん、研究者の皆さんは「素晴らしい! ぜひ、やるべきだ」と仰るのですが、最終的な判断をするところで、スポンサー候補であるメディアを含めて今ひとつ煮え切らないのです。「応援します」と皆さん口を揃えるものの、「ぜひ、うちでやりましょう」という話にはなりません。

すでに話題にもなっていて、大英博物館で学術的にもきちんと検証された展覧会として開催した後日本に持ってくるので、実際に展覧会をすれば多くのお客さんが詰めかけることは目に見えています。開催できれば、皆さん「この展覧会ができて本当に良かった」という話になると思うのですが、それがなかなか簡単にいかないのが、いかにも日本といった印象です。