2013/07/26 12:00

第9回 J Prep 斉藤塾代表・斉藤淳さんに聞く
―「自由に生きるための学問」としてのリベラル・アーツ、
「学問の手段」としての英語―

フランクリン・マーシャル大在職時の斉藤さん 写真提供:斉藤淳

by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長

第9回 あまたの英語塾、英語教室がある中で

岩渕: 多くの英語塾がすでにある中で、新たに英語塾を開くというのは「マーケットが飽和状態ではないか」と指摘されるのではないかと思うのですが、その点、いかがでしょう?

斉藤: 「新たに参入して何ができるの?」と、よく言われますね。具体的に何ができるかの設計図を描くことができたからこそ、参入したわけです。実際、できていることはたくさんあります。
 でも、まだ自分の構想の2割も実現できていないですね。基本的なバックボーンの設計図らしきものは示すことができたのではないかと思っていますが……。スタッフにも、言葉で説明するというのはなかなか難しいわけで、実際に自分が授業をして示すしかない。それを理解できた人に会社に残ってもらって、一緒に仕事をしてくことになると思っています。

岩渕: 斉藤さんが考える英語教育の理念部分というのは、今のウェブサイトにおおよそ書かれていると思うのですが、説明会などに参加される方たちの望まれていることと、斉藤さんの理想というのは合致していると思いますか? 人によっては、全然違うことを期待している人もいるのでしょうか?

斉藤: 基本的に我々のことを分かって問い合わせしてこられる生徒・保護者が多いですね。保護者もご自身が英語がある程度できて、既存の英語塾に見学に行ったら講師の英語の発音にがっかりしたなどというお話しをよく耳にします。一方、開塾からそれほど時間も経たず、実績があるわけではないですが、授業を見て頂いて、子どもをここに通わせたら英語ができるようになるだろうという確信して頂いたからこそ、短期間に生徒数が増えたのだと思います。文法や訳読法だけでは使いこなすレベルまで到達できないし、かといって市中に数多く存在しているようなネイティブと会話の練習をするだけの英語塾でも会話表現を覚えてお終いです。ただ単に雑談するための英会話ではなくて、知的な能力を高めながら運用能力を高めていく。そういうことに関心のある生徒や保護者が、弊塾にコンタクトをとるということが多いと思っています。

岩渕: 実際に、高校から直接海外に留学しようと思う生徒や保護者からのお問い合わせもあるのでしょうか?

斉藤: まだ少数ですけれどいらっしゃいます。今通っている中学生は、保護者もご本人も、将来的な選択肢のひとつとして留学を考えている方が結構多いですね。日本の大学入試が短距離走だとすると、アメリカの大学入試はトライアスロンだから、勉強方法に関して発想を変えなさいと常々言っています。
 基本的には、早いうちから学校での好成績を維持しなければならないので、早くから準備にとりかかることが必要です。あと、本人の努力だけではどうにもならないことがいろいろあるので、保護者さんとも話し合いながら、チームワークでやっていかなければならないということがありますね。

岩渕: 先ほどもお話に出たように、アメリカの大学は本人の学業成績だけではどうにもできない部分が色々ありますよね。

斉藤: 大学に合格するためにボランティア活動しようとか、そういう不純な動機で何かしてもものにはならないですよ。やはり、それぞれの子供が本当に好きなことを突き詰めてやるということが一番大切だと思うのですよね。そのお手伝いを将来的にはしていきたいなと思っています。
 具体的に何ができるかというとボランティア活動や芸術のレッスンだとかだけでなく、例えば中学生や高校生が学術研究の最先端に触れる機会を持つための、アカデミックインターンのような仕組みを作って、大学と中高生の間で橋渡しするようなことを将来的にはできたらなと思っています。

PROFILE

斉藤淳(さいとう・じゅん)氏プロフィール
J Prep 斉藤塾代表 株式会社 J Institute 取締役

山形県酒田市の農家で、将来は田んぼを嗣ぐことを期待されて育つ。四季折々に表情を変える 鳥海山の麓で、農業の将来に思いをめぐらしながらも、夜になると短波放送で世界各国のニュースを聞く日々を過ごした。インターネットもない冷戦時代に、各国の主張をそのまま聞き比べていたことで、批判的に物事を考えるための基盤が培われただけでなく、大学で語学や社会科学を幅広く学ぶきっかけになった。

斉藤氏は、イェール大学大学院在学中に衆議院補欠選挙に出馬。2002年10月から1年間、衆議院議員を務める(山形4区)。イェール大学で博士号 取得後、ウェズリアン大学、フランクリン・マーシャル大、イェール大で政治学の教鞭を執る。

主著『自民党長期政権の政治経済学』で日経経済図書文 化賞を受賞した他、TBSラジオで選挙解説なども務める。研究者としての専門は比較政治経済学。