2013/07/24 12:00

第8回 J Prep 斉藤塾代表・斉藤淳さんに聞く
―「自由に生きるための学問」としてのリベラル・アーツ、
「学問の手段」としての英語―

Photo:弊社会議室でインタビューに答える斉藤淳さん ⒸAgrospacia

by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長

第8回 日本の英語教育に一石を投じたい…

岩渕: 今回、斉藤さんが英語教育事業に進出しようと思われたのは、東大に合格するための英語を教えることが目的ではないですよね?

斉藤: 東大に合格する英語力をつけるのは、そんなに難しいことではないです。2年もやれば、英語力ゼロの子が東大に受かる英語力をつけさせる自信が僕にはあります。そんなに話せなくても入学できますから。必要な単語数というのは6000語〜7000語程度で、基礎学力があって日本語の文章を書ける中学生なら、2年勉強すれば受かるはずです。
 でも、一般的に日本では、東大の受験を天井にして、6年間かけてそれを指導しているわけですよ。東大を受験する子達が通う学習塾のカリキュラムを見ていると、東大の過去問30年分を解かせるとか、そういう極めてガラパゴスな世界なわけですよ。そんなことをしたって役に立つ英語力は身につきません。
 実際東大出身の先生、あるいは官僚の皆さんが海外で日本の政策について上手に説明できているかというと、上手な人も少数いますが、大部分は問題外の英語力なわけですよ……残念ながら。あの入試問題を経て大学に入って普通にやってきた人の英語力というのは、だいたいどの程度かというのは分かっていたので、変えなければならないと思っていました。実際変えていく自信もありました。

岩渕: 日本の英語教育のあり方に相当な危機感があった?

斉藤: 韓国の高麗大学のサマー・セッションで教えた経験があるのですけど、韓国人の英語力はここ10年ぐらいで急速に向上した印象があります。ですが、日本からの留学生や日本人の英語力、大学生の英語力はまったく上昇しているように見えなかった。むしろ低下しているのではないかと思えました。なので、自分が、ある意味トリックスター的に英語塾業界に参入することで、こうした状況を変えていける余地があるのではと思いました。
 政界にいた時に感じた、族議員として長く時間をかけて政策を変えていくということを考えた時に感じた絶望感に比べると、まだマーケットを通じて何か変革をしていく余地はあるのではないかなと思ったわけですね。
 日本の大学で教えるという選択肢もあったのですが、残りの人生をコミットするとすれば、英語教育だと思って選択したのが今回の仕事だったのです。

岩渕: 「東大を目指す英語」ではなくて、世界中の人ときちんとディペート出来るような英語力というのがあって、そのプロセスとして、高校からアイヴィーリーグ・スクールに進学することも選択肢としてあるということですね?

斉藤: 基礎的な英語力としては、3年間でTOEFLのIBTで80点は確実にとれる英語力を身につける。当然そのくらいの英語力があれば、東大の入試問題を解いても余裕で高得点をあげることができます。英検なら準一級ぐらいをパスするところまで2年半で持っていきます。
 それで次の2年間で、アメリカの大学教養課程の教科書を読んで議論するところまでいくわけです。そうすれば、確実に受かるとは言えませんけれども、アイヴィー・リーグを受験する出発点にはなるかなと。
 あと、日本の大学生って読書力が極端に少ないんですね、日本語を含めてですけれども。
そこでまず、古典といわれるものを読ませます。
 日本では、高校生の頃に英語の授業で読まされる教材ってどこが出典からわからないような、素性の怪しい英文を2パラグラフ、3パラグラフずつぐらい読ませて、長文とは呼べないような長文を長文読解と称して解説するような参考書が溢れているわけです。そんなものを読んでも英語力がつくわけはないので、むしろきちんと本や論文を読んで、引用や作文、レポート、リサーチペーパーを書きながら英語力を高めるという方法で教えたほうがいいと考えてやっています。

PROFILE

斉藤淳(さいとう・じゅん)氏プロフィール
J Prep 斉藤塾代表 株式会社 J Institute 取締役

山形県酒田市の農家で、将来は田んぼを嗣ぐことを期待されて育つ。四季折々に表情を変える 鳥海山の麓で、農業の将来に思いをめぐらしながらも、夜になると短波放送で世界各国のニュースを聞く日々を過ごした。インターネットもない冷戦時代に、各国の主張をそのまま聞き比べていたことで、批判的に物事を考えるための基盤が培われただけでなく、大学で語学や社会科学を幅広く学ぶきっかけになった。

斉藤氏は、イェール大学大学院在学中に衆議院補欠選挙に出馬。2002年10月から1年間、衆議院議員を務める(山形4区)。イェール大学で博士号 取得後、ウェズリアン大学、フランクリン・マーシャル大、イェール大で政治学の教鞭を執る。

主著『自民党長期政権の政治経済学』で日経経済図書文 化賞を受賞した他、TBSラジオで選挙解説なども務める。研究者としての専門は比較政治経済学。