2013/07/03 12:00

第5回 牧野二郎弁護士と上條由紀子弁理士による法律と知財に関する対話 ~アグロスパシア・キックオフ・セミナー~

アドバイスする側にも求められる柔軟さ

上條:成功するまでの「えい、やぁ」は度量のうちで、成功した暁にはしっかり矜持を正すという今のお話、「牧野先生の仰るとおり!」と言うにはちょっと勇気が必要ですね。今のお話から、特許に関連して、ちょっと裏話的な感じのエピソードを一つ。

 特許庁に長年勤めた方が特許庁を辞められて、弁理士さんになるケースは結構多いのです。弁理士さんには、弁理士試験に受かった後、そのまま弁理士になるタイプと、特許庁の審査会で働く弁理士になる方がおられます。で、以前、審査会で働いていた弁理士さんが今度弁理士になったという場合なのですが、お客さんから「こういう技術を発明して出願したいんです」とか、「こういう商標を考えたので、どうしても権利化したいんです」ってご相談に来られた時に、困った対応をしてしまうケースがある。

 弁理士はそのお客様の代理人ですから、どうにかしてお客様が特許を取れるようにお手伝いするのが仕事なのに、時々、特許庁でずっと拒絶理由を出していた元・審査担当の方が、今度、自分は弁理士という立場になっているにもかかわらず、自分で拒絶理由を出しちゃうみたいなことが起きてしまう。相談にいらしたお客様に「あ、これ特許取れません、以上」みたいなことを言ってしまうわけです。拒絶理由を自分で出してしまうのは、やはり、まずいのではないかと思います。

 そもそもビジネスをサポートするサービス業として、この対応は良くないですよね。完璧主義でいったら特許にならない物でも、それをどう、クレームを書き直したり、「お客様、もう一つアイディア出せませんかね」、「もう一歩深い発明を育てられませんかね」と、お客様から発言を引き出し、どうしたら特許になるかをアドバイスするのが弁理士の仕事なのです。自分で拒絶を出してしまう人がいるのは、弁理士としては困ったことだと思います。

 というわけで、弁護士さんや弁理士さんにも、いろんな方がいらっしゃるので、やっぱり、いい弁護士さん、いい弁理士さんと出会うとのはご縁であって、自分のビジネスを成功させる上ですごく大事なことだと思います。

 別に私じゃなくてもいいんです。私よりもすごい弁理士さん、いっぱいおられますので、そういう方を私がご紹介したいと思いますし、私がご相談いただいた案件に関して、私より適切な専門家がいたら、喜んでその弁理士さんをご紹介したいと思います。

 そういった弁護士さんや弁理士さんと出会われて、自分が目ざす、何を成功としてゴール設定をするかが大事だと牧野先生がおっしゃっていましたけれども、自分にとってこれがビジネスのゴールだというところをプロフェッショナルの専門家に示した時に、そこに行くにはこうされると良いですよという適切なアドバイスをしてくれる、最良の人を見つけることが肝心です。

 そういう人とは一生付き合えるというか、一生味方になってもらえるような付き合いができると思いますので、そういう方と出会うことが大事だと思います。

PROFILE

牧野 二郎 弁護士
中央大学法学部卒業、1983年に弁護士登録。
1996年よりインターネット上で法律相談開始。同年インターネット弁護士協議会設立し同代表に就任。2005年より中央大学法科大学院講師。2006年より内閣官房情報セキュリティセンター企業・個人評価指標専門委員会委員。2008年より情報保全教育に関する調査委員会委員(内閣官房)。現在 財団法人インターネット協会評議委員、電子署名電子認証シンポジウムタスクフォース代表、電子署名・認証利用パートナーシップ運営委員、龍谷大学客員教授、日本内部統制研究学会幹事、東京大学大学院情報学環・非常勤講師、電子記録マネージメントコンソーシアム(ERMC)会長。

上條 由紀子 弁理士
慶應義塾大学大学院理工学研究科博士前期課程修了、慶應義塾中等部理科講師を経て、2000年弁理士登録。
同年、太陽国際特許事務所入所。東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構専任講師を歴任後、2009年4月より金沢工業大学大学院准教授に着任。現在、東京農工大学大学院非常勤講師、日本弁理士会知財経営コンサルティング委員会委員、内閣官房知的財産戦略本部知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会委員、総務省情報通信審議会専門委員。知的財産マネジメント研究会(SMIPS)知財キャリア分科会オーガナイザー。