第4回 牧野二郎弁護士と上條由紀子弁理士による法律と知財に関する対話 ~アグロスパシア・キックオフ・セミナー~
2013年2月22日、アグロスパシア株式会社はIT関連の知識が豊富な法人法務の第一人者、牧野二郎弁護士(牧野総合法律事務所 弁護士法人)をお招きし、コメンテーターには金沢工業大学大学院知的創造システム専攻准教授/太陽国際特許事務所の上條由紀子弁理士をお迎えして、キックオフ・セミナー、「法律と知財: 起業する前にこれだけは知っておきたい!」を開催しました。
本記事はセミナー内容を書き起こし、編集を加えたものです。
特許を取れば安心・・・ということは決して無い
上條: ここで、ショッキングな話を一つ……。日本の特許庁では、出願をして1年半経ちますと特許の出願のデータを全て公開することになっています。アメリカでは、軍事特許などの場合、国が公開しないという判断ができるわけですが、日本では出願したものはすべて公開されてしまいます。ですから、ノウハウを人に知られたくなければ、特許を取らないという選択肢も考えられ得る。
たとえば、皆さんご存知のコカ・コーラのレシピは特許ではなく、秘伝として、社内でずっとひた隠しにされていて、しかも、一人で全部を知っている人はいない。会社の中に7人の賢者がいて、それぞれが一部分ずつのみを伝えられている。一人、一人はパーツだけの知識を持っていて、7人が集まらないとコカ・コーラは作れないというノウハウ管理がされているわけです。これが、もし、特許だったとすると、一定期間を過ぎたら公開されてしまうのです。
何が申し上げたかったかと言うと、日本の特許庁の公開データベースは無料でですね、日本の最先端の技術の特許情報に誰でもアクセスできるのです。で、誰がアクセスしてきているかと、アクセス元のドメインを調べるとjpではないのですよ。チャイナとか、韓国からのアクセスが一番多いと言われています。それではあまりにも勿体ないので、日本にいる皆さんにこそ、特許情報を是非、活用していただきたいと思います。
ある会社がこれからどんな技術を使った製品を作ろうとしていて、どんなアプリケーションを作ろうとしているのか。新製品が世に出る際には、複数の企業が組んで、特許の共同出願をしますから、どこの会社とどこの会社が組んでいるとか、そういった未来情報も全部、特許に関連した情報から見えてくるのです。なので、特許情報を解析すると、その会社がこれから何をしようとしてるか、全部ではないですが、かなりの方向性があぶり出されます。おそらく、韓国と中国の企業はライバル関係にある日本メーカーの特許データを申請して、それぞれの方向性を一生懸命調べていらっしゃると思ったほうが良いでしょう。
牧野: それで、日本のある家電メーカーさんは液晶の技術を取られるのが嫌だからと、技術情報を全部クローズにしました。それは、凄い正解なんですが、もっと安く作るメーカーがどんどん出て来てしまったので、時代に遅れてしまうという現実がまた出て来るわけですよね。
ですから、良い技術をどうするかのコントロールと、他の人たちが持っている技術をしっかり見定めていくのは、絶対にしていかないといけないことだと思います。その意味では、私達がアクセスできるデータは、実は、もの凄い量があるので、それを是非、皆さんに活用していただいて、徹底的に合理的な起業をしていただきたいなと。そうしたら、リスクも少し小さくできるのかなと思います。