2013/06/17 12:00

第1回 弁護士 牧野二郎による「起業の時に知っておきたい本当の話」ー アグロスパシア・キックオフ・セミナー

Photo:弁護士 牧野二郎氏セミナー風景 Ⓒ Agrospacia

by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長

 2013年2月22日、アグロスパシア株式会社はIT関連の知識が豊富な法人法務の第一人者、牧野二郎弁護士(牧野総合法律事務所 弁護士法人)をお招きし、コメンテーターには金沢工業大学大学院知的創造システム専攻准教授/太陽国際特許事務所の上條由紀子弁理士をお迎えして、キックオフ・セミナー、「法律と知財: 起業する前にこれだけは知っておきたい!」を開催しました。

 本記事はセミナー内容を書き起こし、編集を加えたものです。

■弁護士とはどうつきあうべきか?

 弁護士と話をするとき気になるのは料金ですよね。基本的な料金体系のうちのひとつとして、時間フィーがあげられます。大きな企業、上場企業などだと、大体1時間で3万から、最高でも15万くらいでしょう。1時間15万円って考えられますか?

 考えられないですよね。だけど、それだけの価値を売り出せるというところが、弁護士のノウハウ、経験値であり、それが評価されるということなのです。起業を考えていて本当に弁護士に聞きたい、でもそんな大金は出せるはずもない。

 そういうときは、まず、リーガルコストをどれくらい用意できるか考え、率直に弁護士に、支払える金額を示して、考えて欲しい内容を伝えます。すると、特に若い弁護士の先生方は大変好奇心が強くて、破格、もしくは持ち出しに近いような金額でもアドバイスすることが多いのです。特に、経済産業省などに集まっている弁護士がかなりの数います。中には国の政策や電子商取引の準則を作ったりしている弁護士もいます。

 とても多くの知識を持っている人たちが、実は皆さんの周りにいる。そういう人たちにうまくアクセスし、笑われるかなぁなどと恐れることなく、どんどん質問をして、ノウハウを貰ったほうがいいと思います。弁護士サイドも、投資的な考え方と言えばいいのでしょうか、要するに最初は何もとらない、だんだん方向性が見えてくると自ら株主や投資者になるという事も増えてきているように思います。

 私は30年ほど弁護士をしております。第二次サラ金ブームという時に弁護士になり、破産事件などを多く手掛けました。
 インターネットが普及してきた頃には、全国で二番目にネット上での法律無料相談を始めました。その後、個人法務、企業法務を重ねて、現在丸の内で企業法務専門でさせていただいております。例外的には個人法務も受け付けています。長い期間、多くの失敗を見てきました。成功するのは、実に難しいのです。

PROFILE

弁護士 牧野二郎氏からのメッセージ

弁護士になって民事刑事、破産などを手がけてきましたが、95年にインターネットと出会い、その可能性に魅せられ、大きく人生が変わりました。

小さな世界に生息する生活から抜け出し、広く求める人と共に歩くことのできる世界の構築を目指して、第一歩を踏み出しました。 それ以来、紆余曲折を経験しながらも、変化するものと普遍的なものを見つめてきました。いつも心がけているのは、分からないことを分からないままにしないこと、分からないこと、難しいことには嘘や隠された情報があるので分るまで行動しないこと、分らないことについては、はっきりと「分からない」ということです。

私自身分かるまで動きませんから、アドバイスするときも難しい言葉を使いません。日本語で、分りやすくご説明するように努めています。 情報化社会の中で、法律の役割や効果も大きく変化してきています。法律の世界にも混乱や停滞、矛盾や限界が見えたりもします。裁判制度も変わりつつあります。弁護士の役割も大きく変化してゆくでしょう。そうした変化をしっかりと理解しながら、確かなものを踏まえた対応をしてまいりたいと思います。

略歴

中央大学法学部卒業、1983年に弁護士登録
1996年よりインターネット上で法律相談開始
同年インターネット弁護士協議会設立し同代表に就任
2005年より中央大学法科大学院講師
2006年より内閣官房情報セキュリティセンター企業・個人評価指標専門委員会委員
2008年より情報保全教育に関する調査委員会委員(内閣官房)
 
現在 財団法人インターネット協会評議委員、電子署名電子認証シンポジウムタスクフォース代表、電子署名・認証利用パートナーシップ運営委員、龍谷大学客員教授、日本内部統制研究学会幹事、東京大学大学院情報学環・非常勤講師、電子記録マネージメントコンソーシアム(ERMC)会長

専門:著作権問題、電子商取引、個人情報保護、インターネットトラブル全般、離婚、建築問題

著書:「Google問題の核心」(岩波書店)「やりすぎが会社を滅ぼす!間違いだらけの個人情報保護」(インプレス)など多数