2013/06/05 12:00

第12回 NYでちょっと知られたステキな日本食レストランHIBINO

Photo:金箔をあしらったアボカド入りの鮪のすき身 ⒸHIBINO Brooklyn

NYでちょっと知られたステキな日本食レストランHIBINO
 オーナー、福田しゅうこさんに聞く「NYでレストラン経営をすること」

by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長

開業への道のり:12
日本食材の調達と福島の影響など

Q:日本食に使う食材を入手するのは難しくないのでしょうか?

A:基本的には、こちらにも日本食材を扱う日系のフードベンダーさんがいます。日本で売られているものと全く同じものでないにしても、普通に色々と手に入る。たとえば、お酢なら、ミツカン酢が、普通のスーパーで売っているところもあるし、少なくても日系スーパーだとか、中国系のスーパーに行けば売っています。
 クオリティ的に日本からは劣るかも知れませんが、基本的に日本で手に入る物が、100%ではないにせよ、LAとかサンフランシスコ、ニューヨークなどの大都市に関して言えば、だいたいのものは手に入ると思って間違いありません。

Q:食材の調達に関して、アメリカならではの苦労はありますか?

A:たまに、FDA(Food and Drug Administration)が何か言い出して、今まで入ってきたものが突然輸入できなくなることがあります。食べたら危険というより、恐らくは政治的な要因が大きいような気がします。
 BSE騒動のせいで、肉エキスが入ったものがすべてダメになってしまいましたね。牛肉でも鶏肉でも、肉エキスが入ったものは一切輸入ができなくなって、買えなくなったものは多くあります。アメリカ国内に日本の会社の工場があるものはそれで対応していますが、そうでないものはアメリカでは買えないのです。

Q:福島の放射能による食材の輸入規制などの影響は大きかったのでしょうか?

A:地震の後、放射能が問題になって半年間くらいは影響がありました。福島に近い県、何県かのリストがあって、そこが生産地になっているものは輸入できませんということがありました。でも、半年か1年したらそういうのもうやむやになりましたね。
 不思議なのは、放射能が検出された食物は規制して当然なのに、政治的な理由でダメなものは未だに規制されたままで、放射能の話はうやむやになって、いつの間にか輸入が再開されている。不思議ですね。
 福島の原発の問題が頻繁に報道されていた時は、お客さんに「この魚はどこ産?」と聞かれたことはありました。でも、うちの店は薄利多売なので、もともと基本的に魚などは出来るだけローカルのものを使っているのです。日本からというのは、ハマチのような日本から引いてこないとどうしようもないものだけ。お客さんにはそういった事を説明して安心してもらっていたのですけど、そういう質問も夏過ぎからは全然来なくなりました。震災の原発事故のあと「売り上げが落ちるかな」と心配したのですけど、そんなこともないままでした。でも、西海岸の方ではビジネスに影響があって、売り上げに響いたという話も聞いています。

PROFILE

福田 しゅうこ
日本での薬剤師からNYにてグラフィックデザイナーに転身。NYにて夫であるフクダと出会い結婚、二児を授かる。子供の誕生を機に起業を考え始める。フクダがNYでシェフをしていたことから、起業すなわちレストラン開業へ、と思考。3年間の準備期間を経て2007年、3月、ブルックリンに「私たち日本人が日常的に食べている食事を提供する店」をコンセプトに「ひびの食堂」を開店。現在「自分の時間を楽しむ。手酌の店」を出店準備中。

福田 勝
映像業界からNYにてシェフに転身。 子供の誕生を機にレストラン開業を目指しアメリカ人オーナーの下で、アメリカ式レストラン・ビジネスについて学ぶ。定番メニューを主軸にした和食の店の開業準備に取りかかり、自身が京都府出身であることから惣菜の京都弁である「おばんざい」を日替わりで提供し、新しい形の豆腐である「瓶詰め豆腐」を提供する店「ひびの食堂」を6年前にブルックリンに開店。妻と二店舗目の出店計画中。