2013/05/27 12:00

第8回 NYでちょっと知られたステキな日本食レストランHIBINO

Photo:オクラの緑がうつくしい煮物 ⒸHIBINO Brooklyn

NYでちょっと知られたステキな日本食レストランHIBINO
 オーナー、福田しゅうこさんに聞く「NYでレストラン経営をすること」

by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長

開業への道のり:8
具体的な開店の準備-2

Q:現在、お店をやっておられる物件とは、ご縁があったということでしょうか?

A:そうですね、他の人に行きかけたのですけど、決まらずにまた戻ってきて。家賃も、たまたまそこのロケーションでは、私達の前にビジネスが3つ続けて潰れていたのですよ。それで大家さんが弱気になっていたところだったので、家賃も相場より若干安かったのではないでしょうか。すごくラッキーでした。
 開店当時、本当にあのあたりには何もありませんでした。でも、うちの店を開けた頃から同じ通りの2ブロック先にもう一つレストランがオープンして、2、3年前には隣の隣にバーができ、今は角にも新しくお店が工事中です。うちの店と駅の間にはトレーダー・ジョーズ(オーガニック・フードの大手スーパー)もできたし、小さいですがバーニーズ(百貨店)の支店もできて、小売りビジネスの様相は一変しましたね。
 でも、最初はそんなことになるとは知らなかったわけで、本当にラッキーでした。たまたまそこを選んで、たまたま行ったら、偶然、どんどん良くなってきて……ますます良くなった。すごいラッキーでした。逆に、今、店を出そうとしたら家賃が高いのと、周りにレストランも増え、お客さんが増えたぶん競争も厳しくなっていますし、私達が開店したタイミングは良かったと思います。
 そして、私たちはアメリカでは外国人なわけです。アメリカ人、特にNYの人はそもそもそういう事をそんなに気にはしないですけど、外国人でかつ何の実績もない私たちにすんなり店舗用の不動産を貸してくれたのが、日本人の感覚からすると、ちょっと不思議な気がしました。

Q:レストランをオープンする際に必要な許認可関係について教えて頂けますか?

A:まず、レストランをオープンするというリース契約を大家さんと組んで、一番初めにやらなければいけないのは内装工事になります。そのために、ビルディング・デパートメント(建築許可局)に工事をすると申請して許可を取らなければならない。これが結構、時間がかかるのです。特にうちのあたりはランドマーク・ディストリクトという、街の外観を保存しないとならない歴史風致地区なので、普通の工事許可以外に、ランドマーク・ディストリクトを管理する部署からも許可を取らないといけなかったのです。
 内装工事のプランを提出して、「こんな風にやろうと思っています」と。だから、実際、内装工事にかかるまでの期間が長くかかってしまいました。記録を見ないとはっきりしませんが、たしか契約した年の11月の末にリース契約を結んで、お店を開けたのが3月末。許可を取るのに時間がかかって、リース契約の後、2ヶ月は工事に入れなかったと思います。工事自体は2ヶ月前後で終わったと思うのですが。でも、ランドマーク地域でなければ、通常は一月くらいで着工できるのではないかと思います。最近、ブルームバーグさんが市長になって以後は、許認可関係の手続きも効率化されたので、今はもっと早くなっていると思います。でも、それまではビルディング・デパートメントって、すごい時間のかかる、お役所的な部署でした。

PROFILE

福田 しゅうこ
日本での薬剤師からNYにてグラフィックデザイナーに転身。NYにて夫であるフクダと出会い結婚、二児を授かる。子供の誕生を機に起業を考え始める。フクダがNYでシェフをしていたことから、起業すなわちレストラン開業へ、と思考。3年間の準備期間を経て2007年、3月、ブルックリンに「私たち日本人が日常的に食べている食事を提供する店」をコンセプトに「ひびの食堂」を開店。現在「自分の時間を楽しむ。手酌の店」を出店準備中。

福田 勝
映像業界からNYにてシェフに転身。 子供の誕生を機にレストラン開業を目指しアメリカ人オーナーの下で、アメリカ式レストラン・ビジネスについて学ぶ。定番メニューを主軸にした和食の店の開業準備に取りかかり、自身が京都府出身であることから惣菜の京都弁である「おばんざい」を日替わりで提供し、新しい形の豆腐である「瓶詰め豆腐」を提供する店「ひびの食堂」を6年前にブルックリンに開店。妻と二店舗目の出店計画中。