2013/05/10 12:00

NYでちょっと知られたステキな日本食レストランHIBINO

Photo:日本食レストランHIBINO Ⓒ HIBINO Brooklyn

NYでちょっと知られたステキな日本食レストランHIBINO
— オーナー、福田しゅうこさんに聞く「NYでレストラン経営をすること」 —

by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長

 NYのブルックリン、ヘンリー・ストリートに、京都スタイルのおばんざいを出す、HIBINOというおしゃれなレストランがある。毎日でも気軽に来て欲しい、「日々の」日本食という意味で、HIBINOという店名を選んだそうだ。

 日本人が海外で日本料理店を出して「伝統の味」にこだわるあまり、地元民に受け入れられずに失敗し、むしろ中国系や韓国系、場合によってはメキシコ系の日本料理店のほうが繁盛しているケースを数多く目にしてきた。しかしながら、 ウェブサイト上のメニューや料理の写真を見ただけでも、福田さん夫婦が経営するHIBINOには、「何か違うぞ」と期待させてくれる何かがある。
 料理という文化を通じた日本的な「今」の価値観が、人種のるつぼであり、大都会であるニューヨークらしさとセンス良く混ざり合った感じ……とでもいうのだろうか。
 食を通じて日本の文化を提供している誇りは感じるのだが、それを実際に食べてくれる地元のお客さんへの暖かい眼差しのようなものが「新しい!」と思う。オーナーの福田さん夫婦がもともとは飲食店経営が専門ではなかったということも、あるいは成功の秘訣かも知れない。

 今回のインタビューでは、日本人経営による、今までとはちょっと違う日本食レストランを取り上げ、NYで日本食レストランを経営することの意義について考えてみる。

開業への道のり:1
留学先はなぜNYだったのか?

Q:そもそもレストランを開業されるためにアメリカへいらしたのではなかったわけですよね?
留学目的で渡米されたのでしょうか? 現在、一緒にHIBINOを経営されているご主人とはどういう出会いを
されたのでしょう?

A: 私も旦那も、もともと飲食畑ではありませんでした。私は日本にいた時は薬学部を卒業し、薬剤師をしていたのです。でも、好きになれないというか、嫌いではありませんでしたが、親の希望で選んだ職業と言うこともあり、楽しくはありませんでした。それで、薬剤師をしながらお金を貯めて、「どっかに行っちゃえ」と思ったわけです。
 さて留学となったわけですが、親とケンカしていたので、自分で学費を出せるところ……と探していて、CUNYという、NYのシティ・ユニバーシティを偶然見つけ、学費が安かったので「ここにするか」と選びました。

Q:留学先を決める際、西海岸と東海岸のどちらにしようかと迷わずに、最初からNYと決めていらしたんですか?

A: 東海岸か西海岸かは迷いました。実は私、中二くらいのときに大きな地震に遭いまして、それ以来の地震恐怖症なんです。阪神淡路大震災のようなスケールでの被害ではなかったのですが、日本海中部地震という、日本海側では起きないと言われていた、津波が起きるほどの地震でした。たしか1983年…私が中二の頃のことでした。
 数ある地震の中では小さな地震と言って良いかもしれないですが、個人的にはすごく怖かったんです。たまたま東京に住んでいる時には大きな地震に会うことはなかったのですが、アメリカでも西海岸に行くといつ大きな地震があるかもしれないと思いまして……。
それで行ったこともないニューヨークを選びました。ニューヨークは地震がないって定説がありましたしね。それが理由で、一度も行ったことのないニューヨークに来たのです。

PROFILE

福田 しゅうこ
日本での薬剤師からNYにてグラフィックデザイナーに転身。NYにて夫であるフクダと出会い結婚、二児を授かる。子供の誕生を機に起業を考え始める。フクダがNYでシェフをしていたことから、起業すなわちレストラン開業へ、と思考。3年間の準備期間を経て2007年、3月、ブルックリンに「私たち日本人が日常的に食べている食事を提供する店」をコンセプトに「ひびの食堂」を開店。現在「自分の時間を楽しむ。手酌の店」を出店準備中。

福田 勝
映像業界からNYにてシェフに転身。 子供の誕生を機にレストラン開業を目指しアメリカ人オーナーの下で、アメリカ式レストラン・ビジネスについて学ぶ。定番メニューを主軸にした和食の店の開業準備に取りかかり、自身が京都府出身であることから惣菜の京都弁である「おばんざい」を日替わりで提供し、新しい形の豆腐である「瓶詰め豆腐」を提供する店「ひびの食堂」を6年前にブルックリンに開店。妻と二店舗目の出店計画中。