2013/04/26 12:00

2013年、第37回香港国際映画祭から特別レポート Ⅲ

Photo:“Saving General Yang”のプレミア会場のキャストと関係者 Ⓒ HKIFF

2013年、第37回香港国際映画祭から特別レポートⅢ
―イケメン揃い、だけじゃない!“Saving General Yang(忠烈楊家将)”―

by Mai KATO/Contributor(特別寄稿)

中国古典文学の鉄板「楊家将」を描く

 世界68カ国・地域から300本以上の作品が上映された第37回香港国際映画祭(Hong Kong International Film Festival/香港國際電影節)。そのうち57本がワールド/インターナショナル/アジア・プレミア作品だったが、そのなかで最も注目を浴びていた作品の一つが“Saving General Yang”(2013年、原題『忠烈楊家将』)だ。
 この作品のベースとなっているのは中国における京劇やテレビドラマ、映画の定番ともいえる北宋時代の楊一族の盛衰を描いた中国明代の古典文学「楊家将」である。“Saving General Yang”では、敵の策略にはまり捕われの身となった北宋の名将・楊業を救出し、最愛の妻のもとへと返すべく、7人の息子がそれぞれの武技で果敢に闘うも、次々と命を落としてゆくという悲劇が描かれている。

豪華すぎるキャスト

 2013年3月28日に香港文化中心で行われた“Saving General Yang”のワールド・プレミアにはスタッフとキャストが一堂に集い、その豪華な顔ぶれはまさに圧巻だった。約20年ぶりの映画出演となった楊業に扮するベテラン俳優のアダム・チェンをはじめ、7人の息子役には香港、中国、台湾から今最も旬なスターたちが集結している。
長男役には『風雲 ストームライダーズ』(1998年)で人気を博し、崔洋一監督の『カムイ外伝』(2009年)にも出演している香港のイーキン・チェン(45歳)、次男役にはテレビドラマから映画界へと活躍の幅を広げている中国俳優ユー・ボー(36歳)、三男役には『花より男子』の台湾版ドラマ『流星花園』から結成されたアイドルユニットF4のメンバーで、アジア全域で絶大な人気を誇るヴィック・チョウ(31歳)、四男役に『唐山大地震 -想い続けた32年-』などで演技力に定評のある中国俳優のリー・チェン(34歳)が出演している。
 さらには、五男役にはテレビドラマに引っ張りだこで、歌手としても有名な香港のレイモンド・ラム(33歳)、六男役には台湾のアイドルグループ飛輪海(フェイルンハイ)の元メンバーで、最近では『金田一少年の事件簿 香港九龍財宝殺人事件』にも出演しアジアを代表する若手スター俳優へと成長したウーズン(33歳)、七男役は中国のオーディション番組出身のアイドル歌手・俳優で唯一20代のフー・シンボー(26歳)と、中国語圏におけるスターやアイドルの華々しい縮図のような顔ぶれとなっている。

アイドル映画か、本格派時代アクション映画か?

 香港国際映画祭でのワールド・プレミアも含め、4月からの公開に向けて中国語圏の各地でキャンペーンやイベントが相次いでいる本作。ゲスト目当てにファンが詰めかけ、いかにもアイドル映画の王道を駆け抜けているように見えるが、そう決め付けてしまうにはもったいないというのが正直な感想。
 この作品の監督を務めるのは、香港映画界のみならずハリウッドの第一線で活躍しているロニー・ユー。近作には『チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁』(1998年)や『フレディVSジェイソン』(2003年)、『SPIRIT スピリット』(2006年)など、映画ファンでなくとも一度はタイトルを聞いたことがあるような大作も多い。
 豪華な出演陣と約40億円(2.5億人民元)もの制作費をかけて作られたこの映画の見所といえば派手なアクション・シーンだが、まるで隠し味のように散りばめられたロニー・ユーらしい演出の数々はやはり見逃せない。例えば生首がパーンっと空高く飛んだりするシーンはスプラッター映画さながらで思わずにやけてしまったが、サミュエル・L・ジャクソンやジェット・リーなどの大物俳優と一緒に仕事をしてきた実力を持つロニー・ユーの世界観のなかで、スターやアイドルたちが楊家将の7兄弟をどう演じているか、どう映っているか、是非注目してほしい。そこには、単なるアイドル映画の枠を超えた、本格派時代アクション映画としての魅力や面白さが詰まっているはずだ。