2013/04/10 12:00
香港国際映画祭 エグゼクティブ・ディレクター
ーロジャー・ガルシア氏に聞くアジアのコンテンツ・ビジネスの今、そして未来ー
P>Photo: 香港の街中ではいつも工事が進行中 Ⓒ Mai Kato
かつての”映画好き青年”が世界を一周して香港に帰ってきた! Vol.8 / 全12回
by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長
Q:最近の若いフィルム・メーカーがキック・スターターやインディGoGoのようなクラウド・ファンディングのプラットフォームで資金調達している状況をどうご覧になっていますか?
ハリウッド型システムに挑戦する新しい価値観2:「映画のプロ」の目から見たクラウド・ファンディングの使いみち
キック・スターターにせよ、インディGoGoにせよ、資金すべての調達先として検討するというのはどうかと思いますが、たとえば撮影が終わった後のポスト・プロダクションの資金調達を部分的に行うなど、目的を切り分けて検討するのであれば可能性を感じますね。
投資家としての視点に立った場合、海のものとも山のものともわからない、これから作ろうという作品のアイディアに対してまとまった額のお金を出すのは不安ですが、少なくとも撮影がだいたい終わっていて、一定のレベルを満たした作品になるのではないかと予測がつくような場合においては、いくらか安心して出資をしようという気になります。
それに、今の時代アメリカで映画作品をリリースしようと思ったら、制作費の三分の一ぐらいをかけてマーケティングしなかったら売れません。ですので、映画制作のこの最後の部分の資金調達をクラウド・ファンディングで達成しようというのは、合理的なことだと思いますし、資金調達の選択肢が増えるのは良いことでしょう。
クラウド・ファンディングでみんなが資金調達疲れという現象も
インディーズの若い映画作者にとって、キック・スターターやインディGoGoは、新たな可能性の地平を示している一方で、自分自身と親しい友人・知人のすべてが次作品のためのキャンペーンを展開中といったことにもなりがちです。そうなると、お互いにお金を出し合ったものの、それ以上に支援の輪が広がらずに、結局疲れ果ててオシマイといったことも起きているようです。
お金集めだけでなく、絶えずソーシャル・メディアに貼り付いて宣伝したり、お礼を言ったりし続けなくてはならないため、それがストレスになっているという映画作家もいました。
映画を作ることじたいは、熱意があれば何とかなりますが、商業的に映画をリリースしようとすると大変高くつきます。今の時代、オンラインのペイ・パー・ビューで、観たい人にだけ観せるという方法もありますが、オンライン上のコンテンツ数があまりにも某大なため、何かをリリースしようとしても、無名作家は埋没してしまうだけです。そのため、やはりメディアに名前を売ることは今まで以上に重要で、それなりに有名な映画祭に出品するなどして、紹介記事などがいくつか出た後で、改めてオンラインで作品をペイ・パー・ビュー配信するなど…工夫が必要ですね。
ロジャー・ガルシア氏プロフィール
香港国際映画祭 エグゼクティブ・ディレクター
2010年9月より香港国際映画祭事務局(正式名称は Hong Kong International Film Festival Society)で、香港国際映画祭 (HKIFF), エイジアン・フィルム・アウォーズ (AFA), 香港=アジア・フィルム・ファイナンシング・フォーラム (HAF)の運営責任者として辣腕を振るっている。香港生まれだが、英国のボーディング・スクールで育ち、リーズ大学で映画について学び、卒業後、二十代の 半ばで香港国際映画祭の立ち上げに尽力。その後渡米し、自身もプロデューサーとしてインディーズ、及び、ハリウッドで映画制作に携わり、世界各地の映画祭でアジア映画上映のプログラミングに関与してきた。カリフォルニア州のバークレーに自宅があるが、現在は香港ベース。美味しいものが大好きで、料理が得意 という一面も。