2014/03/21 13:00

頭の中はいつもヴェルディ Vol.8

ロブ・デイヴィス氏に頂いたMetroSource見本誌2014 April/May号の見開き ⒸMetroSource

by 岩渕 潤子(いわぶち・じゅんこ)/AGROSPACIA編集長

文化的多様性の実現に向けての有言実行を目ざして・・・

 2月5日に青山学院大学において、LGBT (セクシャルマイノリティ) との共生を含む、文化的多様性に関する課題と取り組む「青学BB(Beyond Borders)ラボ」が正式に立ち上がりました。全国に先駆けて設置された選択科目ではありますが、単位取得対象となるカリキュラムの一環としてのスタートですので、「2020東京オリンピックの開催に向けて長期にわたり多くの課題と取り組む」という説明をつけたり、「特定の価値観を学生に強要するものではありません」といった但し書きをした上で履修希望者を募ったりと、いろいろと気を遣いながらのスタートとなりました。
 日本においては、同性婚を認めるどころか、セクシャルマイノリティの権利を規定した法律が何ひとつありません。国連からも「人権に配慮するように」という勧告を受けており、先進諸国の中では対応の遅れが際立っています。

 そんな中、青学BB(Beyond Borders)ラボは初年度の大きな目標として、「LGBTも、そうでない人もシームレスに対象とする、東京発のクリエイティブなライフスタイル情報媒体の立ち上げ」を打ち出しました。NYに拠点を置き、全米に展開するライフスタイル誌『メトロソース(MetroSource)』の東京/アジア版をローンチする予定です。すでに、青学BB(Beyond Borders)ラボの授業を担当するアグロスパシア編集長・岩渕潤子がNYで複数回に渡って『メトロソース』創業社長のロブ・デイヴィス氏とミーティングを重ねています。今回、3月上旬のNY訪問において『メトロソース東京』の立ち上げについて、学生たちの指導をして下さるとの基本的な同意を得ました。6月14日にはロブ・デイヴィス氏ご自身が来日され、東京で「多様性」をテーマとしたシンポジウムに参加して、基調講演をして下さる予定です。

 事前協議を経て、ロブ・デイヴィス氏とは2日にわたり、計9時間程度のディスカッションを重ねました。十代の時から世界各地を回り、二十代前半でフランスの地方都市で1年以上を過ごしたロブと、同じく大学以後の教育を海外の複数の国で受けた筆者とは共通の話題も多く、また、会話の中で双方の母親の年齢が同い年ということがわかったことから、ロブは「あなたの方がちょっとお若いかも知れないけれど、私たち自身もきっと、ほぼ同世代ですね」と、仕事以外でもずいぶんと話が弾みました。また、みずからがゲイであることを公言しているロブは、ぜひパートナーにも会って欲しいので一緒に夕食をということになり、「自宅の方へいらして下さい」とお招きを受けました。「では、みんなで一緒に料理しましょう。」という話になり、NYの前の訪問先のサンフランシスコからメニューの打ち合わせをしていたのですが、ちょうど週末から移動日にかけ、東海岸には大雪警報が発令されたため、残念ながら「十分な食材の準備ができないかもしれないから、今回は無理せずに近所のレストランに行きましょう。もちろん、僕がご馳走しますから!」ということになりました。
 ロブは、大雪で私のカリフォルニアからのフライトがキャンセルになるのではと随分心配したようでしたが、実際には天気予報が大きくはずれて寒冷前線はかなり南を通過することになりました。晴天の夕焼けのなか、ニューアーク空港に着陸してすぐにテキストでメッセージを送ると、間髪を入れず、”Great news!”という返事がありました。

 ロブとは、12月上旬に初顔合わせしてから、ずいぶんと踏み込んだディスカッションをメールでやり取りしてきたので、直接会うのがまだ二度目という気がしませんでした。また、『メトロソース』の編集長やアーティスティック・ディレクター、プロダクション・マネジャーほか、スタッフ全員一人ずつに紹介していただいたのですが、皆さん良い方ばかりで、「良い会社だなぁ」とつくづく感じ入りました。

 ロブ・デイヴィスがいかに素晴らしい人物であるか、また、彼が25年をかけて育ててきた『メトロソース』という媒体がアメリカ社会にどのようなインパクトを与えてきたのかについては、これから時間をかけてゆっくりとご紹介してゆきたいと思っています。その前に、ちょうど筆者と入れ替わりにNYを訪れたラボ・メンバーの学生である吉田晴香さんが、『メトロソース』編集部を訪問して、彼女の視点でロブにインタヴューをしてきましたので、まずはその記事を皆さまにはお届けする予定です。

 今回もまた、『メトロソース』の見本誌を沢山もらってきましたが、昨年から増えている同性カップルの結婚に伴う結婚式関連のパーティー会場やケータリングなどの広告を目にして、日本でのLGBTの権利、そして、結婚を選択する自由を実現するため、微力ながらも役に立っていきたいという思いを新たにしました。有言実行を目ざして学生たちと共に尽力していきたいと考えています。